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医療法人明成会事件(令和1年8月29日大阪地裁)

概要

内科、消化器内科及び糖尿病内科の診療所を経営する医療法人の従業員であった従業員が法人の行った解雇が無効であり、又は契約が更新されているとして、法人にに対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるともに、未払賃金及び遅延損害金の支払、また、法人が上記解雇又は更新拒絶により故意に従業員の権利ないし法律上保護に値する利益を侵害したとして、不法行為に基づき、治療費及び慰謝料及び遅延損害金の支払を求めた。

結論

一部認容、一部棄却

判旨

医療法人は,元従業員が,医療法人の運営に関し,意見を超えて医療法人代表者に反発し,医療法人代表者と激しく言い争いをしていたこと,他の従業員に受付業務を教えなかったこと,他の従業員に対し,医療法人代表者等のことを無視するよう指示していたこと等元従業員の勤務態度等の問題点を多数主張するが,これらを裏付けるに足りる証拠もなく,仮に,元従業員の勤務態度等に医療法人が指摘するような問題点があったとしても,元従業員に対して注意指導を繰り返したとか,書面等で注意したり,改めなければ何らかの処分をする旨示唆したといった事情は見当たらず,また,それまで元従業員が大きな問題を起こすことなく10年以上にわたり勤務してきたことも考慮すると,このような勤務態度等の問題によって,労働契約の更新拒絶まですることが客観的に合理的な理由があり,社会通念上の相当性があるとはいえず,さらに,本件契約が黙示的に更新されており,医療法人による解雇通知が労働契約の期間途中の解雇であるとすれば,尚更元従業員の勤務態度等の問題点がやむを得ない事由に当たると認めることはできないこと等から,本件契約が更新されるものと元従業員が期待することについて合理的な理由があると認められ,本件契約は,更新されたものとみなされる。

元従業員の主張によっても,元従業員と従業員らとの間でトラブルがあり,医療法人は,そのことに関する事情聴取を行う上で,元従業員に自宅待機を命じるなどするに至ったこと,元従業員が労働契約上の権利を有する地位を失わず,これまでの賃金請求も認められること等を考慮すると,元従業員が解雇通知を受け,他の従業員の前で自宅待機命令書を渡されたこと,ロッカーの中の物をすべて持ち帰るように言われたこと等を前提としても,別途損害賠償請求を認めるほどの元従業員の何らかの権利又は法律上保護に値する利益が侵害されたとまでは認められないから,元従業員の損害賠償請求には理由がない。

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