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(美達の蔵出しオススメ) 144 『経済成長って、本当に必要なの?』ジョン・デ・グラーフ、デイヴィッド・K・バトカー 早川書房


※初期のレビューです。今回、初出です。ご留意下さい。

著書のグラーフは、「社会と人々の幸福」を題材に映像作品を制作してきたジャーナリストで『Take Back Your Time』という団体を主宰し、生活にゆとりを取り戻そうと提唱しています。
他方、バトカーは環境経済学者で、生態系サービスの経済的価値評価を行ってきた人です。
本書のエピソードの大半はアメリカですが、構造的には日本も変わりありません。

そのアメリカですが、日給1ドルくらいで働く途上国の労働者との競争にさらされ、自らも低賃金で休みもとれず、命を担保にして教育費・住宅ローン・子と親のデイケアの費用を捻出し、自分は帰宅後、疲れてテレビを見るだけという生活。
GDPは世界一だが、幸福度は世界でも低いという矛盾が述べられています。アメリカ、豊かなはずなのに幸福度が低いという歪みが顕著です。ヤンキー、見た目も、非常にハッピーに見えるんですが、違うようでした。

本書の主張は、グローバル競争をベースに、富裕層への所得税減税・様々な経済への規制を廃止しろ、というものです。
よく、幸福度、福祉がテーマとなると、ブータンや北欧が引き合いに出されますよね。ブータンの国民の総幸福指数、有名です。
でも、私、昨年、週刊誌のグラビアで、このブータンの人々へのインタビュー記事を読んで、えっ、と思ったことがあります。
何人もの老若男女が、口を揃えて「幸せだ」と言うのはよしとしても、将来への心配・不安は?という質問に、中年以上の多くが、「食べる物」と答えていたのです。
食べ物の心配・不安を抱えながら、「幸せ」というのは、ひょっとしたら幸せの尺度、感覚が我々と全く別の次元じゃないかと思いました。だって、食べ物の不安ですよ。
これ、考える材料となりました。

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