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(美達の蔵出しオススメ) 142 『天国の国境を越える』李 学俊(イ ハクチュン)東洋経済新報社


※初期のレビューです。今回、初出です。ご留意下さい。

著者は朝鮮日報の記者であり、ドキュメンタリー監督です。
本書と同じタイトルで、ドキュメンタリー番組を作り、世界25ヵ国で放送されています。

脱北者。
北朝鮮から脱出する(した)人のことです。
金正恩体制になってからも、脱北者は減ることはありません。
故国を捨てて脱出するというのは、どれほど過酷な生活を強いられているのか、と思います。
成功するのは、ほんの少数で、最悪の場合、死が待っているのです。
本書では、折角、逃亡に成功したものの、逃亡先の韓国での生活が合わず、戻る人もいました。
そういう人は、北朝鮮こそ、良い国である、というプロパガンダに使われます。
それにしても、兵士や国境警備員の目を逃れ、草や川に身を隠しながらの逃避行は凄惨そのものです。
読みながら、胸の内で頑張れ、とか、もっと冷静に行動しなきゃ、と呟いている私がいました。

脱北者の逃亡範囲、驚くほど広いです。
ラオス・タイをはじめ、ヨーロッパ・アメリカにも逃げます。
道案内は脱北ブローカーと呼ばれる人たちですが、それぞれ、国境越えだけの担当者、さらに他国へ運ぶ担当者と分かれていました。
こういうのを読んでると、自分の境遇がいかに恵まれているか、痛感せざるを得ません。
普通に暮らしている人々が、まともに食べられず、餓死したり、収容所で殺される国ですから。
運動の時、同囚に話してやりました。
「北朝鮮に比べたら、メシが悪いとか、お菓子が食いたいとか、やってらんないとか、言ってる場合じゃないだろう」と。
同囚たち、「そうですねえ」とか言ってますが、20分もしないうちに「メシ、ちっとも良くならんですね」と言います。
私も「ひどいもんな」とか。

数ヶ月前に末端の北朝鮮兵士の写真を見たんですが、栄養失調で発育も悪く、骨と皮で目は幽鬼のようでした。
本当に餓死寸前という風情で、一般人よりはるかに待遇のいい軍でさえ、下の兵士はこんなのか、と嘆息したものです。
北朝鮮、上の階層(成分と称していますが)でないと、まともな体格に成長しないんです。
庶民とか、みんな小さくて痩せています。
それなのに金正恩、肥えてるんですよね。
あの国は地獄みたいなものだと思います。
でも、携帯電話とか、結構、普及しているそうです。
格差なんでしょうね。
共産主義って平等を標榜しているのに、その格差は、日本の比じゃありません。
もっとも共産主義じゃなくて、金王朝の独裁国家ですが。

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