アオイクニノモノガタリ ‐蒼国物語‐

‐トビラ‐

「雪子っ!あった、あったよ!」

部屋に駆け込むなり、そう言った私に雪子はびっくりしていた。

「あったって・・・ツララ?」
「そう、あったの、ツララ、大きい、やつ。」

息が切れて、言葉も途切れ途切れだ。

「今日、ほら、暖かいから、早く、行かない、と。」
「えっ。 あ、そっか、とけちゃうっ!」

雪子も、急がなくちゃ!と気付き、二人でツララのある場所へ向かった。

幸い、まだそこにツララはあった。
暖かさのせいか、止めどなく水が滴っている。

「雪子。」
「う、うん・・・」

雪子は、懐から蒼いコンペイトウのようなものを取り出した。
海守さまにもらい、大事に大事にしてたもの。
それを手の平に乗せ、ツララの方向に差し出した。

すると。

それは宙に浮きあがり、ゆっくりと内側から淡い光が湧いてくる。
じんわりと輝きを増していき、そして。

ツララに向かい、真っすぐ光が放たれる。

蒼い光が揺らめき、ベールのようにツララの向こうが開かれる。
これが、蒼国への扉・・・

その先にぼんやりと人影が見え始めた。

「とうさんとかあさんだ!」

そう叫び、雪子は駆け出した。
雪子が進むにつれ、くっきりと見えてきた人影。

それは、私のおじいちゃんとおばあちゃんだ。
雪子が駆けてくるのを手を広げ、笑顔で迎えている。

その向こうにいるのは、私のお父さん。
なんだか私と顔を合わせるの都合が悪いような、それでも嬉しいような複雑な顔をしている。

声は聞こえない。
私はみんなと会話できない。
それでも、胸に流れ込んでくる、蒼国から届くみんなの気持ち。

雪子はこっちを見て、ありがとー!って、一生懸命に手を振っている。
それを見守りながら、おばあちゃんも笑顔で手を振っている。

はっきりと見えていたその景色は、次第に、ぼんやりしていき。
見えなく、なった。

雪子は蒼国に戻れたんだ。

そう思ったとき、目の前のツララが崩れ落ちた。
あぁ、間に合ってよかった・・・。

雪子が帰れたという安心感。
去ってしまった家族の笑顔を見れた嬉しさ。
そして、なんともいえない寂しさが込み上げる。

この冬休みはきっと。
雪子と出会い、こちらと蒼国が繋がっていることを教えてくれる時間だったんだ。

きっと雪子は蒼国から、とうさんかあさんとお花見やねぶた祭りに来るんじゃないかな。

そしらたまた、会えるような気がした。

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