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住まい探しのマイノリティ「住宅弱者」に貸し渋る大家さんのワケは?

いまや社会問題に!?
住まい探しのマイノリティ「住宅弱者」とは?

マイノリティ(minority)とは、「少数」「少数派」を意味する言葉。また少数でなくても、社会的に弱い立場の集団は「マイノリティ」と定義されています。「住宅弱者」とは、国籍・性別・障害者・年齢・家庭環境など、住まい探しに困難を抱える人たちのこと。いわば、住まい探しのマイノリティ。少子高齢化や経済的要因、社会の多様性など様々な背景があるなか、その割合は全人口の30%に上るとされています。さらに数年後には45%に達するとも見込まれており、住宅弱者はいまや大きな社会問題といっても過言ではありません。借りたくても借りられない理由が住宅弱者にあるのであれば、貸したくても貸せない理由が大家さんにもあるはず。大家さんが賃貸経営をするそもそもの目的は何か?そして、大家さんが住宅弱者に住まいを貸し渋るそのワケは何か?その要因について考えていきたいと思います。

賃貸経営の目的とリスク
大家さんが住宅弱者へ貸し渋るワケは?

「将来の安心のために賃貸経営で老後資金と不労所得を」。このような志で賃貸経営をはじめる大家さんの声をよく耳にします。不動産の相続や利活用、税金対策など、きっかけや背景は様々あるなか、大家さんの賃貸経営の目的は投資や資産運用であることがほとんど。その目的は救済や慈善事業ではないことを理解しなくてはいけません。賃貸経営には一般的に次の6つのリスクが存在します。
①     空室リスク
②     滞納リスク
③     災害リスク
④     不動産価値下落リスク
⑤     老朽化による修繕リスク
⑥     金利上昇リスク
このような様々なリスクが存在するなか、大家さんは「利益を効率よく正確に得ること」を目標に賃貸経営に投資しているのです。大家さんが住宅弱者に住まいを貸し渋るワケ、ズバリそれは大家さんがこれ以上のリスクを取りたくないこと。つまりリスクを増幅させる不安こそが一番の貸し渋りの理由であると考えられます。それでは、大家さんは何に不安を感じるのでしょうか。そこを紐解いていきましょう。

大家さんが住宅弱者に抱く不安
その3つの要因とは?

大家さんが住宅弱者に不安を感じる理由は大きく分けて3つの要因です。
 
1)経済的要因への不安
大家さんは滞納のリスクの観点から、安定した収入が見込める人に住まいを貸したいと考えます。そのため非正規雇用労働者や生活保護者の場合、収入の不安定さから滞納リスクが大きいと思われる傾向にあります。
 
2)事故や事件への不安
不動産業界には「心理的瑕疵(しんりてきかし)」という用語があります。これは貸す方、借りる方に心理的な抵抗が生じる恐れのあること。孤独死も心理的瑕疵に相当するため、高齢者は敬遠されがちです。遺品の処理や、次の入居者への告知もできれば避けたい事案です。室内でのケガや、火災事故への不安から、障害者という理由で断られたとう事例もあります。
 
3)偏見・思い込みからの不安
偏見や思い込みによって、トラブルへの不安を抱く大家さんも多く存在します。たとえば、外国人への偏見。文化や慣習の違いから「◯◯人は◯◯だから…」とネガティブに決めつけること。また、LGBTQ=変わり者といった思い込みから、近隣トラブルを警戒する声もよく聞かれます。
 
このように挙げてみると、確かに大家さんがリスクをなるべく取りたくないと考えるのは仕方がないことかもしれません。

住宅弱者の課題解決に
必要な2つの取組み

それでは住宅弱者の課題を解決にするには、どうすればよいのでしょうか。まず必要なことは、大家さんと住宅弱者と言われる方がコミュニケーションを取ることです。現状や背景をきちんと聞けば誤解や思い込みだった、不安が解消されたということも少なくないと思います。そして、大家さんへのメリットや支援を考えることも必要です。幅広く入居者を受け入れることによる空室対策はもちろん、「住宅セーフティネット」といった国が改修費や家賃を補助する制度もあります。
 
昨今は「空き家問題」と言われているとおり、空き家が増え続けていることが深刻にささやかれています。にもかかわらず住宅弱者も増え続けているという現状も。また、人口減少や財政難により、これまで住宅弱者をサポートしてきた公営住宅の増加も見込めない状況にあると言われています。つまり民間による一般不動産への受け入れを今まで以上に考えていかなければならない時代。私たち不動産業者は、大家さんの不安解消に努め、住宅弱者の問題に向き合っていきたいと思います。

まとめ
1.住宅弱者と言われる人たちは全人口の30%
国籍・性別・障害者・年齢・家庭環境など、住まい探しに困難を抱える人たちがいます。
 
2.賃貸経営は利益のため。ボランティアではない
賃貸経営の目的は投資や資産運用。救済や慈善事業ではないのでリスクを取りたくないのは当然です。
 
3.大家さんが住宅弱者に抱く3つの不安
経済的要因への不安、事故や事件への不安、偏見・思い込みからの不安が挙げられます。
 
4.コミュニケーションと、大家さんへの支援が大切
借りたい方と大家さんがきちんと話すこと、そして大家さんへの支援も必要。「住宅セーフティネット」といった制度もあります。


銀座の不動産会社「株式会社東京中央建物」社長。”多文化共生社会への貢献゛を掲げて、外国人に向けたアパート探しの事業を手がけています。マイノリティの立場で考え、誰ひとり取り残さない賃貸の実現を目指していきます。

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