大草(おくさ)のねこ物語
物語をさがして vol.04
愛知県長久手市の「福祉の家」をご存じですか?
長久手温泉「ござらっせ」のある建物といえばお分かりでしょうか。
長久手温泉は地下1800mから湧き出る天然温泉。
すぐそばには農産物直売所「あぐりん村」もあり、いつもたくさんの人で賑わっています。
先日、福祉の家の横を通るときに、何か石像と看板があるのが目に留まり、見てみることにしました。「福祉の家」バス停のすぐ横です。
バス停に大きな招き猫
しばしば通るこの道に、こんなものがあったとは!
これまで気づきもしませんでしたが・・・
コンクリートでできた大きなまねき猫が丸い台座に座っていました。
ちょうど目と目があうような背の高さ。
そのつぶらな瞳にはガラスが入っているようです。
よくある市販のまねき猫のような目力や赤や金色の派手な装飾はまったくありませんが、素朴な表情をしていて、キツネのようなほっそりした面立ち、その飾らない姿が愛くるしく見えてきます。
よく見ると白い爪、ギザギザした白い前掛けのような胸毛のような装飾も。
まねき猫であるばかりか、地蔵様のようにも見えてきます。
見れば見るほど味わいがありますね。
まねき猫というものは、一般的に「右手を挙げている猫は金運」「左手を挙げている猫は人を招く」といわれていますから、この猫は人を招いているのでしょうか。
そばにある看板を見てみると・・・
こんなふうに書いてありました。
ねこ物語は戦前、昭和10年までさかのぼるようです。昭和10年生まれだとすると今年で87歳。バス停前で愛嬌を振りまいていたまねき猫は、持ち主の移転後もなお捨てられず、持ち主を変えて、ずっと存在していたのでした。今の場所に出現したのは2019年の春。長久手市観光交流協会「上郷プロジェクト」のみなさんの手によるものです。
長久手市観光交流協会 季刊誌「雑人」の記事に、まねき猫にまつわる伝説として、こんなことが書いてありました。
そうなんですね。
長い時間、バス停で人の出会いと別れをじっと見つめ続けてきたのでしょうか。
そして看板にもあるとおり、なんと、この猫、名前がまだないのだそうです。無名のものには名前がつけたくなりますね。猫のゴッドファーザー(名付け親)になれるチャンス到来です。
そのうえ、
これからは吾輩のことについて皆さん、いや、あなたが物語の続きをつくってください
とあるので一人静かにテンションが上がってしまいます。
ああ、名前はどうしよう・・・悩ましい・・・
(前回の記事で「龍のいそうな無名池」に恐れをなして名づけをできなかった私)
名前の候補を挙げてみましょう。
Big grass (大草)から、「ビー・ジー」コンクリートの灰色から「グレイ」左手を挙げてるから「レフティ」バス停にいたから「ストッパー」
いやいや、この子は昭和生まれでした。「福招きの金助」「呼び込みのお七」「縁結びの寅助」「バスを留吉」とか?あれ、この猫、性別はオス・メスどっちなのでしょう。まあ、どちらでもいいですね。ジェンダーフリーの世の中なので突き詰めず自由に考えることにいたしまして・・・私のねこ物語を書いてみたいと思います。
大草のねこ物語~五郎の場合~
ふくまつ。
どうです? いい名前・・・でしょうか??
加藤さんの話
今の場所に設置する以前にまねき猫を保管されていた、長久手市在住の加藤義郎さんに話を聞いてみました。
加藤さんが小さいころからあったまねき猫には、「右から拝むとよい別れ」のほかにもみなさんがいろんな伝説を噂しているそうですが、まねき猫の作者がコンクリート像作家の浅野祥雲さんのてほどきを受けたという話も聞かれたことがあるのだとか。真偽は分からないけれど・・・と笑ってお話されていましたが、近隣の日進市五色園大安寺や岩崎御岳山などに立ち並ぶ浅野祥雲作の大きなコンクリート石像のことを思うと、教えを受けたか影響を受けたか・・・何かしらのつながりがあっても不思議ではないなあ。と興味深くお話を伺いました。
また、加藤さんは「看板にも書いた通り、物語を考えてみてください。猫を見た人が、にっこり笑顔になってくれたらいちばんいい」とおっしゃっていました。
長久手温泉にお出かけの際には、ぜひ大草のまねき猫に会いに行ってみてくださいね。