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自由との出会い

ある朝、自由になっていた
どこに行ってもいいし
なにをしてもいい

昨日はどうしていたのかしら
頭をよぎるものもなく
目の前の今日に進みだす

いつもの道を歩きながら
好きに寄り道をして
花を眺めて
あくびをする

交差点に佇んで
行き交う車を観察してみる






白は好き
自分の毛色と同じ色
黒は嫌い
気ままに飛んできては
ガアガア鳴いて騒ぐ
あの烏と同じ色

白が続けて通ったから
違うものを見にいこうか
電車がいいか
一列に並んで通学する子供達がいいか

道端の草むらに捨てられた空き缶に
真っ黒な蟻が出入りしている
寄ってたかって甘い汁を舐めている

頭上の黄色い菜の花には
真っ白なモンシロチョウが
浮気するみたく舞っている
その蜜も甘いのかい

まだ誰もいない公園を駆け
登れないジャングルジムを
クルクルと通り抜ける
ブランコの椅子は鼻先で揺らし
シーソーの上を軽やかに渡る

木漏れ日がキラキラと陰を揺らすと
風が芝の斜面を吹き抜けて
顔を撫でて過ぎ去っていった

そうだ海へ行こう
砂浜を歩こう
冷たい水に触れて
遠くの水平線を眺めに行こう

足跡をいっぱいつけて
波打ち際に穴を掘り
寄せて返す波と遊ぼう
砂まみれになるのもいい
びしょ濡れになるのもいい

誰かが忘れていった白いボール
濡れた砂に埋もれた貝殻
角の取れた緑色のガラス片
波間に揺れる小さな漁船

いつもの景色と違った景色
風の香りも
照る光りも
絶え間なく響く音も

四本の足を砂に埋め
波音を畏れず耳を立て
眩しさに負けず目を開き
大きな風景と向かい合う

自分自身を丸裸にして
目の前の世界にさらけだす
これが自由か

2021/6/1

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