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視覚障害者の住まい探しでネックとなる乗り越えるべき3つの障壁

住まい探しは「挑戦」!
視覚障害者が抱える苦悩と不安

引越しとは、新たな挑戦である!大げさに思われるかもしれませんが、障害者にとっての住まい探しは、その方にしか分からないような計り知れない苦悩や不安が伴います。なかでも、視覚障害者。人間の五感において視覚の占める割合は83%にも上ると言われ、私たちは視覚によって多くの情報を処理しながら、日々の生活を送っています。つまり、生活の多くは、視覚に依存しています。だからこそ視覚障害者にとっての住まい探しは困難がつきもの。多大な労力を要するのです。また、単に立地や予算だけでなく、視覚障害者が安心して快適に暮らすためには、視覚情報なしで識別できる仕組みや、安全性を高める設計などの特別なニーズも多く存在します。それら一つひとつを根気よくクリアしていかなければなりません。もちろん、周囲に暮らす人たちが視覚障害者そのものに対する知識や理解を深めることも課題。視覚障害者にとっての住まい探しは、もはや「挑戦」といえるほどの幾つもの障壁が存在しています。ではその障壁とはどのようなものなのか。そして、私たちは、視覚障害者に向けてどのようなアクションを心掛けるべきなのか。このあたりを深掘りしていきたいと思います。

視覚障害者が乗り越えるべき
住まい探しにおける3つの障壁

賃貸における住まい探しは一般的に、物件選び(情報収集)にはじまり、内見(現地確認)、入居審査(賃貸借契約)といったプロセスが存在します。技術の進歩が目まぐるしい現代のなか、視覚障害者にとってどのような困難が待ち受けているのか。ネックとなっている乗り越えるべき3つの障壁を紹介していきます。

1)情報アクセスへの障壁

ネットでの情報収集。不動産検索サイトを片手に自身の希望条件とお部屋のマッチングは、住まい探しの大きなポイントではないでしょうか。不動産情報サイトとは、物件情報・間取り・ビジュアルなど、自身の希望条件に沿ったある程度の情報収集や絞り込みが自身で気軽にできる便利なツールです。魅力的に物件を見せるよう、各不動産業者が工夫を凝らして掲載しています。しかし、それらの情報は視覚でのキャッチが前提であるため、このような情報源へのアクセスは視覚障害者にとっては困難です。パートナーや知り合いに協力を要請することや、点字や音声出力対応アプリ、スクリーンリーダー対応のウェブサイトを利用するなど、支援や工夫を凝らしながら情報をキャッチしているのです。

2)物理的な障壁

物理的な障壁とは、暮らす上で支障となるような具体的で物質的な障害のこと。視覚障害者が安心して安全に暮らすには、物質的な障害への対策も極めて重要です。たとえば、段差(階段)や手摺り、廊下の広さやエレベーターなど。私たちが何気なく目にするものでも、視覚障害者にとっては大きな役割があることに気づかされることが多々あるものです。また、日常利用する屋外施設へのアクセスやアプローチ、歩道の充分な広さや誘導点字ブロック、音響式信号機の有無も、視覚障害者にとっては非常に重要なポイントに。室内においては、間取りと生活導線、音声式家電への対応や火災警報器やセキュリティシステムの提供など。視覚障害者にとっては、安心安全に暮らすための特別なニーズが数多く存在するのです。いろいろと検討しなければならない要素が多く、希望の物件に出会うことはなかなか容易ではないことが分かります。

3)社会的な障壁

視覚障害者という理由で入居審査が通らなかった、もしくは、門前払いだったという話も耳にしました。このような現実や見解については、視覚障害者に対する一般的な理解不足が原因であることにほかなりません。たとえば、視覚障害者は日常生活で特別なサポートが必要である事から、他の入居者に迷惑をかけるといった誤った認識。また、大家さんの中には、視覚障害者は事故を起こすリスクが高いと考える人もいますが、実際には視覚障害者は自分自身の安全を確保するための技術や方法を多く学んでいます。また、視覚障害者専用の補助アイテム等における技術の進歩も、彼らの自立を大きく支援しているのです。このような誤解や偏見は、社会全体の意識改革が求められる問題です。

障壁を乗り越えるための重要なキーワード
私たちが実践すべきアクションは?

前述のとおり、視覚障害者の住まい探しはまさに前途多難。希望に沿った物件で新生活を迎えるには、幾多の困難なプロセスが待ち受けているのです。その障壁を乗り越えるには、次の3つのキーワードが不可欠となります。
 
①  テクノロジーの発展・普及
②  適切な設計
③  広範な教育と啓発
 
音声認識機能やGPS機能などテクノロジーのさらなる発展と普及により、視覚障害者にとってスムーズな情報アクセスを実現していくことが必要です。そして、視覚障害者にとっての障害を取り除くための適切な設計。さらに視覚障害者への理解を深めるためには、私たち不動産業者や建築士等が中心となった広範な教育と啓蒙を実施してくことが求められています。すべての人々が差別や障壁なく平等な暮らしを実現できること。そのためにも視覚障害者に対するサポートと理解を深め、すべての人にとってより良い未来を築く基盤づくりを目指していきましょう。

まとめ
1.視覚障害者の住まい探しの現状を知ろう
視覚障害者の住まい探しは、計り知れない程の苦悩や不安がいっぱい。いわば「挑戦」である!
 
2.視覚障害者が乗り越えるべき障壁 ①「情報アクセスへの障壁」
視覚に向けた情報で溢れている社会において、視覚障害者の住まい検索は苦難が伴います。
 
3.視覚障害者が乗り越えるべき障壁 ②「物理的な障壁」
視覚障害者にとっては、暮らしに支障のある物質的な障害に対する対策も重要です。
 
4.視覚障害者が乗り越えるべき障壁 ③「社会的な障壁」
視覚障害者に対する社会的な誤解や偏見も大きな課題です。
 
5.視覚障害者が障壁をのりこえるための3つのキーワード
テクノロジーを活用した情報アクセス、適切な住宅設計、そのための教育と啓蒙がキーワードです。


銀座の不動産会社「株式会社東京中央建物」社長。”多文化共生社会への貢献゛を掲げて、外国人に向けたアパート探しの事業を手がけています。マイノリティの立場で考え、誰ひとり取り残さない賃貸の実現を目指していきます。


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