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みざくらの樹 #10 - 連続ドラマ続編の功罪

 やっぱりやらかしちゃったようだ。今期のドラマ「おっさんずラブ-リターンズ-」(2024年1-3月・テレビ朝日)が不振のうちに終わった。前にも書いたのだが「続編に名作なし」とよく言うし、悪い予感はしていたのだが残念ながら例外ではなかったみたい。シーズン1には感銘さえ受けて、夜中にもかかわらずかじりついて観ていたのに、今回のは「次の日にティ―バーでいいや」って(笑)。まあ、それでもあの「おっさんずラブ・ファミリー」が懐かしくて最後まで付き合いはしたのだけれど。

 はるたんこと田中圭は今回も魅力全開。本当にこのドラマのことを大切にしていてまさしく「帰ってきました」というところなのだろうが、春田につきまとう黒澤部長(吉田鋼太郎)は未練がましいことこのうえない(それでないと続編は成り立たないのだろうが)。シーズン1で、部長が結婚式の前日に、内心別れを覚悟しながら、春田のことを「バカで・・バカで・・」と呼びながら愛情込めて手紙を書いていたシーンが好きだったのだが、いったいあの感動をどうしてくれるのか(笑)。ストイックでツンデレがよかった(林遣都)はただのネクラに(表情もあまりよろしくない)。部長との毎回お決まりのバトルはドタバタ劇でしかなくて見るに耐えない。            今さらながら、はるたんのどこがそんなにいいのか、途中から観た人は不思議なのではないだろうか。シーズン1での春田は、地元でも、お年寄りが困っていると見過ごせないような優しい男である。まだ「目覚めて」いない時に部長に告白されて、尊敬している上司を「キモチワルイ」と一蹴できずに泣きながら煩悶するシーン、本当にいいヤツなんです。だからルックスだけではなく皆に好かれるんだろうなと感じさせるものがあったが、今回はただデレデレと年下の牧に甘えきっているだけ。見たい人は見たいのでしょうけれど食傷。新たに部長に昇進した政宗(眞島秀和)はすっかり狂言回しにされてしまい気の毒である。まあ、眞島さんを見たければ「#居酒屋新幹線」(MBS毎日放送)があるからいいけど。なお、眞島さんは広いおでこを出した知的なヘアスタイルがいいと思っているのだが、もう見られないのかしら。よかったのは、マロ(金子大地)が著しく成長して蝶子(大塚寧々)とよい夫婦になっていたのが、ほのぼのとしていたことぐらいか。

 制作者は今回の作品制作にあたりどのようなスタンスで臨んだのだろうか。ヒットのおかげで予算はついたのかもしれないが、それが功を奏したとは必ずしも言えないように思う。公安の二人(井浦新三浦翔平)はまったく余計で役者の無駄遣い。おディーン様はいったい何をしにきたのか。最後にNHKの「正直不動産」のパロディシーンがあったけれど、あちらの方がマシと思って見ている方としては、全然シャレにならないんだけど。また、天空不動産、春田と牧の新居、居酒屋わんだほーなどのロケセットが立派になりすぎたことで、下町色が消えて親近感が薄れてしまった。わんだほーでヘンな新作メニューを出したり、マスター鉄平(児島一哉)が下手な弾き語りをしてもよかったのは、あの場末の店だったから。あの店にも過去にはいろいろとエピソードがありましたね。最後にはネタ切れなのか、ドラマ打ち上げパーティーのようなものを見せられたが、視聴者がこんなものを喜ぶと思ったら大間違いである。最近はこのような終わり方をするドラマがよくあって、田中圭吉田鋼太郎が共演したおかしな吸血鬼のドラマもそうだったし、昨年秋の「うちの弁護士は手がかかる」(2023年・フジテレビ)も、ただ、出演者が内輪受けで騒いでいたのが興ざめだった。このドラマはムロツヨシ平手友梨奈のバディぶりがよかったので、私には珍しく続編があればよいなと思っていたのだが、こんな最終回にするところをみると、もう作るつもりはないというサインなんでしょうか。

 視聴者はなぜ、続編を期待するのか。主人公もさることながら、主人公を取り巻く群像の世界観が好きだからではないだろうか。あの人たちはその後どうしているのか、相変わらずこんなことやあんなことをしているのか。終わったドラマのことをときどき思うことがある。その要望に応えて続編を作ってくれるのはありがたいことなのだが、かえってイメージをぶち壊してしまうこともある。阿部寛の「結婚できない男」(2006年・フジテレビ)などはその典型で、彼を取り巻く三人の女性陣(夏川結衣高島礼子国仲涼子)がよかったのに、総入れ替えになって全く魅力がなくなってしまった。がっかりするくらいなら、作らないでくれた方がありがたいこともある。その点、潔かったのは黒木華主演の「凪のお暇」(2019年・TBS)で、登場人物が皆アパートを出てバラバラになったこともあるが、その後のことは視聴者それぞれの想像に任せることで、永遠の珠玉の作品となった。その後、坂本さん(市川実日子)とシンジの兄のカップルはどうなったのかな。

 今期ドラマはこのように残念ながら不作だが、唯一燦然と輝いているのが、阿部サダヲの「不適切にもほどがある」(2024年・TBS)である。これがあるから週末が楽しみという人も多くいる。ここまでハッチャケていると、もうただケラケラ笑って観るしかないわ。やってくれたね、クドカン。これについては、また改めて書きたいと思います。