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九州惣菜事件②(平成29年9月7日福岡高裁)

概要

会社を定年退職した従業員が、会社人に対し、主位的に、会社との間で再雇用契約を締結したのと同様の法律関係が成立している旨主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成27年4月から判決確定の日まで毎月15日限り退職前の賃金額の8割の賃金の支払を求め、予備的に、会社が、再雇用契約へ向けた条件提示に際し、著しく低廉で不合理な労働条件の提示しか行わなかったことは、従業員の再雇用の機会を侵害し、不法行為を構成する旨主張して、損害賠償を求めた事案の控訴審。

結論

一部棄却、一部変更 → 上告

判旨

本件提案は、定年退職前はフルタイムの労働者であり、フルタイムでの再雇用を希望していた元従業員を短時間労働者とするものであるが、本件提案の条件による場合の月額賃金は、定年前の賃金の約25パーセントに過ぎず、本件提案の労働条件は、定年退職前の労働条件との継続性・連続性を一定程度確保するものとは到底いえないから、本件提案が継続雇用制度の趣旨に沿うものであるといえるためには、そのような大幅な賃金の減少を正当化する合理的な理由が必要であるところ、月収ベースの賃金の約75パーセント減少につながるような短時間労働者への転換を正当化する合理的な理由があるとは認められないから、会社が、本件提案をしてそれに終始したことは、継続雇用制度の導入の趣旨に反し、裁量権を逸脱又は濫用したものであり、違法性があるものといわざるを得ず、元従業員に対する不法行為が成立すると認められる。

月収ベースで約75パーセントの賃金を削減する本件提案の内容が定年退職前の労働条件との継続性・連続性を著しく欠くものであること、他方で、店舗数減少を踏まえて会社が本件提案をしたことにはそれなりの理由があったといえることに加え、元従業員が、遺族厚生年金(月額7万7475円)を受給しており、本件提案により再雇用された場合には高年齢雇用継続基本給付金(1万4610円程度)も受給できる見込みであったこと、元従業員には扶養すべき親族はいなかったことからすれば、本件提案の内容は、元従業員につき特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給が開始していない年齢であったことを考慮してもなお、直ちに元従業員の生活に破綻を来すようなものではなかったといえること、その他(元従業員の勤続年数等)の諸事情を総合考慮すれば、慰謝料額は100万円とするのが相当である。

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