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Sleeves At An Exhibition 03: Quatermass「Quatermass」(1970)

オリジナルアートワーク
Illustrated by mitch ikeuchi

Quatermass 「Quatermass」

概要

今回取り上げるQuatermassの「Quatermass」は1970年リリース。EMI傘下の、当時はまだ新興レーベルであったHarvest(当時はプログレッシブ・ロックを中心に扱っているレーベルでした)からの発表でした。メンバーはThe Outlaws(後にDeep Purpleを結成するリッチー・ブラックモア(g)が在籍していた)〜Episode Six(同じく後にDeep Purpleに加入するイアン・ギラン(vo)とロジャー・グローヴァー(b)が在籍していた)のミック・アンダーウッド(ds)、後にHard StuffやRoxy Musicに参加するジョン・ガフタフソン(b,vo)、Bland Xやフィル・コリンズなど、様々なレコーディングに参加することになるピート・ロビンソン(key,org,p)のトリオ編成。後述しますが後にRainbowがカヴァーする"Black Sheep Of The Family"をレコーディングしたことで知られるバンドとして知られますが、実は彼らがオリジナルというわけではないようで、同じ1970年にクリス・ファーロウが"Black Sheep"としてレコーディングしています(「From Here To Mama Rosa」収録)。ギターレスのハード・ロックバンドであり、ハモンド・オルガンを大フィーチャーしたヘヴィなサウンドが特徴ですが、The Rolling Stonesやエルトン・ジョンのストリングスアレンジで知られるポール・バックマスター(cello)も参加しているストリングスをフィーチャーした楽曲もあり、音楽的な幅の広さを見せています。そして忘れてはいけないのはとても印象的なHipgnosisによるスリーブアートワークで、個人的には彼らが手掛けた中でも屈指の出来だと思っています。

アルバム/楽曲解説

基本的にはいかにもブリティッシュ・ロック的なリフを強調したハード・ロックなのですが、ギターレスなのでハモンド・オルガンを歪ませてヘヴィなサウンドを出しています。その印象が強いので他が霞みがちですがジョン・ガスタフソンのvoが素晴らしく、バラードでも表現力豊かな歌唱で聴かせます。かと思えばストリングスをフィーチャーした現代音楽的な?インストゥルメンタルもやっていて、一筋縄ではいかないところもあります。とはいえ基本的にはハモンド・オルガンをメインにしたストレートなブリティッシュ・ハード・ロックなので、Deep Purpleがお好きな方はハマるんじゃないかと思います。

ぼくがこのアルバムを購入したのは大学生なってすぐの頃で、Rainbowを聴き出したばかりで今より音楽的な知識も乏しい中で初めて購入した(Rainbowがカヴァーしているからという理由で、しかも当時はRainbowの当該曲を聴いたことは無かった)プログレッシブ・ロックのアルバムであり、このアルバムとの出会いが無ければ今のようにプログレッシブ・ロックを含めた60〜70年代のブリティッシュ・ロックを聴きまくっているようなことは無かったわけで、そういう意味でもとてもとても思い入れのある作品です。もともとハモンド・オルガンの音色に惚れてDeep Purpleを聴き出していることもあり、今でも愛すべき作品です。ジャケットが人気なこともありオリジナルアナログ盤は結構高値で取引されているのですが、いつかは入手したいと思っています。

  1. Entropy
    アルバムの冒頭を飾るイントロ。短いインストゥルメンタルで、2.への導入になっています。

  2. Black Sheep Of The Family
    バンドを代表する楽曲で(というか一般的にはこれしか知られていない)、前述の通りリッチー・ブラックモアのRainbowがデビューアルバム「Ritchie Blackmore's Rainbow」(1975)でカヴァーしていることで有名な楽曲。ポップな曲で、確かに個人的にもバンドの代表曲として申し分ない完成度。Rainbowのヴァージョンに比べてリズムがミドルテンポになっています。

  3. Post War Saturday Echo
    ガスタフソンのvoが映える楽曲。ブルースっぽい?雰囲気からいきなりプログレ的な展開を見せます。

  4. Good Lord Knows
    ストリングスをフィーチャーした美しいバラード。

  5. Up On The Ground
    歪んだオルガンによるリフが印象的な疾走感あふれる曲で、Deep Purpleが演っていてもおかしくない雰囲気。

  6. Gemini
    こちらも疾走感がある楽曲ですが5.とは違う雰囲気で、間奏の鬼気迫るインタープレイがカッコいい。

  7. Make Up Your Mind
    ポップな出だしと思いきや間奏のインスト部分は複雑な展開を見せる。8分を超える楽曲。

  8. Laughin' Tackle
    10分を超える長尺の楽曲で、大編成のストリングスをメインに据えたインストゥルメンタル。ミック・アンダーウッドによるドラムソロもフィーチャー。

  9. Entropy (Reprise)
    アルバムのアウトロ。1.と同じ曲名ですが、8.の続き的な楽曲になっています。インストゥルメンタル。


楽曲リンク


詳細情報

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Discogs

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