撮影で根暗のままじゃダメだ!と思ったと書こうとしたら後半愚痴みたいになってしまい反省している

タイトルがラノベっぽくなったことにも反省している。


先日、私にとって年に一度のビックイベントを終えた。芸能事務所に所属していると必ず行う宣材写真の撮影である。
写真の更新頻度は事務所によるが、私が所属する事務所は毎年のこと。
そしてこの宣材写真撮影の日というのは、なんといっても私の恥ずかしい日オブザイヤー4年連続金賞受賞の快挙を遂げているのだ。

というのも、私という人間は生を受けて28年、ファッションセンスは身に付かず化粧っ気も名古屋港に捨て、作った笑顔は根暗が前へ出ていて陰鬱としている。美意識がすっからかんである。
そんな天下無双の干物女がプロのヘアメイクさんとカメラマンさんに撮影をお願いするというのだ。これがなんとも地獄の羞恥心を味わうこととなり、キツい。

まず衣装だが、先述したとおり私にはファッションセンスが無い。
撮影向きではないからと私の一張羅が却下されることを見越して2着ほど控えの勝負服も持っていくのだが、並んだ服を前に全員に渋い顔をされた挙句、マネージャーが持ってきていた私服を借りることになる。
過去4回自分の服をプレゼンして今までの一度もマネージャーの服を借りなかったことはない。

既に顔が真っ赤の私は次にメイクさんを困らせる。
メイクの仕上がり、ヘアスタイルなどの要望を聞かれるのだが、当然何もこだわりがない私は「えっとー自分の魅力が最大限に引き出せる感じで、えへへ」などとほざく。
呆れたマネージャーは私の代わりに私のヘアメイクの指示を出してくれる。プロデュース:マネージャー。私がタレントとして生計を立てれらているというのは私の才能は影響しておらず、事務所の力と努力のおかげである。おんぶにだっこ、それから肩ぐるま。
結局、ヘアメイクはビューラーだけは自分でやるのだが、普段それさえしない私はメイクさんにやって欲しいとお願いし「えーすごーい」と乾いた笑顔をされ終わる。
そうして恥と申し訳なさをびしゃがけして私の顔は完成した。

根暗な私の最大の難所はここからだ。
スタジオにセッティングされた大きな傘を携えたライト、パーテーションのようなレフ板、周りの視線。それらに囲まれてカメラのレンズを見る。
めっちゃ緊張する。
ポーズはファーストキスぐらいぎこちなく、段々と笑顔の作り方も忘れて目には睨みがきいてくる。撮られながら出来が良くないと実感する。するとより顔が歪む。
人に時間と労力を割いてもらいながらこんな結果になってしまう自分が情けない。笑顔を作りながら無力な自分に泣けてくる。キツい。いつも以上に綺麗になった私はいつにも増して心を荒らす。それでも笑うのだ。

一番キツいのは周りのリアクションである。写真を撮るたびに「かわいいー!」の合いの手が入るのだが、これが豪雨の如く降り注がれる。
めちゃくちゃかわいい!テンション上がってくるわー!女の私も惚れそう!やっぱ美人だよねえー!
無言が耐えられない飲み会かというほど全員から一斉に褒められる。カメラマンに至ってはそのまま脱ぎ出しそうなテンションだ。
おだてられた私も有頂天になりたいところだが、もちろん被写体のボルテージを上げるためにパフォーマンスとして褒めてくれているのは承知のこと。だからこそキツい。
気を遣われているという申し訳さなもそうだが、お世辞ほど虚しい応援はない。可愛いの声が増えるたび虚無感が迫り、自分のどこが良いのかわからなくなってくる。
かわいいー!めっちゃ良い!今の最高!たまらない!やばー!かわいー!
あたしゃ七五三の3歳児か。

そうして撮影は終わる。
終わってからもしばらく可愛いのクールダウンがあるため帰るまで恥ずかしい。
そそくさとスタジオをあとにし、自分の根暗っぷりにも落ち込みながら思う。
本当に良いと思った時だけ褒めてくれたらいいのに。
「可愛い」も数撃ちゃ当たる。
でも私の場合は当たって痛い。

数日後、事務所でたまたま一緒にいたタレントさんの宣材写真をいくつか見せてもらう機会があった。
写真の本人と一緒に見た私は、大学の新歓のようなテンションで大袈裟にかわいいを連呼していた。
自分に出来ないことを他人に要求してはならない。

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