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秋の彼方

線香の
薫る玄関
さみしくて
誰も居ぬのに
杖がひとつ




アキアカネと
姿を変えて
迎えきて
偲ぶ面影
ここに止まりて



失いし
時の流れに
置いてきた
戻らぬ日々を
杖に支えられ


煙色の
染みる玄関
秋の空
誰も支えぬ
杖ひとつ居り


秋の彼方を見ている

秋とは、
むこうに広がる季節。
空のむこう。
時のむこう。
心のむこう。。

喫茶店主

秋の彼方には
線香の薫る玄関を
思い出す。
くすんだ上リ口の脇に
杖ひとつ

かつて祖母を支えた杖は
今でも
ここに居る

杖ひとつ、ここに居る
秋の彼方を見ている赤とんぼ
夕日を見つめて
秋の彼方へと帰り支度している

僕を見にきたのかと
少し和む
そして優しい気持ちを思い出す


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