アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐蒼国‐

そこは深い森の中。
木漏れ日が降り注ぎ、心地いい場所だ。

ニャロメTシャツの山守さまと、隣にはいかにも山守さまといった風情のおじいさんが立っていた。

「雪子や、ひさしぶりじゃのぉ。」
「山もりさまっ!」
「元・山守さまじゃ。」

あ、そうだった。と、雪子はテヘヘと頭をかく。

「ユッキーコサン、オトウサンサガシテイルト、キキマシタ。」
「はい・・・」
「オトウサンオカアサンモ、ユッキーコサンヲ、サガシテイマスヨネ。」
「・・・はい。」

「デ。」
「で?」
「ヤマモリサマ、ドウシマショウ・・・。」

しっかり話し出したと思ったら、隣の元山守さまに泣きつく山守さま。
雪子もキョトンとしている。

「もう少し頑張らんかっ!」
「エッ、デモ・・・」
「その為に、ハチとあちこち飛んでおったじゃろうに。」

そうか。
ハチは雪子がとうさんを探しているのを知っていたし、海守さまにも会っている。
私たちが動いていない間も、ハチはいろいろと動いてくれていたらしい。

あれ?
そういえばハチは、どこにいった?

「山守さま、海守さまから聞いた話を、ぜひ。」
「オー!ソデシタ!」

ニャロメTシャツの山守さまの後ろに、シュッとした姿のおじさまが控えていた。

誰だろう・・・
と、思っていると、雪子が「ハチだよ。」と教えてくれた。
「ハチはね、いろんなすがたになれるんだよ。」

その声に応えるように、ハチと言われたおじさまが、こちらにニッコリ微笑みかける。

「ユッキーコサン、アオイクニ、モドリタイデスヨネ。」

その言葉に、雪子は大きくうなずいた。

「蒼国とはな、こことは別の、いわゆる、黄泉の国じゃ。」

元山守さまが、私に向かって説明をしてくれる。

「黄泉の国にもいろいろあってな。この辺りに所縁のある者たちは、蒼国にいることが多いのじゃ。雪子やそなたの縁者たちも、多くは蒼国におる。」

「ユッキーコサン、オトウサンオカアサンハ、アオイクニモドッテイマスヨ。ダイジョブデス。」

それを聞き、雪子はホッとしたように見えた。

「と、いうことは、雪子も蒼国に戻れば、会えるということじゃ。」

良かった。
戻ればいいだけなら、すぐ会える!
と、私は簡単に考えたが、雪子は浮かない顔をしている。

「でも、とうさんがいないと・・・」
「ダイジョブデス。ヒトツダケ、ホウホウアリマス。」
「ひとつだけ、ですか?」

うんうん、とニャロメTシャツの山守さまはうなずく。

「エーット、マズハ、ジブンガトオレソウナ、ツララ、サガシマス。」
「通れそうな、ツララ?」
「ハイ、ユッキーコサンガ、トオレルクライデス。」
「街同士が繋がるでの、人里で探すのじゃ。」
「ツララミツケタラ、ウミモリサマカラモラッタモノ、カザシテクダサイ。」

それを聞いて、雪子は懐から青い金平糖のようなものを取り出した。

「ソレデス。」

うんうん、とニャロメTシャツの山守さまはニコニコうなずく。

「ソスレバ、アオイクニヘノミチ、ツナガリマス。」

雪子はジッと手の中の青い金平糖のようなものを見つめている。

「そなたも、手伝ってくれるかの。」
「はい、もちろん。」

うんうん、と元山守さまはニコニコうなずいた。

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