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【資産運用】全世界株式への分散投資が必要な理由


分散投資の目的

2024年にNISAが拡充されたが、そのNISA投資では、インデックスファンドを用いた全世界株式への分散投資が広く推奨されている。

事実、つみたてNISAの実績でも、スタートの2024年1月は、全世界株式への分散投資をうたうeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)が、1位を獲得している。

分散投資はなぜ必要なのか?ここでは、分散投資をする意味合いについて考えてみたい。

別記事で、投資効率を測る指標として、一般的にシャープレシオが用いられることを説明した。

先に結論を書いてしまうと、分散投資の目的とは、このシャープレシオ、すなわち投資効率を改善することにある。値動きの異なる複数の資産に分散投資することで、シャープレシオを改善することが可能なのだ。

以下、その詳細について説明する。


相関係数とは

分散投資とは、値動きの異なる複数の資産に振り分けて投資することを意味するが、ここでは簡単のため、資産Aと資産Bの2つの資産に分散投資する例で考えてみよう。

ここで、資産Aと資産Bは互いに値動きが異なっていることが重要であるが、その値動きの連動具合を示すのが相関係数と呼ばれる指標である。

相関係数:ρ(ギリシャ文字でローと発音する)は、-1~+1の間の数値で表される指標であり、その数値は以下のような意味を持っている。

  • ρ=+1:正の相関(資産Aと資産Bの値動きが完全に一致)

  • ρ>0:正の相関(資産Aと資産Bの値動きが同じ方向)

  • ρ=0:相関なし(資産Aと資産Bの値動きが無関係)

  • ρ<0:負の相関(資産Aと資産Bの値動きが反対方向)

  • ρ=-1:負の相関(資産Aと資産Bの値動きが完全に真逆)

分散投資の効果は、ρ=+1では全く無く、これは単一の資産に投資しているときと同等である。分散投資の効果は、ρ=-1のとき最大となるが、このような理想的な組み合わせは現実には存在しない。大抵の資産同士は、-1~+1の間の中間的な相関関係を示す。

分散投資の効果

次に、具体例を使って、分散投資によるシャープレシオの改善効果を計算してみよう。

リターンとリスクは、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の設定値を採用して、資産Aは外国債券のμ=2.6%、σ=11.9%の値、資産Bは、外国株式のμ=7.2%、σ=24.9%の値を採用する。

下記グラフでは、相関係数:ρを、ρ=+1、+0.5、0、-0.5の4段階の場合を想定し、資産Aと資産Bへの配分は5%刻みで変化させて計算している。

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グラフより、ρ=+1の場合は、資産の配分割合を変えても直線上で変化するのみで分散効果は得られていない。

それに対して、ρ=+0.5、0、-0.5の場合は、資産の配分割合を変えたときに、曲線上で変化し、シャープレシオの改善が見られる。

ここで重要なポイントが2点ある。

1点目は、資産Aと資産Bの値動きに少しでも違いがあれば(ρ<+1)、分散効果が得られる点である。

2点目は、値動きの異なる資産Aと資産Bの配分割合を最適化することで、シャープレシオを大幅に改善できる点である(赤い矢印)。

上記では、簡単のために、2つの資産への分散投資で説明したが、3つ以上の資産への分散投資でも同様の効果が期待できる。これを極限まで追い求めたのが、全世界数式を対象とするインデックスファンドなのだ。

結論

なぜ、インデックスファンドを用いた全世界株式への分散投資が推奨されているのか?

その問いに対する答えは、値動きの異なる資産に分散投資することでシャープレシオを改善できるからだ。

シャープレシオを改善できれば、同じリターンを狙うときに、より低いリスクで済むことになり、有利なのだ。

※この記事は、個人の見解を述べたものであり、法律的なアドバイスではありません。関連する制度等は変わる可能性があります。法的な解釈や制度の詳細に関しては、必ずご自身で所管官庁、役所、関係機関もしくは弁護士、税理士などをはじめとする専門職にご確認ください。
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