朔の話 05┃「朔」の誕生
コロナ禍における新規事業「酒米オーナー制度2.0」を着想したものの、周囲の反応はとても鈍く、意気消沈する毎日でした。
SASIの近藤さん
見るに見かねた知人から、「庄司さんの考えていることを具現化できる人だから、一度会ってみては?」と言われ、SASIの近藤さんを紹介してもらいました(その知人は近藤さんに「風呂敷をたためない人がいるから何とかしてやってくれ」と言われたそうです)。初めてのミーティングは、リモート会議。僕は出張先のホテルで、チェックアウトを済ませたロビーで参加しました(今でもよくその光景を覚えています)。
僕は、たいして期待していませんでした。これまでどれだけ言葉を尽くして自分の実現したいイメージを話しても、首をかしげられるばかりだったからです(今考えると、当然です・・・その当時巻き込んだ皆さま、ほんま、すんませんでした)。また一生懸命に話して、またモヤモヤするのかなと思い、できるだけ期待しないでおこうと思いつつ、また一生懸命、話しました。
日本酒には大きなポテンシャルがあること、地域文化を紐解くカギになり得ること、コロナ禍でこそチャレンジできるビジネスモデルであること。僕がやりたいのは、日本酒の販売(ハード/モノ商品)ではなく、地域文化の開拓とその体験(ソフト/コト商品)であること。自分たちが見慣れた景色は、よくよく見ると、とても美しいものやことで満たされており、コロナ禍はそれに気づく機会ではないかと思うこと。
近藤さんは、そんな僕の話を聴きながら、スケッチブックに何か、書きものをしておられました。そして、いくつか質疑応答があり、近藤さんが「ちょっと考えさせてください」と言われ、リモート会議は終了。そんなに長い時間ではなく、予定していた1時間に満たなかったと思います。終わった時、僕は「あ、これは期待できるかも」と感じました。それでも、「期待しないでおこう」と考え直しました、落胆とのギャップは精神に堪えるから。
2週間後、SASIさんのオフィスに伺いました。宝塚市にあるブックカフェ、おしゃれで機能的だと思いました。そこで、近藤さんから、あらためて僕の考えていることややりたいことの整理があったうえで、「朔」という文字を示されました。
「朔」という一文字のストーリー
朔は、「ついたち」とも読み、ものごとの始まりを表す文字です。
近藤さんは、僕がやりたいこと、地域文化の開拓とその体験は、「学びなおし」であると言いました。それは、すでにある見慣れたことに目を向け、体験し、そこで何かを発見し、新たなことが始まる。だから「朔」なのだ、と。
素晴らしいと思いました。まず、一文字「朔」の中に、ストーリーが潜み、それが僕の言いたい事と合致している。漢字一文字という潔さ。中でも「屰」という象形文字(人を逆さまから見た図だそうです)が持つプリミティブな印象が、日本酒が持つ宗教性との関連をうかがわせる。
上にある線描は、盃と、朔(さく)の「S」を表しています。よくこんなに綺麗に描くものです。
原案では、朔の下に「Sa-ku」と書かれていましたが、発音次第では海外でのスラングでよからぬ意味があるため、「New Moon」に変更しました。もっとも、「ニュームーン」とは身内を含めて誰も読まないので、Kura Masterへの応募も「Saku」で応募し、受賞の際も「サク」と言われていました。今では、特に問題なかったのかな、と思います。
とにかく、「朔」は産まれました。
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