アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐
‐ツララ‐
それから二人のツララ探しが始まった。
山の中、滝が凍っているような場所だったらすぐみつかるんだろうけど、街中で探すのはなかなか難しかった。
私が子供の頃は、あちこちの屋根にツララができ、それを遊び道具にしてたものだ。
でも今は、新しい建物が多く、屋根の形状のせいなのか、ツララを見かけても小さな短いものしか目につかない。
「あのね・・・」
ツララが見つからず、二人とも疲れ切っていた時、雪子が話し出した。
「とうさんをさがしてるって、言ったんだけど。」
「うん。」
「とうさんかあさんがね、もうかえるって言ったのに、ついてかなかったから、こっちにのこっちゃったの。」
なんとなく。
山守さまたちとの会話で、もしかしたら、雪子は迷子だったのかなと感じていた。
でも、それを雪子に聞いてしまったら、きっと雪子は辛いんじゃないかと、そっとしておいた。
雪子の話はあちこち飛んだけど、
・とうさんかあさんがこっちに来るとき、たまについて来たこと。
・一人では蒼国を出る事も、戻る事もできないこと。
・とうさんが戻ると言ってたのに、こっちの世界に夢中になっていたら、一人になっていたこと。
・しばらく戻る方法を考えたけど、どうにもできなかったこと。
・いろんな人に話しかけてみたけど、気付いてもらえなかったこと。
こんな感じだった。
戻れる方法がみつかって、がんばってるけど、なかなかツララが見つからない。
不安も重なり、疲れ切っているようだ。
泣きそうなのをグッとこらえて話している。
「大丈夫だよ。」
小さな雪子の手をギュッと握る。
「一緒に探したら、きっとみつかる。」
うん、そうだね。と雪子は上を向いた。
大丈夫。
そう信じて、二人で探そう。
とは、言うものの。
私の大人の冬休みも、もうすぐ終わりが近づいている。
それまでに、なんとかみつけなければ。
雪子と二人で探すのはもちろん、私用で出かけるときも、落ち着きないくらいにキョロキョロしながらツララを探していた。
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