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七十二候 厥魚群(さけのうおむらがる)



#今日はなんの日 🍊
#暦の話

七十二候 厥魚群
(さけのうおむらがる)
12/16~5日間
厥魚(けつぎょ)と読みます

本来、鮭ではなく中国に存在する
淡水魚の事ですが
和暦輸入の際、転じて鮭を
指すようになったそうな

遡上自体は9月~12月と幅広い時期に
起こりますが、江戸時代は今より海水温が
低かったため、遡上時期も遅くなっていた
と考えられています

前候が熊蟄穴だった事を踏まえると
丁度熊が穴籠りした頃に遡上し
母川回帰する鮭の本能は本当に
良くできていますね

長い間、回遊ルートは不明だったのですが
近年明らかになった事として
河川から海へ出た鮭は北のオホーツク海に
出た後、太平洋へ抜け冬を越しつつ北上し
ベーリング海~アラスカ近辺で
しばらく過ごすそうです

そうやって
ベーリング海とアラスカを行ったり来たりし
日本に戻ってくるのは大体四年後
その頃に生存している鮭は5%未満だそうな

世界史では世界を変えたタラに次ぎ
人類史の食料事情を支えてきたこの魚と
日本人の付き合いはかなり長く

塩蔵や干物などにすることで保存ができる為
貴重なタンパク源・塩分源として重宝され
古くは縄文時代から食卓に登っていましたが

意外にも幕末になるまでは、朝廷や幕府など
権力者に献上される高級魚です

どうやらこの頃
各藩が河川に対し運上金を取っていて
漁業権は入札による許可制だったらしく
鮭利権とも呼ばれる程の
経済効果があったみたい

こうして
タラが歴史の中で人々に繁栄を与え
ボストンでタラ貴族を産んだように
鮭もまた明治時代、北海道開拓に代表される
鮭漁業の発展と日本の近代化に貢献します

北太平洋や北大西洋に広く分布し
世界最大の産地アラスカをはじめ
ロシア、北米そして日本のアイヌ地方でも
漁獲されてきた鮭がもたらした豊かさは
あちこちで神聖な魚として崇められてきた
様子からも窺えます

例えば鮭はアイヌ語で
「神の魚(カムイ・チェプ)」
(=カムイ(神)の使い)と呼ばれますし

山岳信仰の強い所は顕著で
川魚は大抵神様の供物として扱われ
神社仏閣の彫刻にも見られます

山岳信仰で有名な観光名所といえば
栃木の日光東照宮
山形の出羽三山
そして静岡の富士山!

是非、歴史的建造物を見たら
柱なんかに魚の彫刻がされてないか
探してみてください



※豆知識①
鮭の種類は実はかなり様々で
・マスノスケ(チヌークサーモン)
・シロザケ(シルバーサーモン)
・ベニザケ(ソックアイサーモン)
・ヒメマス(コクチニーサーモン)
・ビワマス(チャーリー)
軽くあげるだけでもこれくらいあり
それぞれ外見や大きさ
生息域や遡上時期、産卵場所なども異なるそうな

また遡上の途中で体内構造や外見が大きく変化し
雄の鮭は顎が伸びてフック状に
雌の鮭は体内に卵を持っているため、体が膨らみ
また海で銀色だった鮭は、川で赤や黒などに色づきます
つまり形や色で、海で採れたのか川で採れたのか分かっちゃうということですね

※豆知識②
鮭は一般的に母川回帰の遡上時に捕まえると思われがちですが川を下る時に捕まえる方法もあります

▼「シャクシャイン漁法」(アイヌ伝統)
鮭が産卵を終えて川を下る時に、網や竹で作った仕掛けで捕まえる。産卵を終えた鮭は脂肪が減っているが、逆に保存しやすいというメリットがある。また産卵後の鮭は死んでしまうので、生きた鮭を捕まえるよりも自然への負担が少ない

※豆知識③
一般的に鮭は海で成長し、産まれた川に戻って産卵すると考えられていますが、実際には産まれた川だけでなく、その川の支流や近隣の川にも産卵することがあります。実は鮭は川を選んでいるのだそうです。水温、水質だけでなく水中に含まれる化学物質や微生物の種類や量などまでも感知し、最も最適と判断した場所を産卵場所としているのだとか。ちなみに川に戻って産卵した後もすべての鮭が死ぬわけではなく、一部の鮭は再び海に戻り、再度川に上って産卵するそうです(多回遡上型というらしい)
地磁気や太陽の位置などから方角を感知したり、海と川で体内時計を切り替えたりなど、まだまだ鮭の遡上については新発見がありそうです

※豆知識④
実は去年の今頃も「厥魚群」の記事書いてまして、そのときは「鮭の大助」という東北に伝わる民間伝承の記事でした。川魚の王とされる大助(おおすけ)が妻の小助(こすけ)と共に「鮭の大助・小助、今のぼる」と大声を張り上げながら海から川へと遡るとき、この大声を聞いた者は3日後に死んでしまうんだそうな。そのためこの時期、川仕事をしている人は仕事を一切休んで川に出ないようにし、村人もこの声を聞かないよう、鐘を鳴らして餅をつき(耳塞ぎ餅というらしいです)歌って酒を飲み騒いで過ごすらしい。恐らくこの時期、雪がないとしても、冷えた川で起こりうる水難事故を防ぐ意図があって口伝化したんでしょうね

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