見出し画像

6月某日

梅シロップを作ってから10日が経った。

梅シロップの作り方は簡単だ。
大きな保存瓶に梅と氷砂糖を交互に入れて朝に晩にと10日間ほどかき混ぜる。これだけ。

簡単に出来るし、手を掛けているのでその分なんとなく愛おしい。

完成した梅シロップを、さっそく炭酸で割って飲んだり、ゼリーを作ったりして楽しんでいる。
この時期にしか作れない・味わえない旬の味覚というものは、それだけで貴重だし滋味深いような気がする。

炭酸割りの梅ジュースを飲みながら、ぼんやりと空を眺めた。
老齢の母の友人であるYさんのエピソードがふと頭に浮かぶ。

Yさんには現在孫が10人いるらしく、その彼ら彼女らのために毎年いくつもの樽を使って梅シロップを仕込むのだとか。

丹精込めて作ったものを、たくさんの自分の孫たちがごくごくとおいしそうに飲む様を眺めるのは、何より嬉しいことだろう。

私に子どもはいないので、将来自分が祖母になることはないし、母を「おばあちゃん」にしてあげることも出来なかった。

自分の人生にあまり後悔はないけれど、違う道を歩めていたらどうだったのだろう、と思う時がたまにある。

冷蔵庫を開けてみると、梅シロップで作ったゼリーが丁度良くぷるん、と固まっていた。

3時になったら母と食べよう。
ガラスの器とスプーンを、食器棚から2人分用意する。


#創作大賞2023
#オールカテゴリ部門
#日日是好日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?