見出し画像

おしゃべりしましょ|詩

おしゃべりしましょ

膝の上の特等席
見上げた先の優しい瞳と
見えない糸でつながっている

これなあに
なんでなんで

くるくるまわる拙い言葉
眠気を誘う柔らかな世界は
終わることなど
ないかのようで

おしゃべりしましょ

朝の電車
どこにでもある教室
みんなで並んで自転車こいで
若さという引力が渦を巻く

聞いて聞いて
そう、それな

あちこち飛び交う言葉に
前のめりで応える声
目に見えない
微かな不安が織り込まれてゆく

おしゃべりしましょ

映画をみたり
コーヒー淹れたり
一緒に過ごした記憶の数だけ
深まり濃くなる二つの思い

それでね
それからね

伝えきれない気持ちをのせて
二つの声が降り積もる部屋に
美しい火がゆっくり灯る

おしゃべりしましょ

一緒に花を摘んだり笑ったり
紅葉のような小さな手を引き
遠い記憶をなぞらえてゆく

約束はきちんと守ること
自分が嫌なことを人にはしないこと

気がつけば同じ言葉を伝えてる
教えられたことを次の子達に
やっと
言葉の意味に気がつきながら

おしゃべりしましょ

手を握ってもらい
背をさすってもらい
言葉もからだも不自由になれど

あの時どうだった
この時は楽しかった

また皆で行こうねと
明るい言葉に気持ちを隠し
優しい嘘に浮かぶ病室

おしゃべりしましょ

寂しい顔をそろえて
黒い服きて
静かに手をあわせて

さようなら
ありがとう

もうおしゃべりできないね
もう聞いてもらうことしかできないね
またいつか
そう、またいつか

2024/2/23

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?