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決断はちょっとした勇気

講師というものに多少興味があった。言わば憧れのようなものだ。そう簡単に自分にできるとは思えない。どうしたものかと悩んでいた時に、ふと桜井さんのことが頭に浮かんだ。彼女だったらこの件について、どんなことを言うのだろうか非常に興味があった。
早速、連絡をすると快く応じてくれ、また彼女の勤務する大学の近くでランチをすることになった。そして講師のオファーを受けた経緯と現在の心境を話した。
講師の経験がないこと、人前で話すこと、講座の進め方、資料作成のことなど、とにかく不安を並べ立てた。
じっと私を見ながら彼女は聴いていた。私が断るための理由を見つけているように感じたのかもしれない。
 そして彼女は思ってもみない一言を発した。
「まあ、羨ましい、そんなオファーが来るなんて」
 私が「エー!」という顔をしていると、
「だって、私の仲間でも講師をやってみたいと思っている人はたくさんいるのよ」
「なかなかそんなチャンスなんてないのよ」
「資格を取って1年くらいでそんなチャンスに恵まれるなんて本当にラッキーなことよ」「このチャンスを逃すと、きっと後悔することになるわよ」
「どんな講師でもデビューの時は緊張と不安で一杯だったと思うわ」
「あなたなら大丈夫よ、今でしょ! せっかく取った資格を生かすのは」
と、矢継ぎ早に話した。
 黙って彼女の話を聞いていた。親子ほど年が離れているにもかかわらず、叱咤激励されてしまった。気丈で率直に物言う姿勢はさすが道産子。単なるマドンナではなかった。
 見方を変えなければ。
そんな彼女に私から
「桜井さんは講師に向いていると思うけど、どう?」と勧めてみた。
「私は無理、だって人前で話すのは大の苦手だから講師はできない、無理」と即座に拒否。「本当にそうかなあ、そうは見えないけどなあ」と思いつつ、いつか機会があったら彼女も引っ張り込んでやろうと考えていた。
自分にとって冒険なことであり、勇気のいることだったが、彼女の後押しもあり講師を引き受けることにした。
年齢を重ねるにつれ、なかなか次の一歩が踏み出せない。無理することはない、冒険することはない、と思ってしまう。

「何かいいことないかな」と、棚からボタ餅を待っている他力本願になりがちだ。会社組織の場合は一人位サボっていても仕事は回っていくが、今はそうもいかない。自分が動かない限り何も進まないのである。何もしないところに棚ボタはない。とにかく結果を求めず積極的に行動を起こすことである。「その先に何があるのか」を考える前に、楽観的に考えて、「ちょっとした勇気」と「好奇心」をもって行動に打って出よう。それを続けるところに「偶然」という棚ボタはある。偶然は時に化学反応を起こし思わぬチャンス(幸運)をもたらすことがある。

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