ライフサイエンスはここまで進歩した!『いのちの科学の最前線』チーム・パスカル 朝日新書

<お知らせ>

緊急で、レビューは7月初めになりますが、『安倍晋三元総理追悼論』(高木書房)を是非、読んで下さい。


安倍晋三元総理追悼論
深田匠
高木書房

現在までの最高の書であり、これ以上の内容の書は、たぶん出ません。
著者の情熱と誠実さと公正さも卓越しています。
一家に一冊、友人・知人にも配って下さい!!

<今回の書評>

(12月3日記)

本書のテーマは、生命にまつわる、10の最先端の研究でした。
その内容を目次から拾うと、

酵素の研究が解く性のグラデーション
いかにして腸内細菌はヒトと共生するか
脳のない生物にも知性はあるのか
死のメカニズムを生きる力に変える
敵にも味方にもなる免疫機構を見極める
老いの制御の今と未来
分子心理免疫学で「病は気から」を解明する
遺伝子研究が導く創薬のかつてない領域
タンパク質探求で生命現象の源へ
身体の外にも広がりゆくこころ

となっています。

具体的には、

哺乳類はY染色体があるだけではオスになれない
腸内細菌がいないと生きていけない
迷路を解く粘菌がいる
自然免疫と獲得免疫
老化現象は不可避か
「病は気から」は本当か
創薬研究の新たな次元へ
タンパク質研究の中心的な存在
こころとは何か

という研究が並んでいました。



今回は、覚えておくと一生使える基本的な知識を挙げたので、皆さん、努力して下さい!

性別を決める決定的要素として、Y染色体せんしょくたいと、X染色体があることは知っていますね。
染色体というのは、DNAの収納セットです。
DNAとは、生物が生きていくのに必要な情報が全て書かれた設計書で、ひも状で長く連なっていて、わずか6マイクロメートルの直径の核の中に入っています。
1マイクロメートルは100万分の1メートルです。

DNAは4種の塩基えんき
アデニン・A
チミン・T
グアニン・G
シトシン・C
が鎖のように連なってできています。

基本的にAとT、GとCがつい・塩基対になって、二重らせんの構造体を成しています。
ヒトのDNAは約30億の塩基対で構成され、この全塩基配列を、「ゲノム」と言っているのです。
ただし、ゲノムの中で遺伝子として意味を持つ部分、つまりタンパク質合成にかかわるのは、全体の約3%でしかありません。
3%のDNAによって構成される遺伝子の総数はヒトで約2万2000です。

DNAには遺伝情報が書かれています。
絡まったり、切れたら困るので、ヒストンというタンパク質に巻きつけて、コンパクトに折りたたんでおく、これを染色体と呼ぶのです。

本書では、図書館を核、本棚を染色体、棚の本を遺伝子、そこに書かれている文字をDNAと解説していましたが、「うまい、座布団1枚!」でした。

ヒトは染色体が46本です。46個の本棚のうち、2個が性決定にかかわる「性染色体」です。
哺乳類では、ヒトも含め、染色体の組み合わせがXYならオス、XXだとメスになります。
1990年に、オス化を促す遺伝子として「SRYエスアールワイが発見されました。翌年、メスになるはずのマウスに、これを導入するとオスになることがわかりました。
しかし、本書で紹介する立花氏は、2013年に、これだけではオスになれない例を発見し、衝撃を与えたのです。
結果として、分化前のオスとメスを厳密に分けるのではなく、連続したつながりを持った、スペクトラム状態であるとして、人為的にマウスの性をコントロールすることに成功しています。
ヒトに応用できるかどうかは、倫理の問題もあって先のことですが、詳細は本書を見て下さい。

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