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(美達の蔵出しオススメ) 『キレる!』 中野信子 小学館新書


※2019年10月に旧ブログに投稿した書評です。ご留意下さい。


キレる、という言葉は、今ではすっかり日常語となりました。ちょっと昔なら、プッツン、と称した時もありました(プッツン女優として有名な人もいましたね)。要は衝動(情動)があふれて、堤防が決壊すること、怒りなどが爆発(噴火)することです。
本書は脳科学者の著者が、キレるということをネガティブ(否定的)に捉えず、具体的な対処及び活用法について述べたものでした。

近年、

児童虐待、クレーマー、あおり運転、DV(ドメスティック・バイオレンス)、キレる老人

などがメディアをにぎわせることがとみに増えていますが、本来、キレるという情動(感情)は人間につきものという視点に立った上で、怒りの正体を解明して、キレる人やキレる自分に振り回されずに生きて行く方法を採るというのがテーマでした。

第1章から、

損するキレ方、得するキレ方
キレる人の脳で起こっていること
キレる人との付き合い方
キレる自分との付き合い方
戦略的にキレる言葉の運用術

という目次になっています。

好きな言葉・考え方ではありませんが(損得を第一に考えて行動することは)、

ちょっとしたことで瞬間湯沸かし器のように沸騰して即座にキレる、我慢に我慢を重ねた末にキレ大爆発してしまうのが損なキレ方、

自己の感情を素直に受けとめ、できるだけストレスが小さくなるようなタイミングを逃さずにキレる、

伝えたいことを伝えたいタイミングで過不足(これが難しい!)ない熱量で表現するのが得なキレ方、

と著者は述べていました。

次にキレた後の行動について、損と得があり、暴力行為や周囲の同調や納得が得られなければ損、自分の本意が伝わる、周囲の同調も得られるのを得としています。どちらにせよ、怒りの感情の流れのまま衝動的に行動してしまうことはよくありません。

キレる人に対して、単に逃げる・避けるというだけではなく、対応する、言葉・態度で相手からの攻撃を返すということも提唱していました。
自分が不利益をこうむっている時、搾取されている時、相手が圧力を加えてきた時、それに対して怒りを感じるのであれば、どんなにキレることが嫌でも、また、慣れてなくても、自分の怒りをキレるという形で、はっきりと相手に示す必要がありますと述べていますが、世の中にはそれができない人が多いのです。

この点で、著者のこの主張は理想論であり、どんなに返す言葉を学んでも、実際に行動に移せる人はかなり少ないと私は見ています。切り返す言葉を覚えても、キレている相手に対して威圧感や恐怖感を抱いていれば、何もできないのが普通です。
それでも参考にはなるであろうというので紹介していますが、著者はところどころで弱者をおもんぱかる心の薄い人、というのが表れてしまっていました。

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