近藤春陽さん(卒業生)への質問!

🤔どうして水戸黄門に参加しようと思ったのですか。

先輩に誘っていただき、なんとなく参加したのが始まりです。
1年生の時ダンスOPAP(今でいうOPAL)のオーディションに落ち、自身のダンス活動もうまくいかず「ダンスなんてやめてやるー!」という躍起な感情の時がありました。その時、当時憧れていた先輩に何気なく誘われ嬉し勢いで参加を決めました。正直に言うと、福祉の施設に行って芸術をお届けしたいという綺麗な動機ではなく、ええい!ままよ!という気持ちでした…



🤔水戸黄門を通して、忘れられないことは何ですか。

強く強く忘れられないおじいちゃんがいます。
初めての参加で1ステージ目の時でした。「ふるさと」を皆で歌う時に、たまたま隣に行ったおじいちゃんが泣きながら歌っていました。それを見て何故だか私も隣でわんわん泣いてしまい(本番中ですが…)、強く抱きしめてもらったのです。本番後真っ先におじいちゃんに会いに行った所、「あなたはまだ蕾だ、これから綺麗な花が咲くよ、私があと30歳若かったら一緒に生きたかった」と言われました。あの時の温かさと強さと、老いという切なさと美しさが心を揺さぶったのを忘れません。
そして実施を重ねる度に、忘れられない出会いは増えていきました。



🤔春陽さんは在学中、数々のダンス公演に出演・振付を担当されていました。振付を考える際、通常のダンス公演とアウトリーチ作品では、どのような違いがありますか。

普段の公演はさまざまな層のお客様が来ますが、アウトリーチに関しては大体の年齢や施設の特徴などを本番前に把握することができます。そして、私たちが手を伸ばし空間におじゃまする形になります。
ではどうすれば観てくださる方々に寄り添えるのか、踊る私たちも傷つかないかを強く考えました。例えば高齢の方を対象とするなら、横を通る時は驚かせてしまわないように急激な動きや大きな動作はしない。養護学校などの生徒さんを対象とする時、パッと切り替えたい時は注目を集めるため空間の上の方を使った振り付けにするなど。まだまだたくさんあります。
またアウトリーチはその時その場で会場設営をするため、もし観ている人が想定より多くなったら?舞台幅が広くなったら?狭くなったら?ということなども考え、床をなるべく使わず、臨機応変に対応できる振りを試行錯誤していました。
後は演出や殺陣師と話し合い、曲の雰囲気や話の流れを考えながら(この辺は普段の振付とも同じです)やっていきます。
このようにいろいろ書いてますが、実際に公演に行くと反省点がどっさり山ほど出てくるのです。

また水戸黄門のアウトリーチに参加する方は、ダンス大好きという方よりも演技や殺陣をしたい方が多い印象です。その方々にどうやったらダンスが楽しくなるか、そしてダンスを通してお客さんとどう関われるかを伝えよう!!と毎回強く考えていました。お客様がいて作品を届けるという意味ではやはりきちんと丁寧に踊ってもらいたいですが、アウトリーチの醍醐味である「出会い」をダンスの中でもやってもらいたく思っています。



🤔アウトリーチの現場に関わるとき、最も大切にされていることは何ですか。

最もと聞かれてるのですが、2つ答えます。そして長いです…!すみません。

1つ目は誰も傷つけないようにするということです。アウトリーチとなるとお客さんとの関わり方が普通の公演よりも直接的になっています。身体に触れたり会話をしたり、時には会話が出来ず起きているのかどうかもわからない方に関わったりもします。その時に相手を傷つけないこと、そして自分自身も傷つけないようにすること。アウトリーチをすると、ショッキングな場面に合うことやハプニングなどはたくさんあります。その時にどうすれば自分も相手も傷つけないか。稽古期間中などに仲間とよくよく話し合って、準備をこれでもかという程して行くことが大切だと思います。例えば、こういう場面にあったらアシストしてほしいとか、相手がくれた気持ちを蔑ろにしないために身体の準備をしっかりしていくとか。
ちなみに私は過去アウトリーチをして傷つけてしまった人達がいます。そしてハプニングに対応できずに、酷く傷ついた自分もいます。その後悔や反省があるからこそ、また何度でもアウトリーチをしたくなるのかもしれません。

2つ目。これは私も先輩から言われ、初めて参加される方には必ず伝えていることですが、「この作品はこの人が観る最後のダンスかもしれない」ということです。水戸黄門は特に高齢者向け施設を対象とすることが多いため、たくさんのおじいちゃんおばあちゃん達に出会います。ですが、その方達はいずれ自分よりも早く亡くなります(若くても人生どうなるかわかりませんが、順当にいけば)。翌年また行っても、その方がいるとは限りません。
もしかしたらこの公演をみて次の日に亡くなるかもしれないし、病院に移転して来年はいないかもしれない。そんな状況の場所に行くということを頭に置いてしっかりと稽古してほしいと、これを読んでいる皆さんにお伝えしたいです。
その時その時の嘘のない愛と全力を、心を込めてお届けすることをとても大切にしています。



🤔たくさんアウトリーチの現場に関わっている春陽さんですが、合唱寸劇水戸黄門というアウトリーチ作品の魅力はなんですか。

水戸黄門の良い所は、長年続いている大学の事業ということもあり、たくさんの施設や人の信頼がすでにあるという所です。私も自身でアウトリーチを企画し実施しましたが、大学生という所属と水戸黄門の経験者という名前があったからこそ、交渉が通った節があります。福祉施設はやはり繊細な場であり、だからこそ信頼がなければ受け入れも難しいです。なのでこれからアウトリーチ活動をしてみたいと考えている人は、まず水戸黄門に参加することをおすすめします。

上記はシステム的な魅力ですが、もう1つ。
合唱寸劇水戸黄門には過去の参加者、企画者、待っている施設の皆さん、おじいちゃんおばあちゃん、皆さんに深い深い愛があります。私はこの企画の1番の主軸は愛だと思っています。「また来ますね」「また会いに来てね」「生きる力をもらったよ」「これから芸術に携わる理由をもらいました」。
近くて嘘をつけないこの企画だから、こそ生まれる愛があります。これは参加するとじんわり実感するかもしれません。

この大切な企画に過去の参加者として声を載せていただき、本当に嬉しく思います。
いろいろなことを長く書きましたが、少しでも興味がでた方はとりあえずえいや!っと参加してみてはいかがでしょうか✿