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初めて湿布を使った話

3年前から悩まされている私の腰。時折、右側だけ痛む。

多分、一時期座りっぱなしだったり重い物を運んだりしていた影響で飼ってしまった腰痛ちゃんのようで、不定期に現れては構ってくれと言わんばかりにガンガン右腰をバットでどやしてくるのです。

先日、腰痛ちゃんがバットに釘を100本さしてやってきた。
朝晩は冷え込むこの季節なのに汗を主に脇と額から滴るほどかいていたから、私、何だか代謝が良くなったなあ〜!と喜んでいたけれど、ただの冷や汗だったことに気がつく。

腰が痛すぎる。あまりの痛さに腰痛が痛いと表現したいほど。痛いのさらに上の痛い。
自分の指圧で一週間くらい我慢すれば消えていたようなこれまでの腰痛とはわけが違うのです。

この体の悲鳴を聞きつけて颯爽と登場するのがご家庭のスーパーヒーロー・湿布。
でも私は湿布がべらぼうに苦手なのです。

1番はにおい。別にクサイと言っているわけではないですよ。
ガソリンスタンドの匂いやパクチーの匂いに好き嫌い分かれると同じように、私は湿布の匂いが個人的に臭いと感じるんです。やっぱりクサイと言っていました。

そもそも臭いものが良いという説はニンニクやニラとかの食べ物だけだと思っているので湿布にその説をあてがえません。

でも私は現状金属バットで殴られていますので、生き残る為に悪魔と契約してでも何でも手段は選んでいられない状況です。
私は己の心の弱さが嫌い。私は早く私自身に勝ちたいんだ。たかが自分の腰痛に負けてられない。頼んだぞ。湿布、君に決めた。


追い冷や汗をかきながら、両手でおっかなびっくり140枚入りの湿布の箱を開封。直後に立ち登る湿布の匂い。臭すぎるだろ。ここまで臭いとくさやの立つ背がないよ。

匂いで気が滅入る中、恐る恐る金属バットで暴れ散らかす右側の腰痛ちゃんに貼ってみると、ミンティアを水で溶かしたものを塗ったようなちょっとしたスースー感がして気持ちがいいものでした。

しかし湿布の匂いも腰痛も落ちる素振りを見せないし、どこに行こうが何しようが常に湿布フレーバーをかがなければならないこの状況に、段々と別の絶望を感じていく。

寝室に移動しても湿布臭。トイレ行っても湿布臭。愛する旦那さんに抱きついても湿布臭。
もうこの匂いから逃げられないのか。私はこれから湿布の香りと生死を共にするのか。
なんだか腰がもっと痛くなった気がする。腰痛黄金期に突入。私の人生の黄金期はいつなんだ。これからあると信じたい。明日は明日の風が吹く。吹いたら湿布の匂いが舞う。いや、だったら吹かない方がマシかしら。ああもう疲れた、もういい。とにかく今日は眠ろう・・・・。

✳︎

私は、湿布には本当に感謝しているんです。
自暴自棄で全部を湿布のせいにしていたあの日ですが、夜が明けると腰の痛みは綺麗さっぱりなくなっていたのです。

朝起きるともちろん湿布の香りはしましたが、住めば都、嗅げば香水、とでも言いましょうか。一晩で完全に匂いになれて、湿布を臭いと感じないようになっていました。

配られたカードだけで勝負をしては豊かな人生は歩めませんね。
未経験のものにも果敢に挑戦しなければ、自分の凝り固まった価値観は変わらないものです。


ベッドに入ると、そこにいるアザラシのぬいぐるみから湿布の残り香が残り物とは思えないほどの強さで放たれています。
「ありがとう、刺激的ないい香りだね」そう言ってぬいぐるみを抱きしめて、私は今夜も眠るのです。

湿布ってすごいねって話でした。

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