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【春駅物語】企画~旅立つ人


三十数年ほど前のこと

春の日ざしはあたたかくて
空が白く、白くかすんで見えた午後に
僕は故郷の駅のホームで一人静かに佇み
列車を待っていた

『桜にはまだ早いな。。』
ホーム越しの空き地に梅の花が
ちらほら咲く頃だ

春霞ホームに立てば
片道の
レールの先は一人立ちゆけ

べじさん


布団だけは送った。。と父
ありがとう、と。。
それだけを告げて

18年暮らした家をあとにした日

勤労学生となり奨学金制度を利用
貧しい家の子供はそうして私大に進学する
入学式より早く新聞配達の仕事をおぼえる為に故郷をあとにした

誰も知らない、友人もいない新天地でやっていけるのだろうか?と
不安がよぎる。だけど後には退けない。やる。何を?
わからないけど生きるのだ

そんな不安と期待入り交じる
ローカル線、列車の旅路

たたっととん。たたんととん。
たたっととん。たたんととん。
線路の継ぎ目が唄う

大学のある街に着いた
夕暮れにおなかが空くけど

おかずもなくて、新聞店の二階で一合だけごはんを炊いた
その白ご飯がとても美味しく感じられた春。

まだ年号は昭和でしたね
あの日の列車に乗車してからずいぶん遠くまで来てしまいました。

毎年思い出します
春先に旅立ちを迎える皆さまを
静かに応援させていただきます。


⬇️もう一度企画概要です⬇️

ここまで読んでいただき、ありがとうございます✒️

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