アオイクニノモノガタリ -蒼国物語-

-山守さま-

雪子は手や顔にクリームがつくのも構わず、美味しそうに楽しそうにケーキを頬張る。

いろいろ考えたりしたけど。
まぁ、とうさんを探してあげたら、雪子は安心するのよね、きっと。

聞きたいことは山ほどあるけど。
とりあえずは、とうさん探しを終わらせなくちゃ。

「んふぅ、おいしかったぁ!」

雪子は満足そうに声を上げた。
なによりなにより。
手も口の周りもクリームだらけだけど。

拭いてあげていると、
「今日は山もりさまのところに行こうと思ってるの。」
と、思いつめたような顔をした。

そんなに覚悟が必要なのか!?
海守さまは、ポヨンポヨンだったけど、山守さまは怖いのか!?

それまで寝るねと、雪子はまた横になった。
思いつめたような顔をしたのは一瞬で、甘いもので満たされた幸せそうな顔で寝息を立て始めたので、深く考えないようにしよう。


家族と晩ご飯を食べ、のほほんとテレビを見て、ほどほどに会話を楽しみ、早めに布団に入る。

はてさて。
山守さまってどんな感じなんだろうな・・・・・

と。
どこからか懐かしい音色が聞こえてくる。
笛の音、太鼓の響き。
これは・・・・・ねぶた囃子ではないか。

今は冬だよね。
ねぶた囃子は夏のものですぞ。

おかしいな・・・と思い目を覚ますと。
また小学生くらいのサイズになっていて、枕元には懐かしの私服が。
今度は夏服だな。

え、なに、季節も飛び越えるの!?

もう今更驚いても、これが現実・・・というか、夢の中。
はいはい、と着替えを済ませて。

「雪子、じゅんびできたよ。」

「う、うん。じゃ、行こうか。」

キュッと一文字に口を結び、スッと手を上げる。
と、またふわりと宙に浮いた。

海とは逆方向、山へと進んでいく。
季節は夏となっているので、山は青々と茂った木々に埋め尽くされている。

どの山へと向かうのか身を任せていると、どうやら八甲田山を目指しているようだ。
冬にはスキーへ行った雲谷を越え、遠足で何度も来た萱野茶屋を越え、グングン進んでいく。

「山もりさまって、どんな感じなの?」
「うーん、前の山もりさまは、おじいちゃんってかんじだったんだけど。」
「前の?」
「あたらしい山もりさまは、なんていうか・・・」

雪子がそう言いかけたとき。

「オー!ユッキーコサンっ!」

私たちに並行して、白鳥のハチが飛んできた。
そしてその背には、ニャロメのTシャツを着た青年が捕まっている。
声の主だ。

「ユッキーコサン、コンニチハ。」
「や、山もりさま、こんにちは・・・」
「ドコ、イキマスカ。」
「あの、山もりさまのところに行こうと思って。」
「オー!ソデシタカ!デハ、イショニイキマショウ!」

そういうと、ついて来いとハチは目くばせし、私たちの先を飛んで行った。

「あの、今のが、山もりさま・・・なの?」

雪子はコクリと頷き、少し困った顔でハチが飛んでいく方向を見ている。

どう見ても外人さんっぽかったし、ニャロメのTシャツ着て現れたら人が山守さまと言われても、私だって戸惑うわ。

とにかくハチの後に付いていくしかない。
とうさん探しが進展すればいいんだけど。

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