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テレワークの肝:働かぬ上長マネージメント

テレワークの肝が人であることは既に述べました。今回はその「働かないおじさん」問題を再考察してみます。ポイントは二つ。企業が求めているマネージメントのスタイル自体が変わってきたことと、そしていわゆるイノベーションへどれ程障害になるか、です。今手を打たなければ、手がつけられなくなります。会社の覚悟/上長の覚悟/部下の覚悟…様々なものが問われます。

マネージメントポイントの変遷

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マネージメントのポイントを、二つの軸で考えると、少し前と今では求められていることが随分と変わりました。

横軸)アウトプットのタイプ
縦軸)コミュニケーションの対象数

工場型で、均一のものを大量に生産する職場では、必然的にコミュニケーションの対象者数は大きくなり、大きくなるほど一括で連絡し合えた方が効率が良くなります。そして対象者数が大きくなるほど、分割したり階層型のマネージメント(管理)の方が何かと楽です。

しかし、現代は多くの人が全く同じもので満足する世界ではありません。少量多品種を如何に素早く作れるかが勝負です。物理的なモノだけでなく、アイデアのようなものも対象者を絞り込んで、ニッチなマーケットが大切とされる時代になってきています。発想の豊かさや多様性を伸ばすためのチームワークという観点では、こちらはマネージメントと言うよりはエンゲージメントと呼ぶべきでしょう。

前者を「組織体最適化」型だとすれば、後者は「個能力最適化」とも呼べる形態です。必然的にマネージメントスタイルも異なります。この変化自体はそこそこ昔から見えていましたが、多くの経営層が見えないふりをしてきたので、放置されていました。なので、対応できていない、学んでいない、実行できないマネージャ層は膨大にいます。

働かないおじさんは何故悪いのか

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こうした層は「働かないおじさん」と呼ばれていますが、それが悪者扱いされる理由は、”イノベーションの勢い”を殺すからです。本人は仕事をしているつもりでも、実際仕事になっていなかったなら、誰かがカヴァー(補佐)しているはずです。そのしわ寄せが、かなり理不尽な負荷という形で、若者にのしかかっています。DXレポートとして有名な「2025年の崖」は、こうした活きの良い若者が働きたくない上司に消耗されている現状への警告です。そして、大抵の場合、行動履歴がデジタル上に残せません。何をやったかの記録がないのです。オンライン社会では、それでは存在しないも同じです。それでいて、存在感を示したから、余計に他人の事に干渉します。

働かないおじさんの特徴

では「働かないおじさん」とはどんな人たちでしょうか。先ずは3Kヴァージョンです。様々な特徴がありますが、最小公倍数的な特徴を上げるとしたら、この3つなのではないかと思っています。

1)書かない/書けない/描く気もない
 → 議事録からビジョンまで何もデジタル化できない
2)検索しない/検索できない
 → ググりもしない有識者意識.or.低ITリテラシ
3)共有しない/共有したくない
 → コラボレーション資質欠如(独り勝ち志向)

続いて12Kロングヴァージョンです(上三つは同じです)。

01)書かない/書けない/描く気もない
02)検索しない/検索できない
03)共有しない/共有したくない

04)監視したい(仲間を性悪説ベースで見る)
05)かまって欲しい/会議&電話大好き
06)権威主義/勘違い(肩書が命)
07)好奇心減退/興味狭窄症
08)KKD(勘/経験/度胸)大好き(長短あり)
09)計算苦手(数字が読めない/数字の意味を汲めない)
10)計略大好き(裏工作大好き)
11)教育できない(背中を見てろ)
12)会社以外に居場所なし(出社が仕事)

上記は表面的にでも見て取れる特徴です。私の見立てでは、内面的な共通特徴は、下記だと思っています。全てはこれが根幹かもしれません。

他人(特に部下、時に配偶者)の時間を浪費しても何ら罪悪感を感じない

自分のために他人が努力したり時間を使うことに驚くほど無頓着です。「これやっといて」とさえ言えば全てが動くと本気で思っている様です。何かをしてもらって心から感謝したことも、誰かのために汗を流した経験すらないのかもしれません。

働かないおじさん問題への対処法

働かないとは言えその人の人生がかかった問題です。それでも、働かないのに仲間の負荷を高めるしか能が(補佐してもらわない限り動け)ない方々を放置するのは、士気の上でも問題です。

基本的には、環境(会社が求めるマネージメントスタイル)が変わったことを理解してもらい、現状その人のスキルがむしろマイナスに位置することを認識してもらい、退路も確保した上で、本人が選択して進んでもらう…しかないかと思います。

A)オンライン環境で下記をチェック
 ・上記の働かぬ度合い12項目=直接ヒアリング?
 ・存在感の差異(ネット.vs.リアル)=チームメイトに個別ヒアリング
B)今後のパス構築(備え)
 ・評価基準の再構築(全体)=若手と同じ基準で評価
 ・収縮プロセスの構築(全体/個別)=希望退職制度的ななにか
 ・再起プロセスの構築(全体/個別)=挑戦する場合の勉強コース
C)チームビルディング(混乱回避)
 ・去る者/昇る者のプロセス=曖昧さの排除
 ・公正さ/透明性の担保策構築=新機軸で進む覚悟表明

では、誰がこれを進めるのか…人事部になるのでしょうか。辛い仕事です。功績も多く、声もでかい人も含まれますから、経営者が実施するのも一般化する気もします。現場を混乱させる前に面談を始めた方が賢明でしょう。

問題は経営層がこの特徴に当てはまってしまった場合です。その猫に首輪をつけられる者が居ません。権限移譲がなされているなら、それでも回るかもしれません。多少の不公平感はあったとしても、目の前の荒波を乗り越えることに集中できますから。さらなる上位層の誰かを見つけてくるか、会社自体に見切りをつけるかの二択かもしれません。でも、この数ヶ月の情報発信を見ていて、経営者の資質は充分見れたのではないでしょうか。もし、見えてなかったなら、金策などで寝る間もないのでなければ、少し辛い方かもしれません。人は危機の時にこそ本当の資質が見えます。

明治維新は良きモデル?

唐突ですが、最近明治維新を良く想います。歴史を動かした方々の年齢に引っかかっています。名だたる人が極めて若いのです。その瞬発力や行動力から若くなければ無理だろうとも思いますが、彼らにも「上長」がいたはずです。その上長たちは、自分たちの感性が太刀打ちできないと分かってしまったら、どうしたのでしょう。おとなしく身を引いたのでしょうか。それが武士道という美学だったのでしょうか。ドラマでは多少の小競り合いはあるものの、やはり自ら後進に道を譲る形が多い気がします。

さて、この時代革新のさなか、そうした美学はどこまで生きているのでしょうか。今まで培ってきた企業文化も問われるタイミングです。

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