中世ヨーロッパを模したファンタジー世界に関する思考実験

 結局、話が面白しろければ良いの。アーサー王(フランスの同人誌)もシャルルマーニュ(イタリアの同人誌)も時代考証滅茶苦茶だし。

 この問題、真面目に考察するとキリスト教と言う前提をぶっ壊すとことから始めるので割と難しい。そもそも蛮族の地(いわゆる西ヨーロッパ)に文字文明と官僚制度を持ち込んだのと蛮行に対するブレーキがキリスト教の功とするならば、アリストテレスを絶対化し、奴隷制を持ち込んだのが罪の方。ちなみにゲルマンに本来奴隷制にあたるものは本来無いらしく地中海の制度なので本来ローマ崩壊とともに消滅する運命だった。

 そして0と天動説がヨーロッパで普及なかったのはヨーロッパが未開の所為ではなくアリストテレスを取り込んだ教会が異端として弾圧を始めたのが一番大きな理由の様だ。教会の権威の低下も異端弾圧と連動している関係しているだろう。

 なぜキリスト教がアリストテレスを絶対視したかと言えば、中世盛期11ー12世紀頃に文化圏の接触が激しくなるとキリスト教がガバガバすぎて争論になったときユダヤ教やイスラム教にボコボコにされるから理論武装する必要がでてきたから。キリスト教の布教の相手が蛮族だった時代には理論武装など必要なかったので、その部分をずっとおざなりにしていたのだ。その時、都合良くイスラムから入ってきたのがアリストテレスだ。そして、キリスト教の論理武装にアリストテレスと言うツールを使ったものが神学になる。そして同じくイスラムから入った科学が神学により排除されると言う現象が起きる。とはいえ神学は観測出来ないものを証明する学問。この思考方法は現代の物理化学につながる。

 そもそもギリシア生まれのアリストテレス哲学は西ヨーロッパには到達していない。古代ローマでイタリアで止まっている上に、イタリアでは受け容れられていない。そのため中世に入ると一部を残して消滅した。したがって、中世のアリストテレスは十字軍の時、アラビア(もしくはコンスタンチノープル)から持ち込まれたものだ。

 そしてアリストテレスと言うよりギリシア哲学とキリスト教は相性が良いのである。それはよく考えなくても当たり前でキリスト教自体が、ユダヤ教の一派にすぎない原始キリスト教をギリシア人がギリシア化したものだからキリスト教にはアリストテレスのエッセンスが初めから組み込まれているのである。

 ギリシア化キリスト教とギリシア哲学が相性が悪いわけが無い。そのため聖職者達は理論武装の道具としてアリストテレスを採用したのだ。もっともアリストテレスを取り入れるか取り入れないかで揉めた歴史がある。

 しかもギリシア哲学には一定の制限があった。ギリシア神話タブー。ギリシア神話を否定する論理を異端とされた点だ。ギリシア哲学はギリシア神話と矛盾しては行けなかったのだ。

 アリストテレスが0を否定し、天動説を絶対視したのもギリシア神話タブーが関係していると考えられる。

 ただし、ギリシア哲学全てがそうだったわけでは無く、ピタゴラスは輪廻転生を持ち込んだり草食主義で犠牲の儀式を嫌って特定の神殿にしか行かなかったし、それとは別に地動説も存在していた。

 つまり古代ギリシアに於いては多様性があった。ギリシア哲学から多様性を取り除いたのがスコラ哲学だ。変わりに多様性を担保していたのがイスラム圏になる。だからルネサンスは、イスラム圏とキリスト圏の境界で発生するのだ(13世紀頃まで南イタリアがイスラム圏とキリスト圏の境界だった)宗教に対する寛容性が重要な要素になる。要するに破門上等のフリードリヒ2世みたいな君主がいないと受容自体が難しい。フィボナッチがアラビア数字を導入した時代もフリードリヒ2世時代だ。

 そしてアリストテレスという不純物が混じった結果、それを排除しようとする聖書原理主義が生まれる。その一例はアリストテレスは進化論を異端としていないので、カソリックが進化論を異端としていない。そのため進化論の否定は聖書原理主義に基づくものになる。

 しかし、西ヨーロッパからキリスト教を完全に排除してしまうとどうなるか?文明が崩壊し文字や数字すらない世界が続きそう。石造りの建物など無い。それすら東ローマやイスラム圏から来た技術。そして下の様な家に住んでいると。ルーン文字もローマンアルファベットの影響を受けていて、古英語の文字はローマンアルファベットにルーン文字を追加したもの。

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:West_Stow_Sunken_House.jpgより

 キリスト教無き中世は、この状態のまま1000年ぐらい続きそう。

 この辺りの塩梅が難しいよ。

 そのため経済の発展具合を考えて設定を変えるのがよさそう。経済が発展度で専業化度合が変わるので、経済の発展度が低い=分業化が進んでいない=食堂がない。高い=分業が進む=食堂が存在するとなり、必然性で考えれば答えは出るかと。もう一つは素材かな。金属資源に恵まれていない文明はそれだけでも足枷が多い。

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