推しの恋愛のこと
推しに付き合っている人がいるという噂が出ている。
これはインターネットに踊らされている人間の戯言なのでもし見ている人がいるなら真剣にみなくていい、むしろ真剣に見るものではないので信じないでくださいね。
推しに付き合っている人がいるという噂が出ている。噂っていうか、もはや便所の落書きというかそのレベルの話だけども。なんの証拠もない。写真も上がっていないしどこか週刊誌のような裏を取る部類の、少しでも信用できそうなメディアが言っているわけでもない。お揃いのアイテムを身につけていると書かれていたが、探した結果そんなものはなかった。プライベートでやってるんなら別だけど。
なんの根拠もなく誰でも言える嘘で、信じるに値しないような情報だと思う。人並みの判断力と感情のコントロール力を持っている人間はそう思うだろう。でもわたしは違う。その噂が出てくる時点で、証拠はなくても少なからず本当であるのだろうなと思う。思ってしまう。これは別に推しのことを信用していないというわけではなく、自分の性格がそうなのだ。火のないところに煙は立たないって言うから。
わたしは推しにガチ恋しているオタクである。数年間ガチ恋している。その間、病み散らかしてマッチングアプリを大量にインストールしたりもしたが、恋愛的に好きと言う感情が推し以外に傾くことは一度も無かった。ただの一度も。
今回のお相手だとされている方は、推しより5歳ほど年上で、推しの推定好みのタイプとは全く違う人だ。今まで何度か匂わせだのの噂が出たことはもちろんあったが、その歴代の相手と本当に180度全く違うタイプの人。わたしは、詳細は割愛するがその人が人間として、とても魅力的でいい人であると知っている。かなり昔から。この人を嫌いになることは、わたしにはできない。そういう人だ。
悪い夢じゃないだろうかと思った。よりにもよって。共演回数が多いわけでも、特別仲が良いという話があったわけでも無かった。共演中にたくさん写真が上がったわけでも無かった。ただ、少し納得してしまう部分もあった。この人なら推しを大切にするだろう。あらゆる面で推しを支え、時には引っ張り、推しにとってかけがえのない人になるだろう。推しもこの人を大切にするだろう。タイプと全く違うのに好きと言うことは、長いことの積み重ねで形成された「自分の好みのタイプ」という価値観を凌駕するほど、好きだと思う理由があるということだ。仲良くやっていけるだろうな。長く。
つらい。これで匂わせクソ女と付き合ってるとかだったら推しのことも女の子ともクソがよ〜って言えたのに。この人相手じゃ絶対言えない。燃やすこともできない。どちらのことも大好きだから、どちらのことも嫌いになれない。気持ちの持って行き場がどこにもない。長く付き合うんだろうな。結婚とか、するかもな。
何より辛いのは、もうわたしは推しを嫌いになんてなれないと気づいてしまったことだった。ここを含め色々なところで悩み、嘆き、もう降りる降りたいと喚き散らしておきながら、推しの直近の舞台でわたしはこの人を応援してきてよかったなと心から思ってしまったところだったのだ。この人の芝居を信じてきてよかったな。嫌いなところも本当にたくさんあるけど、それでもこの人が見せてくれるものを信じたいなとうっかり心の底から思ってしまった。考えると、推しはいつもわたしを芝居で引き戻してくれた。もう手遅れで、この人のことを嫌いになれない。女がいたって降りられない。炎上したって庇うだろう。愚痴は言うだろうけど。推しの芝居が、声が、言動が、推測しかできないはずの人間性が好きだ。好きで好きで好きで好きで好きで、大好き。
降りるタイミングなんていくらでもあった。嫌いなところなんていくらでもある。それこそ話題になったドナドナ舞台でだって、レス客降りを繰り返す企画をするところだって、いつまでも考えや詰めが甘いところだって。でも推しと言う人間を最後に嫌いにはなれなかった。いっそ嫌いになれたらよかったな。恨めればよかった。どっちのことも。
この世に及んで、わたしが少しでも推しに声をかけられる場面で必ず言う「いつもありがとう」に返してくれる、仕事用じゃないとても嬉しそうな笑顔と言葉を思い出している。ガチ恋オタクのくせに本当に頭おかしいんじゃないかと自分でも思うけど、いつか結婚してもすぐには降りたくないな。推しに「自分には結婚していないから価値があった」と思って欲しくないから。あなたの芝居が、あなたのことが好きで応援しているオタクもいるよと知ってもらいたいから。まあ実際降りれらなさそうだけど。これでさえわたしの自己満足なんだけど。この後に及んで傲慢だな。
わたしと幸せになってくれないなら、一生幸せになってくれなくて良かったのに。自分だけずるいよ。
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