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大学の准教授が、上司である教授からハラスメントを受けたとして、損害賠償を請求したことにつき、上司と大学の賠償責任が認められた例①(平成29年3月30日金沢地裁)

概要

被告法人が設置する大学及び大学院の准教授である原告が、上司であった被告Y(原告が所属する教室の主任)に対し、被告Yから度重なるハラスメント行為を受けたと主張して、不法行為を理由として損害賠償金の支払を求めるとともに、前記のハラスメント行為により、平穏かつ充実した環境の下で研究教育活動を行うことを妨げられていると主張して、人格権及び准教授の学校教育法上の地位に基づき、原告が行う研究、学生に対する教授、研究指導活動についての妨害活動及び名誉毀損行為の差止めを求めた(甲事件)、

被告Yが、原告による上記事件の提訴は、存在しないハラスメント行為について損害賠償及び差止めを求めるものであって訴えの提起自体が違法であること、被告Yは、原告の暴行により顔面打撲等の傷害を負ったなどと主張して、原告に対し、いずれも不法行為を理由として損害賠償金の支払を求めた(乙事件)、

原告が、被告法人に対して、被告法人が、被告Yの原告に対するハラスメント行為に加担し、またはこれを放置したとして、労働契約上の内部告発者の保護義務ないし職場環境の整備義務違反の債務不履行に基づき、又は、被告Yの行為について民法715条ないし国家賠償法1条1項に基づいて損害賠償金の支払を求めるとともに、労働契約上の職場環境整備請求権に基づき、原告が行う研究、学生に対する教授、研究指導活動について、被告Yが妨害活動及び名誉毀損行為をすることを被告法人において防止すること及び被告法人がこれらに加担しないことを求めた(丙事件)。

結論

一部認容、一部棄却、一部却下

判旨

教授が,准教授の使用する機器室とセミナー室との間に,高さのある器具等を隙間なく,視界を遮るよう,間仕切り状に設置させているところ,このような器具等の並べ方は,殊更准教授を本件教室の所属員から隔離する印象を植え付けるものというほかなく,嫌がらせを目的としたものであり,教授が科目責任者を務める授業科目ないし教室が担当する授業科目のうち准教授に担当させる授業のコマ数を平成23年度の約42コマから平成24年度には3コマに減らし,平成26年度には原告に授業を担当させないこととしたことは,合理的な理由が認められず,嫌がらせを目的として行われたものであり,殊更准教授を陥れる目的で,准教授から暴行を受けた事実が実際には存在しないにもかかわらず,法人に対してその旨の虚偽の事実を申告した上,警察署に対してもその旨の虚偽の内容の被害届を提出したことは,不法行為法上違法と評価されるものであることは明らかである。
ハラスメント調査委員会が准教授が面談に応じないことを理由に調査を休止するなど,十分な調査を行っておらず,具体的な対応もしていないのであるから,法人が,職場環境改善に向けた対応義務を尽くしたということはできず,法人は,債務不履行責任を負う。

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