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【読書感想文】昨日までの世界〜文明の源流と人類の未来(上下巻)

書名:昨日までの世界(上・下)
著者:ジャレド・ダイアモンド(倉骨彰=訳)
出版社:日本経済新聞出版社
初版:2013.2.25発行

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ジャレド・ダイアモンドといえば数々の著作をだしている学者として有名でしょう。
作者の名前は覚えてなくても著作は知っている、というパターンに当てはまる人かもしれない。

主な著作は
『人間はどこまでチンパンジーか』(1992年)
『セックスはなぜ楽しいか』(1999年)
『銃・病原菌・鉄』(2000年)
『文明崩壊』(2005年)
などなど、本屋や図書館でみた人も多いかもしれませんね。
読みやすい文庫版としても出ているものも多いですし。


といっても、私も全部は読んでいません(笑
『文明崩壊』は上巻で終わったし(いっつも、誰か下巻を借りてるんだ)
『銃・病原菌・鉄』は途中で集中力が切れて断念したし…


そんななかこの『昨日までの世界』はダイアモンド氏本人がニューギニアで体験した事を交えて話を進めており、ちょっとした異文化交流の気分を味わえる。
ただ単にデータや論文だけで進めていくよりも、作者本人が直に経験した事の方が
その時の感情や臨場感なんかも伝わってきて、読み応えも感じる。
特に、普段日本で過ごしている身としては全ての環境が違う、『ニューギニア』の土地での経験はあらゆる面で驚きの連続というべきほかない。


・本著を読もうとしたきっかけ
もともと古代文明とか人類のなんちゃら~、とかそういうのが好きだったので
いつか読もうと思っていた本の一つですね(笑
長い長い何百年も続く人類の歴史は近代化によって、ものすごいスピードでガラリと変わった。
ある日、鳥しか飛んでいなかったジャングルの木々の間から、鉄の塊が轟音を鳴らしながら飛んでいく。まさに、昨日までの『世界は変わった』。
その実感を肌で感じる事ができる一冊だと思います。



『昨日までの世界』
ダイアモンド氏曰く、(ここからあくまで私なりの解釈です)私たちが生きている『西洋的現代システムで生きている』というのは人類史の時間軸においてたった1%でしかないのです。では人類史において残りの99%はどう生きてきたのか。


本著は、子供、老人、出産、戦争、言語、嗜好品、多様性とは、
などなどあらゆる面から私たち人類がいかに生きて来たかを書いています。


そんな本著に影響されてこんな漫画も描いてみました(笑


思いっきり、老人の扱いに関してですね(笑



さて、ダイアモンド氏は何故、『昨日までの世界』を語る上でニューギニアを選んだのか。ダイアモンド氏が研究のために頻繁に訪れていたというのもありますが、ニューギニア自体、複雑な地理・自然環境でありまだまだ発見されていない部族もいると言われているくらい
「昔ならでは」の暮らしをしている部族が多いのです。ニューギニア人は政府の統治下の元、西洋的な暮らしを手に入れたのはせいぜい50年程度。まだまだ彼らには統治されるまえの(良くも悪くも)伝統的な暮らしの名残を見る事ができるのです。
ダイアモンド氏にとってまさに『昨日までの世界』の絶好のサンプル。ということになるのでしょう。


南の島国、伝統的な暮らし、西洋文明とは隔絶された環境


って聞くとなんだか、パラダイスかつ平和的なものに聞こえますよね。
本書を進めていく、そうでも無いんですよ(笑


ざっくりいうと、あんな小さな島と少数の部族だっていうのに
しょっちゅう部族衝突(戦争)をしていて、復讐が復讐を呼ぶ
血みどろの歴史があるんだろうです…
日本でも戦国時代とかあったし、争い続けるのがある意味人類的な行動…といえなくもないのかもしれませんね…


血みどろの歴史…となるとニューギニア先住民の伝統は現代的に『NG』ばかりなのか、といえばそうとは限らない。コミュニティ内の手厚い福祉的な助け合い。金銭授受を目的としないシェア精神。全体の利益を考え、独占しない習慣。創造力を自立心を伸ばそうとする子育て。
どれもこれも人間の豊かな精神には欠かせないものですよね。


では彼らが西洋的現代システムに順応して手に入れたものとは…
ここは本著を見てお確かめいただければ(笑


もちろん、ニューギニアの体験だけではありません。
世界中のいろんな事例をだして、面白く楽しく書かれております!





世界規模でみれば、マナーやルール、常識などなど
郷に入れば郷に従え。When in Rome do as the Romans do.
場所によって大きく変わりますよね。


日本的な感覚では『禁忌』となることや、議論にするのも如何なものか…
と思えるようなことも、他所の国行けば、至って普通のことだったりしますよね~
しかし、グローバリズムやワールドワイドである事、多様性である事は
果たして良いのだろうか…そういった事を考えてしまいます。

上下巻合わせて600p程。
これを多いと見るか、少ないとみるか…
圧倒的な情報量と経験量を思えば、決して長いとはいえないのではないでしょうか…

世界はローカリズムとグローバリズムの絶妙なバランスで成り立っているのだと実感するそんな1冊でした。世界はローカリズムとグローバリズムの絶妙なバランスで成り立っているのだと実感するそんな1冊でした。

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