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(美達の蔵出しオススメ)『ナチスと精神分析官』 ジャック・エル=ハイ


※2015年8月に旧ブログに投稿した書評です。ご留意下さい。

ホロ・コースト。

6年あまりで、600万人のユダヤ人を虐殺したまわしい歴史のことです。
ヒトラーという狂人が主唱し、ナチスのメンバーは目的達成のために全精力を注ぎ込んだのでした。

本書は、ヒトラー自殺後の敗戦を迎え、連合軍の戦犯となったナチスの幹部など22人を獄中で精神分析した物語です。
中心はヒトラーの後継者とされていた、ヘルマン・ゲーリング国家元帥兼空軍総司令官と、米軍の精神科医ケリー少佐のやりとりになりますが、他の21人のナチスの男たちの様子も描かれていました。

ゲーリングは敗戦間近に、ヒトラーの不興を買って、処刑命令が出たのですが、ゲシュタポ(秘密国家警察。もとはゲーリングが創設した、恐怖の機関)のカルテンブルナー長官が「書面による確認なしで」(いかにもドイツ官僚的!)処刑するのを渋ったため、命拾いしました。

代わりにヒトラーは自殺の際、後継者を海軍元帥のデーニッツ(インテリでナチスの中では人格者)にしたのです。後にニュルンベルク裁判(東京裁判のモデル)で裁かれる22人は、錚々そうそうたるメンバーでした。

副総統のルドルフ・ヘス
デーニッツ
カルテンブルナー
ヒトラーの秘書マルティン・ボルマン
副首相パーペン
外相のリッベントロップ
中央銀行総裁で経済相のシャハト

などなど、ナチスの活動を支えた面々です。彼らは独房に入れられ、ケリー少佐が通訳と共に訪問して面談する形をとりました。

オビに「ナチスの心は病んでいたのか」とありますが、600万人のユダヤ人(他にも200万人のポーランド人、数十万人のロマ人など)をシステマティックに虐殺し続けていた時、彼らの意識はどうだったのか、誰しも関心を持つことでしょう。

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