記事一覧
【ショートショート】ロボット社会
「ご夕食の準備ができました」
「あぁ・・・・・・」
男は無愛想な返事をしながら、無表情のまま自室からダイニングへと移動した。
テーブルの上には具だくさんの味噌汁に焼き魚、キュウリとわかめの酢の物、炊き込みご飯が整然と並べられている。
表情一つ変えずに席に着いた男は、静かに手だけを合わせた後、そそくさと食事を始めた。
「本日は和食を準備致しました。ここのところ、脂っこいお食事が続いておりま
【ショートショート】ユウウツさん
いつの頃からだろう。気づくと一日が終わっている。毎日仕事に追われ、疲れきって帰宅をすると、あとは眠るだけ。だから家も荒れ放題だ。
一人暮らしのボクにとって、大きな問題はない。だけど、時々ため息が出るのも事実である。
仕事も中堅的な立場になってきて、数年前に比べたら、仕事の量も質も格段に上がってきた。良い言い方をすれば、やりがいがある。しかし本音を言えば、疲れるなぁ・・・・・・もある。仕事が嫌い
【ショートショート】最後の晩餐(さいごのばんさん)
「えー・・・・・・、地球は一年後の本日、大爆発を起こし滅亡する見込みです・・・・・・」
総理大臣からの衝撃的な発言に、世間は一気に大混乱となった。
ニュースは連日この話題で持ちきりになり、いろんな専門家がそれぞれの立場から意見を言うものの、人々を救うような革新的なものは何一つ出てこなかった。
ついに地球もここまできてしまった。人間は人間のために生き過ぎた。
環境汚染は手がつけられないほど深
【ショートショート】トイレの神様
「くさい・・・・・・」
一月一日の朝、一人暮らしのアパートのトイレの扉を開けた俺は、思わず言った。まさか新年最初がこんな言葉からスタートするとは考えてもいなかった。少なくとも数時間前までは、くさくなかったはずだ・・・・・・
まぁ、もちろんトイレなのだから、ある程度はくさかったのだが、こんな臭いではなかったのは間違いない。俺は鼻につく下水のような臭いに耐えかねて、トイレには入らず、一旦扉を閉めた。