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■生きがいはどこに<事例Ⅱ>まんまと功を奏した妻の作戦

Bさんは70歳、会社の役員をしていて、3年前に退職した。それからはずっと家にいる、いわゆる引きこもりである。
 Bさんの奥さんはこのままではまずい、何とかしなくてはと日頃から心配していた。奥さんは町内会の役員をしており、次回の役員会に、何とかBさんに出てもらう方法はないかと考えた。
当日、奥さんは身体の具合が悪いからBさんに出てくれるよう頼んだ。奥さんは会計の役員をしているので、どうしても出席する必要があるからと、Bさんを説得した。
いやいやながらBさんは初めて町内会の役員会に出席した。役員会では夏祭りの計画を話し合っていたが、Bさんはただ黙って聞いていただけだった。

役員会に出席したいきさつ上、Bさんは夏祭りに参加せざるを得なくなった。
 暑い中での準備は大変で年寄りのBさんにはこたえた。ますます参加する意欲がなくなった。夏祭り当日は焼きそばの係になった。暑いので作る役は人に任せ、自分はできた焼きそばを売る役をしていた。
 すると、老夫婦に
「毎年これを楽しみにしているのですよ。暑いのにみんなのためにご苦労様」
 と言葉をかけられた。
 子供たちが町内会から配られた金券を握りしめ
「おじいちゃん、ありがとう」と嬉しそうに買っていく。
 あっという間に用意した30個が売り切れてしまった。
 家に帰ってBさんは
「疲れた、でも楽しかった」と言ったそうである。
 奥さんとしては、してやったりである。ほくそ笑んだことは言うまでもない。

この経験でBさんは何かを感じ取ったのであろう。これをきっかけに次回の夏祭りには、現役時代の仕入れのノウハウを生かし、焼きそばやフランクフルトなど、今までスーパーで買っていたものを生協と一括購入の交渉をして町内会費を節約し、子供が喜ぶようなイベントの費用に回したとのことである。
その町内の夏祭りは地域の評判をよび、今では遠くからも足を運んでくる人が増えたそうだ。自分の経験を活かし、人に喜ばれ、役に立つことを実感したBさんは、なり手がいなくて持ち回りになっていた町内会長を自ら引き受けたそうだ。

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