ウルトラマンリーズ 第十一話「保護者宇宙人」

第十一話 保護者宇宙人
彗星怪獣 パワードドラコ 登場

登場人物
新田 光一(22)…文化交流センター職員
ツルク星人ヤマオカ…女、孤児の世話係
ヤマオカ人間態
マノン星人ジョウガサキ…女、戦闘・監視員
グローザ星系人クボ…男、オペレーター
ガルメス人ハイダ…男、諜報
ルパーツ星人イナムラ…男、センター代表
子供A…小二女子
子供B…小二男子
子供C…小六男子
子供D…小三男子
子供Aの同級生1
子供Aの同級生2
子供Aの担任
子供Bの担任
子供Cの同級生1
子供Cの同級生2
子供Cの担任
子供Bの同級生1
子供Bの同級生2
子供Dの同級生1
子供Dの同級生2
教師(声)
その他生徒・教師・保護者
ウルトラマンリーズ
パワードドラコ

◯文化交流センタービル・キッズルーム

テレビに繋いだ家庭用ゲーム、おもちゃで遊んだり、ノートに絵を描いたりして遊ぶ子供A・B・C・D。

◯同・キッズルーム前廊下→キッズルーム

窓からキッズルームの様子を見る新田とツルク星人ヤマオカ。

ヤマオカ「皆怪獣災害で親だったり家だったりを失った子供です。ここに居るなら挨拶ぐらいしといた方がいいでしょう」

新田「そ、うですね……」

ヤマオカ「じゃあもういいですね」

新田「何がですか?」

ヤマオカ、ドアを開けてキッズルームに入る。

子供A「あ! チーちゃんだ!」

ヤマオカ「うぇーい」

子供B「おやつ? ねえおやつ?」

ヤマオカ「なぁんでお昼ご飯より前からおやつの事考えてんのさ(笑)」

新田、ヤマオカと子供達のやり取りを聞いて軽く驚く。

子供C「どうしたんですか? こんな時間に」

ヤマオカ「ん、いやね、ここの職員が一人増えたから皆にも挨拶さしとこうと思って」

子供D「えー!? 誰誰!? 何星人!?」

ヤマオカ「ふっふっふっ、実はねぇ、人間なの」

子供A「えー!? 人間!?」

子供C「珍しいですね!」

ヤマオカ「そーなのよ! さぁでは期待値のハードルがMAXまで上がり切った所でご登場頂きましょう、新しく入った職員の光一君でーす!」

ヤマオカ、ドアの向こうに隠れている新田に「入って来い」というジェスチャー。
新田、困惑しつつ入室。
子供達、『新しい職員にワクワクしてたけど実際目にしたら本当にただの人間でちょっと冷めたけどそれを表に出さないようにワクワクを維持する』みたいな微笑みで迎える。

新田「えー、と、ただ今ご紹介に預りました、新田光一といいまーす。よろしくお願いします」

子供達、軽い拍手。沈黙。

ヤマオカ「えー、じゃあ、光一君に質問がある人!」

一瞬の間の後、子供C挙手。

ヤマオカ「はい、じゃあ亜純」

子供C「光一さんは、何でここで働こうって思ったんですか」

新田「あー、えーとね、色々あって……」

新田、ヤマオカをチラ見する。ヤマオカ、首を少しだけ横に振る。

新田「皆はヤマオカさん達がその……宇宙人だって事は知ってる、んだよね?」

子供達、頷く。

新田「僕は人間だけども、色々あってここの皆さんの活動を知って、それを手伝う事にしたのよ。平和を願う心は地球人も宇宙人も同じだからね」

子供達、真顔。無言。

ヤマオカ「はーいじゃあ他に質問ある人!」

子供B、挙手。

ヤマオカ「はいじゃあ航誠」

子供B「えーと、好きな食べ物は何ですか」

新田「あー、そうで、そうだねー、スドウのご飯にのりたまかけたやつかな」

爆笑する子供達。

◯同・キッズルーム前廊下→廊下

廊下を歩く新田とヤマオカ。

新田「子供の笑いのツボってのは良く分からないっすね」

ヤマオカ「そう? 分かっててやってると思ってた」

新田「いやいや分かんないですよ、あれの何が面白いのか(笑)……あそうだ、あと、言った方が良かったですかね、僕がウルトラマンだって」

ヤマオカ「いや、言わなくていいんじゃない」

新田「そうですか? でも」

ヤマオカ「あの子達は何であそこで暮らしてると思う?」

新田「そりゃ、怪獣災害で……」

ヤマオカ「そう。だからウルトラマンがもっと頑張ってれば自分はこんなことになってなかった、と思う子がいるかも知れない」

新田「あの、僕今すごいクズみたいな事思ったんですけど言っていいですか」

ヤマオカ「どうぞ」

新田「そんなん言える立場じゃなくないですかあの子らは、僕だってあれでも限界まで頑張ってんのに」

ヤマオカ「(穏やかに)そんな事は分かってるんだよ、私も。あの子達も。だから君が正体をバラしてもあの子達は君に怒ったりしないだろうね。お門違いだって分かってるから。でも目の前のコイツがもっと頑張ってれば親や家が無事だったかも知れないっていう気持ちは心の内側にずっと溜まって、それが大きなストレスになりうるっていうのは分かるでしょう」

新田「……はい」

ヤマオカ「だから言わないままでいいよ……ごめん、君を責めてる訳じゃなくて……あの子達、今の所に移ってからまだあんま経ってなくて苦労してるみたいだし、これ以上辛い思いをさせたくなくて」

新田「いえ……」

ヤマオカ「あの、君がここに来る前から凄い頑張ってたのは皆分かってるからね。じゃ」

ヤマオカ、丁字路でオフィスに通じた廊下に曲がって新田と分かれる。

◯同・キッズルーム前廊下

翌日。資料を持って移動中、通りがかりに窓からキッズルームを覗く新田。誰もいない。ヤマオカ、通りかかる。

ヤマオカ「今日は皆学校だよ」

新田「えっ学校行ってんすか」

ヤマオカ「うん、一昨日は土曜で昨日は日曜だったでしょ」

新田「あー、そっか……」

◯学校・2―1

授業中。苦しんで問題を解く子供A。

◯同・3―1

授業中。上の空の子供B。

◯同・3―2

体育。握力を計る子供D。

◯同・6―2

授業中。黙々と問題を解く子供C。通路を挟んだ左隣の席の子供Cの同級生1、子供Cに問題集を見せて問題の一つを鉛筆でトントンする。

子供Cの同級生1「ねーあっちゃんここ意味分かんないんだけど」

子供C「あーだからここは先にここの体積を引いて……」

◯文化交流センタービル・オフィス

新田、クボとハイダにパソコンの操作を教わっている。

◯学校・2―1

帰りの会の前、子供Aの担任がプリントを配っている。

子供Aの担任「はいこれ家庭数なー」

子供A、配られたプリントを見る。授業参観のお知らせ。

◯同・3―1

子供Bの担任「はいじゃあ今配ったプリント見て欲しいんだけど、あっ、家庭数の人は誰かに見してもらってね」

子供B、ノートの角にパラパラ漫画を描いている。

◯同・3―2

子供D、隣の席をチラっと見るが隣の席の子供は後ろを向いて後ろの子供と話している。

◯同・6―2

子供C、右隣の子供Cの同級生2の方を見る。

子供C「見して」

子供Cの同級生2「うーい」

子供C「あがとー」

◯文化交流センタービル・玄関→キッズルーム前廊下(夕方)

帰ってくる子供達を出迎えるヤマオカ。

ヤマオカ「おかえりー」

子供達「チーちゃんただいまー」

五人、ビルに入って廊下を移動。

ヤマオカ「今日何した?」

子供D「うーん、授業」

ヤマオカ「そっか」

子供B「あとね、沼倉が一時間目に急に何か気絶してね、何か貧血だって」

ヤマオカ「そっか、明日レバニラ出そうかな」

子供C「あと、今度……」

五人、丁字路で新田に会う。

子供A「あ光一だ!」

新田「呼び捨てすんなよ(笑) おかえりー」

子供C「ただいまー(笑)」

子供D「ねぇ今日何食べた? 朝」

新田「今日? 今日はねぇ、お茶漬け」

子供D「えーのりたまじゃないの!?(笑)」

新田「毎日は食べてないわ!(笑)さいなら」

新田、キッズルーム前で五人と分かれる。

子供A「光一どこ行くのー?」

新田「仕事よ仕事。俺だって働いてんだから」

新田と入れ替わりで向こうからイナムラが歩いて来る。ヤマオカとイナムラ会釈。子供達は真顔。

◯同・キッズルーム(夕方)

お菓子食べたりお茶飲んだりする子供A・B・C・Dとプリントを見るヤマオカ。

ヤマオカ「授業参観ねぇ……」

子供A・B・D、期待に満ちた目でヤマオカを見る。

ヤマオカ「やっぱり皆来て欲しい?」

子供D「えー!? ヤダー絶対来て欲しくないー!(笑)」

子供A「いーよ来なくてー(笑)」

ヤマオカ「そっかーヤかー(笑)」

子供C「あの、無理して来ることないですからね、ほんとに」

ヤマオカ「……」

◯同・廊下

別の日、お菓子の入った袋を持ったヤマオカと紙コップの入った袋とヤカンを持った新田が歩いている。

新田「で、どうするんですか」

ヤマオカ「行くことにした」

新田「へー」

ヤマオカ「でもねぇ……私擬態が苦手だから何時間も人間の姿維持してらんないかも」

新田「四クラスありますもんね……今まではどうしてたんですか、学校行くとき」

ヤマオカ「入学手続きと保護者会は頑張って行ったけど相当しんどかった。今度の学芸会とか来年の運動会とかどうしたらいいのか……あ、新田君来る?」

新田「え僕ですか」

ヤマオカ「うん、私一人でずっと回ってるのはキツいし、新田君来たらあの子達も喜ぶと思うし」

新田「そーすかねぇ?」

ヤマオカ「そーだょ!」

新田「それ以前に俺行っていいんですか、皆に嘘ついてんのに保護者ヅラして……今までだってそれがあるからあんまり関わっちゃいけないんじゃないかって思ってるのに」

ヤマオカ「いい。私が許す」

◯同・廊下(朝)

数週間後。廊下を歩くヤマオカ。ジョウガサキ、向こうから歩いて来る。二人接近。両者、立ち止まって会釈。

ヤマオカ「今日の事、ありがとうございます」

ジョウガサキ「いえ、でもちゃんと見てて下さいね」

◯同・個室(朝)

新田、寝ている。ドアをノックする音。

新田「はーい……」

新田、ノロノロと起きてボサボサの頭のままドアを開ける。廊下に人間に擬態した上にバッチリよそ行きの格好をしたたヤマオカ人間態(以下、特記あるまでずっと人間態)が立っている。

ヤマオカ人間態「私です」

新田「あ……おはようございます、てか早いっすね、てか人間の姿はそんな感じなんですね、何か、不思議な感じが、します」

ヤマオカ「行きましょう、支度して」

◯学校・2―1前廊下→2―1

スリッパを履いて、土足を入れたビニール袋と学校の小さい地図のプリントを持った新田とヤマオカ。

ヤマオカ「じゃ、私は上から回ってくから新田君はそこ終わったら次3―1ね」

新田「はい。では」

ヤマオカ、階段で上の階に上がる。新田、ドアを開けて二―一に入る。授業を受けていた児童が一斉に振り替って新田を見る。一番乗りで来たので他に親御さんはいない。子供Aの担任と新田、会釈。

子供Aの同級生1「ねぇ、あれ誰? 誰のお父さん?」

子供Aの同級生2「お父さんにしちゃ若過ぎだろ、老け気味のお兄ちゃんだろ」

子供Aの同級生1「いやーどうかな……あ、イトコ?」

子供Aの同級生2「イトコが授業参観来るか? 普通」

子供Aの担任「ほらー静かにー」

新田と子供A、目が合って互いに苦笑。

◯同・6―2

子供Cの授業を参観するヤマオカ。他に親御さんはいない。振り向いてヤマオカをチラ見しては前を向く児童。

子供Cの同級生1「ねあっちゃんあっちゃん」

子供C「ん?」

子供Cの同級生1「あれ誰んち?」

子供C「あぁ、あれウチ」

子供Cの同級生1「あっちゃんの? あっちゃんのお母さん?」

子供C「うんそう」

子供Cの同級生1「へぇーそういえば初めて見たかも」

ヤマオカと子供C、目が合って笑う。

◯同・3―1

子供Bの授業を参観する新田。これ以降は他の親御さんも来はじめる。

子供Bの同級生1「ねえあれ誰のお父さんだろー」

子供Bの同級生2「いやあれ老け気味のお兄ちゃんじゃないの?」

新田と子供B、目が合って苦笑。

◯同・3―2

子供Dの授業を参観するヤマオカ。

子供Dの同級生1「ねぇあれ誰のお母さん?」

子供Dの同級生2「知らなーい」

ヤマオカと子供D、目が合って笑う。

◯3―1・3―2前廊下

授業終了のチャイムが鳴り、それぞれ3―1と3―2から出てくる新田とヤマオカ。

ヤマオカ「お、どうよ」

新田「僕が行くと混乱が生じますねやっぱ」

ヤマオカ「そっか、まあこの後も上手くやってね。あと私ちょっと、一回解くわ」

ヤマオカ、女子便に入り、中で元の姿に戻る音が聞こえる。

ヤマオカ(声)「ふぅー……あぁー……」

新田、気を使って3―2に入る。

◯同・3―2

授業を参観する新田。嬉しそうな子供D。

子供Dの同級生1「ねぇあれ誰の……」

◯同・3―1

授業を参観するヤマオカ。嬉しそうな子供B。

子供Bの同級生1「ねぇあれ誰の……」

◯同・6―2

教室に足を踏み入れる新田。振り向いた子供Cと目が合う。子供C笑う。

◯同・2―1

教室に足を踏み入れるヤマオカ。振り向いた子供Aと目が合う。子供A笑う。

◯同・6―2
新田のスマホが鳴る。画面に「文セン本部」の文字。

◯同・2―1

ヤマオカのスマホが鳴る。画面に「司令室」の文字。

◯同・6―2前廊下→昇降口

新田、廊下に出て電話に出る。

新田「はいもしもし」

クボ(声)「一分前、港区台場に怪獣出現。マッハ二十で飛行しながら鎌のようなものを飛ばして通った場所をズタズタにしていきます」

新田、聞きながら階段で下の階に行く。同じくクボの電話を聞いているヤマオカと合流、昇降口に向かう。

新田「僕らそっち行った方がい……」

クボ(声)「二人はまだ学校ですか」

新田「? はい」

クボ(声)「怪獣の予想進路上にそこも含まれてます。でその先は人口密集地です。心苦しいですがその場に待機して迎撃して下さい」

ヤマオカ「……了解」

新田「何もわざわざここで……」

ヤマオカ、スマホの電源を切り新田の肩を叩いて首を横に振る。

ヤマオカ「我々が犠牲を出さずに勝つのが最善のやり方なんだ。向こうが我々を信頼してるからこそこの作戦なの、分かる?」

新田、震えてゆっくり頷く。

ヤマオカ「よし、じゃあ私は皆を守るから、新田君向こうはお願い」

新田「分かりました」

校内に警報音が流れる。

◯同・2―1

放送を聞いてヤマオカが出ていった意味を知る子供A。

教師(校内放送・声)「現在、この地区に怪獣が接近しています」

◯同・六―二

教師(校内放送・声)「生徒・保護者の皆様は、教員の指示に従って、落ち着いて避難して下さい」

阿鼻叫喚の教室。子供Cだけ冷静。

◯学校外

怪獣の予想進路から出来る限り離れるため避難する教師・生徒・保護者。少し離れた所に立ち空の一点を見つめる新田。スマホを取りだし話す。

新田「肉眼で目標を確認しました。攻撃に入ります」

新田、変身し飛ぶ。向こうから鎌を飛ばして地上をズタズタにしながら飛行するパワードドラコが見える。
リーズ光弾発射。当たるが効かない。両者接触。
リーズ、パワードドラコの羽を掴んでむしり取ろうとするが鎌の一振りをモロに受け墜落。パワードドラコ、追撃もせずに飛び続ける。墜落するリーズ、地面スレスレで折り返して追う。
パワードドラコ、地上に鎌を複数飛ばす。リーズ、L字光線を撃ち鎌の大半を消滅させるが一つだけ逃して横を通り過ぎる。

リーズ「ヤマオカさん!」

避難する児童達に迫る鎌。子供D、目をつぶる。物凄い金属音。子供D、恐る恐る目を開けると元の姿に戻り巨大化し腕の刀で鎌を弾いたヤマオカの背中が見える。振り向いたヤマオカと目が合う子供A・B・C・D。

子供D「チーちゃん……」

リーズ、再度L字光線発射、パワードドラコの胴体に当たってかすり傷ができる。かすり傷に光弾連射を浴びせる。傷が開いていく。
パワードドラコ、リーズの下を通って進もうとする。地上で待ち構えるヤマオカ、パワードドラコと接触。刀と鎌のつばぜり合いの後に袈裟懸けに斬って倒す。リーズとヤマオカ消滅。
数十分後、警報が解除され一緒になって帰宅する親子ら。ウロウロする子供A・B・C・Dの所に歩いていくヤマオカ人間態。少し後ろに新田。
ヤマオカと同時にいなくなり同時に帰って来た事で新田の正体に何となく気付く子供達、それを表に出さず二人を迎える。

ヤマオカ「帰ろっか」

子供達「うん」

(続く)

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