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菱江ロジスティクス事件(平成30年6月19日大阪地裁)

概要

被告の従業員であった原告が、休職期間満了による退職扱いにされたが、休職期間満了前に治癒していたなどとして労働契約上の地位確認並びに未払賃金及び遅延損害金の支払いを、被告の支店運輸部製品管理課への配転が無効であるとして同課に勤務すべき労働契約上の義務がないことの確認を、上司からのパワハラにより精神的苦痛を受けたとして使用者責任に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払いを、復帰プログラムの実施により人格権を侵害されたとして職場環境調整義務の債務不履行に基づく損害賠償及び遅延損害金の支払いをそれぞれ求めた。

結論

棄却

判旨

1.元従業員は,休職期間満了前の平成28年1月13日,同月7日より復職可能である旨の本件診断書を提出し,復職を申し出ていたから,元従業員は,休職期間満了前に労務の提供が可能な状態に回復していた旨主張するが,確かに,医師が同月6日付けで作成した本件診断書には,「H28年1月7日より復職可能と思われる」旨記載されていることが認められるが,本件診断書は,心療内科の医師が作成したものと認められるところ,医師が,元従業員の会社における職務内容を詳細に把握して本件診断書を作成したか否かは不明であり,本件診断書をもって直ちに,元従業員が会社に対する労務の提供が可能な状態に回復していたと認めることはできず,また,元従業員は,同月13日,会社に対し,本件診断書をファクシミリで送信すると共に,明日にも復帰可能である旨連絡したものの,結局,同月14日及び15日は体調不良を理由に出社せず,同月18日,19日及び20日も,会社への連絡なく出社していないこと等から,元従業員が,休職期間満了日である同月16日の前に,会社に対する労務の提供が可能な状態に回復し,休職事由が消滅したとまでは認められない。

2.会社は,遅くとも休職期間満了の5か月程度前から元従業員への連絡を試み,3か月前には元従業員の自宅に赴いて連絡を取ろうとし,その後は,書面を送付して連絡を求めたり,休職事由が消滅しない状況が継続すれば就業規則の所定の手続により退職となる旨警告したりしており,元従業員が,休職期間満了3日前になって,出社する旨連絡した際も,元従業員の元上司である部長がA支店に赴いて待機するなどしているのであって,休職期間中である元従業員への対応として不誠実な点は見当たらず,一方,元従業員は,平成27年10月2日付け診断書に記載された「2ヶ月」が過ぎても,会社に対し,休職事由の消滅や復職について前向きな連絡を行わず,平成28年1月13日(休職期間満了3日前)になって,会社に対し,その1週間前の日付けで「復職可能と思われる」と記載された診断書をファクシミリで送信し,翌14日に出社する旨述べたものの,結局,同日及び同月15日は出社せず,同月18日ないし同月20日も,連絡なく出社しておらず,以上の経過を併せ鑑みれば,会社が,就業規則に基づき,元従業員が,同月16日の休職期間満了により自然退職した旨の主張をすることが,信義則に違反するということはできないこと等から,元従業員の会社に対する地位確認請求及び未払賃金請求は理由がない。

3.会社が,元従業員に対し,あいさつ,体操又は復帰プログラムを実施することが,元従業員の人格権を侵害する行為であり,職場環境調整義務に違反するものとまではいえないこと等から,元従業員の,会社による職場環境調整義務の債務不履行に基づく損害賠償請求は理由がない。


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