【確定申告】退職金は申告するべきか?
確定申告のDX
今年も確定申告の季節が終わった。後は、還付金の振り込みを待つばかりである。
ここ数年の確定申告は、マイナ連携してスマホでe-Tax(電子申告)を利用してチャチャッと済ませていた。
5年ほど前に確定申告した時には、医療費のレシート金額を1枚1枚Excelに打ち込んで明細書を作成したりして大変だった記憶があるが、確定申告のDXも毎年進化していてずいぶんと便利になったと思う。
ところが、今年に限っては勝手が違っていて、最終的には手書きの紙ベース申告となってしまった。もう20年前にタイムスリップしたような気分だ。
覚書として記しておきたい。
退職した翌年の確定申告
今年の確定申告が例年と違ったのは、給与所得の他に退職所得があったのと、年末までに再就職しなかったので年末調整がなかった点だ。ちなみに、給与所得も退職所得も共に源泉徴収済みである。
まず、年末調整がなかったので、この時点で確定申告することは確定していた(何だか禅問答みたいな言い方だが笑)。
給与所得も退職所得も源泉徴収されているから、確定申告は義務ではないが、還付金を受け取るためには申告した方が有利なのだ。還付金が戻ってくるということは、端的に言って、税金を払い過ぎているということだ。
日本の税制では、申告しないと返ってくるものも返ってこないシステムになっているらしい。仕組みがとてもややこしいので、還付金が返ってくるかどうか不明の人は、一度税務署に相談してみることをお勧めする。
ここで、所得税の基本的な考え方を述べておくと、収入があった場合、収入そのものに税金がかかるのではなく、必要経費(所得控除)を引いた残りの金額(課税所得)に税金が課せれる仕組みだ。
そして、退職した年は、健康保険や年金などの社会保険料でやたら出費が嵩むが、それらは確定申告において所得控除の対象となる。
自分の場合は、以下の所得控除を申告した。
医療費控除
生命保険料控除
地震保険料控除
社会保険料控除(源泉徴収分、国民年金、健康保険)
これに、以下の基本的な控除が加わる。
基礎控除
配偶者控除(配偶者の所得による)
扶養控除(扶養家族が居れば対象)
所得控除は、加入している保険や各人の属性などにより異なるため、不明な点は税務署に確認するのが吉だ。
計算してみると、自分の場合、所得控除の合計額が給与所得を超えてしまっていた。そのため、課税所得(給与)がゼロになり給与所得の源泉徴収税額が全額還付されることになる。
税金は、払った分以上は還付されないので、普通はここ迄でお終いである。
しかし、暇にかまけていろいろ調べていたら、実は余った所得控除は、退職所得にも適用できるらしいことがわかった。
つまり、給与所得の源泉徴収税額に加えて、退職所得の源泉徴収税額(の一部)も取り返せる可能性があるのだ。
そこで、今年の確定申告では、給与所得に加えて、退職所得の申告も同時におこない、還付金を満額いただく方針とした。
DXの前にやることがあるはず
しかし、マイナ連携してスマホでe-Tax(電子申告)を利用してチャチャッと確定申告を済ませようとしたところ、惜しいところまではいくのだが、そこから先へはどうしても進めなくなってしまった。
結論から言うと、自分のケースの場合は、まだe-Tax(電子申告)が対応できていなかったのだ。
詳細は述べないが、自分の場合、職歴に関してやや特殊な事情があり、金額までは入力できるのだが、該当するチェック項目が用意されていないため、それより先に進めなくなってしまったようだ。
問い合わせの電話口に出た税務署職員に、「この場合は、どうすれば?」とおそるおそる尋ねたところ、「紙ベースで申告していただくしかないですね」とあっさり言われてしまった。これは、その後の展開が容易に予測できただけに、かなりショッキングな出来事だった。
結局、申告書の第一表、第二表、第三表のフォーマットを印刷して、手書きで升目を埋めていくのだが、どの欄に何を計算し記入するのかが、とてつもなくわかりにくかった。
心折れずに最後までやり遂げて提出を終えた時、初めて自分で自分を褒めてやりたい気分だった笑。
今年の確定申告はDXどころか、アナログ時代に先祖返りしてしまったわけだが、紙ベースの申告を経験してみて、逆に、スマホでe-Tax(電子申告)のありがたみを再認識できた。
「デジタル庁もっと頑張ろうよ!」と最初は思ったが、原因はむしろ、デジタル庁がダメというより、国税システムその物に課題あるようだ。
何しろ、仕組みが複雑すぎる。それに対応するため、システムが複雑になる。対応する税務署職員も多数必要になる。申告する企業や個人の手間も煩雑になる。喜んでいるのは仕事が増える税理士くらいではないか?
そういえば、年末調整の時期になると、会社の担当部署の職員がみんな死にそうな顔で仕事をしていたのを今でも思い出す。
これを改善するには、DXに期待する前に、税の仕組み自体を簡素化しなければダメだと思う。控除を全て廃止するなど、思い切った改革をしないと、DXにも限界がある。
弱者への一定の配慮は必要であるが、いったん簡素なやり方で全員から一律に税を徴収した後に、税の再配分政策でそれらを実現する手もあると思う。
そもそも税の申告作業自体は、何も付加価値を生まない無駄な作業である。こんな非効率な仕組みを継続していたら、国が滅んでしまわないか心配になる。
納税については、DXも大事だが、その前に思い切った仕組みの簡素化が必要ではないか?
最後に
知らないとは恐ろしいもので、危うく還付金を満額受け取り損ねるところであった。
「あぶないあぶない・・・」
表題の『退職金は申告するべきか?』の答えは、自分の場合は『Yes!』であった。しかし、これは各人の属性によって答えが異なる問いだ。
自分と似た属性の人は、一度税務署に相談した方がいいかもしれない。
今回の確定申告で再認識したことであるが、日本社会にはこのように非効率な仕組みがたくさん残っている。過去には正しかった仕組みも、時代に合わなくなってきたら変える必要がある。
そこには、既得権益を握った強力な抵抗勢力が存在するだろうが、人口減少で衰退に向かいつつある日本を立て直すには、ゼロベースでの国づくりが欠かせないと思うのだ。
それを実現してくれそうな政治家は、いないのだろうか?
※この記事は、個人の見解を述べたものであり、法律的なアドバイスではありません。関連する制度等は変わる可能性があります。法的な解釈や制度の詳細に関しては、必ずご自身で所管官庁、役所、関係機関もしくは弁護士、税理士などをはじめとする専門職にご確認ください。
また本記事は、特定の商品、サービス、手法を推奨しているわけではありません。特定の個人、団体を誹謗中傷する意図もありません。
本記事を参考にして損害が生じても、一切の責任は負いかねます。すべて自己責任でお願い致します。
お知らせ
資産運用に興味のある方は、拙著『資産運用の新常識』をご覧ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?