第68回 東京藝術大学卒業・修了作品展 工芸鍛金・藤中康輝  「please take them home」

画像1 please take them home レポ1 まず靴を脱いで用意された白いスリッパに履き替え、 受付に「見たい」由を伝える。please take them home レポ2  受付には草食系寄り知的男子が座っており淡々と鑑賞に際しての説明(?)を述べる。 「5分ほどの体験型の作品です」「先にお2人の方がお待ちですが、ご覧になりますか?」と念を押され、それでも「見たい」とこたえると、「この作品を体験するために必要なものです」と、やや丸味をおびた棒を手渡される。
画像2 please take them home レポ3  左は受付で棒を手渡された鑑賞希望者  下はその棒   棒は一面を平に削って、左右の断面もやわらかな丸みで削られている。
画像3 please take them home レポ4   最初の小部屋に入ると先にお待ちのお二方がおわした。壁には鑑賞に際しての注意書きが貼りだされている。「はじめに必ずお読みください」 「部屋の中に書かれている指示に従って体験する作品です。受付で小さな木の棒を受け取り、手に持ってお入りください。」「作者は安全管理の指導を受けた上で展示を行なっています。以下の点に同意していただける方のみお入りください。」
画像4 ・小麦、大豆、乳成分にアレルギーのお持ちの方は体験をご遠慮ください。・小さなお子様は体験をご遠慮ください。・途中で扉が低くなっているところがありますのでご注意ください。・作品の指示に従うことで本来の作品体験ができますが、実行は個人の責任においてご判断ください。
画像5 please take them home レポ5  最初の小部屋で待つ3人。注意書きの貼り紙の左隣の小窓の布がめくられ、受付にいた男性が顔を出す「先頭でお待ちの方、どうぞ中にお入り下さい」先に待っていた一人が入室すると、外で待っていたひとりが、この小さな空間に入ってくる。(あとから入室してこられた男性に棒をかざして頂いた)
画像6 please take them home レポ6   小窓の布がめくられ「先頭でお待ちの方、どうぞ」 とうとう私の番だ。最初の小部屋の三人の密集した空間から、木目を美しく削り出された木製のドアノブ。固定式。押して開けると次の小部屋が静かに待ち構えている。ふと、ひとりっきりで海原に漕ぎ出すような心細さと不安感がよぎる。
画像7 please take them home レポ7  貼り紙とドアと壁に穴だけの部屋が登場する
画像8 please take them home レポ8  「あなたが手に持っている棒を、壁の穴に 奥まで いれてください。  しっかりと奥まで入れたら、次の部屋へ進んでください。」
画像9 please take them home レポ9  棒を穴に、、、ん?抵抗感?ぐぐっいと。 穴の中の感触が棒から伝わる。合板に穿った穴だから棒が擦れる感触として細かなザラザラ感を予想していたら窮屈で圧迫な、、、肉?な訳はなく、じゃあ、何?硬質なラバー?と、ふんわり疑問に感じながら押してたら奥まで入った。
画像10 please take them home レポ10  棒をしっかりいれて、指示の通り次の部屋へ ドアノブは削り出された木製のノブ。手製? 最初のドアと違い、このドアは回転式。(こんなにミニマム仕様なのに固定か回転か、どちらかで揃えないんだ。と、ふと思う)
画像11 please take them home レポ11  扉の向こうにはテーブルと椅子。 テーブルの上には白いお皿と未晒しのペーパーと、、、?
画像12 please take them home レポ12 入室し、ドアを閉じ、、、ん?
画像13 please take them home レポ13  今までの白木のドアノブと全く違うタイプ。 「揃える」という意識とは違う意識なのか???
画像14 please take them home レポ14  並んでいるお客さんを思い出す。 目をテーブルに転ずる。 「先」に進まねば。
画像15 please take them home レポ15 「椅子に座って、 壁から突き出した棒を見ながら、 机の上のプリッツを ゆっくりと 食べてください。」 「食べ終えたら、壁の棒を手前に引き抜いて 次の部屋へ進んでください。」
画像16 下のシールにはプリッツに含まれる主な材料のうちの アレルギーに関わる素材、 乳成分、小麦、大豆が表記されている。
画像17 please take them home レポ16  プリッツ!それでアレルギーを聞かれたのか! プリッツ!それで棒を持たされたのか! にしても、ああしろ、こうしろ、どうせえ、こうせえと注文の、、、注文の? 注文の多い料理店では、客が(料理になって)「食べられた」けど、ここでは、客が(プリッツを)「食べられた」!のかー!
画像18 please take them home レポ17                  ん?             んんんんんんんーーー?!
画像19 please take them home レポ18  出口のドアの取手、この部屋の中では同じ取手で揃えてある。ドアのサイズは小さい。これが、初めの部屋の「必ずお読みください」の中にあった「途中で扉が低くなっているところがあります」か。てっきりもっと低い、茶室の躙り口くらいかと思ってたよ。にじって出入りするのかも?カバンが大きいからちょっとヤだな、と思ってたらそんなでもなかっ、、、。躙りぐちいぃぃ?手にした棒を預けて入り飲食、、、。刀の見立てに棒?戦国時代の武家茶道として見れば、
画像20 茶会を設けた亭主(権力者や君主)の目として最上部につけられたカメラも納得できる。茶席の亭主、客の所作を見てないふうにしているが見てる。ドアが小さくなる=「Eat me」で身体の大きさが変わる『不思議の国のアリス』も候補に入れることは出来るかもだけど、あの冷徹無比なカメラの見立ては説明しにくい。チェシャ猫?いやいやいや。ルイス・キャロル自身の目?いやいやいや。そんなふうに考えるとミニマムな設えは武家屋敷の書院造りをイメージしているようにも思えてくる。しびれる。
画像21 please take them home レポ19 「  ・木の棒は、そのままお持ち帰りください。  ・プリッツは、通常1~2日程度で排泄されます。  ・あなたは、左の出口から外に出てください。                        」
画像22 please take them home レポ20 「3つのものが筒の中を通り抜けします。 入る前と出た後で、それらが変容しているとしたら、元のものはどうなるのでしょうか。 鑑賞や食事は、あなたの連続性に疑いを投げかけます。 3つのもの。筒の中に置き去りにされたもの。 どうぞ、お持ち帰りください。」
画像23 第68回 東京藝術大学卒業・修了作品展 2020年1月28日(火)- 2月2日(日) 工芸鍛金・藤中康輝 「please take them home」
画像24 第68回 東京藝術大学卒業・修了作品展 工芸鍛金・藤中康輝  「please take them home」 余談 三番目の机のある部屋の扉を閉めると(あ、写真撮り忘れた。と思っても)二番目の部屋に戻ることは出来ない。ドアを押しても、引いても開かない。 二番目の部屋から三番目の部屋に入る時のドアノブは回転式だったから。悔しいので三番目の壁穴から二番目の部屋を覗いた写真を撮った。退室して作家にドアのことを確認したら「その通り」とのこと。「カメラで見てました」とのこと。
画像25 「ちなみに」と、二番目の部屋から挿入した棒も引き抜くことは出来ない仕組みになっていることも教えてもらった。超お人が悪い王。キング オブ キング!サーの称号を与えん。ブラボー過ぎて握手してもらってブンブン振ったよ。 翌日、撮れなかった部屋の写真を撮りに再訪問して、ネチネチ写真を撮った。 二番目の部屋から壁穴を覗いたら光は漏れていなかったのは引き抜けないようにした穴内部の仕組みのせいか?

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