プーチンの核とウクライナ侵攻のゆくえ 『雑感94 プーチンと核とウクライナ侵攻』

(8月15日記)
今回のテーマは「ウクライナ侵攻とロシアの核兵器」です。
これがアップされる頃には、ロシアがウクライナに侵攻して1年9ヶ月か10ヶ月くらい経っていることでしょうが、戦局に劇的な変化はないはずです。
ちなみに本稿は8月15日に書いています。

当初、プーチンは1週間か10日間で特別軍事作戦を終え、ゼレンスキー政権を倒し、新ロシア政権を樹立し、ウクライナを安全保障の緩衝地帯にする予定でした。
ところが、逃亡するはずのゼレンスキーはとどまり、国民に蜂起を呼び掛け、想定外の愛国心と防御で今日に至っています。

プーチンは、侵攻後の意外な展開に即座に手を打ちました。
侵攻3日後の2月27日、ロシアの核戦力を特別戦闘任務に移行させたのです。
これは、何かあれば核兵器を使うぞ、という恫喝でした。
そのため、西側諸国は攻撃力・殺傷力の高い武器の供与に二の足を踏みました。
アメリカもプーチンを決定的に怒らせないように、携行対戦車ミサイル「ジャベリン」や、携帯式地対空ミサイル「スティンガー」といった軽兵器の供与に留めていたのです。

西側諸国はすぐにキーウが陥落すると思っていたのに、ウクライナは耐えて、ロシアは一時撤退し、東部と南部の占領地の拡大という戦略転換をしています。

アメリカをリーダーとするNATO諸国が本格的な武器を供与すると決めたのは4月末のことでした。
この武器には、155ミリりゅう弾砲や、M142高機動ロケット砲システムのハイマースがあります。

その後、5月30日、バイデンはロシア領土内に届く長射程のミサイルシステムは供与しないと明言し、現時点では最大80キロまでの射程のハイマースしか供与していません。
これらはプーチンの核兵器使用を恐れてのことです。

9月にウクライナがハイマースを使って東部ハルキウを奪還すると、プーチンは核兵器の使用をほのめかしました。
そうして9月21日、ルガンスク州、ザポリージャ州、ドネツク州、ヘルソン州のウクライナ4州のロシア併合を支持すると発表し、4州への攻撃に対する核報復の可能性に言及しました。

2020年6月にロシア政府が公表した『核抑止政策の基本原則』によれば、通常兵器による攻撃でも、国家の存立をおびやかすものならば、核兵器による報復もある、となっています。
存立を脅かすものの解釈は、プーチン次第です。

ここから先は

3,293字
書評、偉人伝、小説、時事解説、コメント返信などを週に6本投稿します。面白く、タメになるものをお届けすべく、張り切って書いています。

書評や、その時々のトピックス、政治、国際情勢、歴史、経済などの記事を他ブログ(http://blog.livedoor.jp/mitats…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?