アオイクニノモノガタリ -蒼国物語-
-帰郷-
「………さっむっ!」
電車を降りると雪の世界。
思わず肩をすくめた。
寒いと言葉にはしたが、関東の乾いた寒さに比べたら、懐かしい柔らかい寒さ。
ま、氷点下だけど。
ちょいと仕事を休業し、久しぶりの帰郷。
冬の間、ゆっくり家族で過ごそうと、寒さも雪も深くなる12月末、地元の駅に降り立った。
駅前の景色は、子供の頃に比べたら整備されてはいるが、歩く人がまばらなのは相変わらず。
新しい建物が増えていて、懐かしさがあまりない。
「田舎も・・・変わってくんだなぁ。」
今日から3カ月の冬休み。
長いのか、それともあっという間になるのか。
と。
突風とともに目の前が真っ白になる。
地吹雪だ。
「・・・・・っ!」
視界が真っ白になった・・・と思ったのに、目に映る景色。
整備されてるなと眺めていた駅前ではなく、子供の頃に見ていた木造りのリンゴ市場に姉さんかぶりのおばちゃんたちの姿。
「え・・・・・?」
と間もなく、景色は戻った。
目の前は懐かしさのかけらもない駅前。
「・・・・・?」
ま、気のせいか。
とキャリーケースを雪道を引きずりながら、実家へと向かう。
これが、ひと冬の不思議な出来事に巻き込まれる序章だなんて、気づきもせずに。
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