私が彼女で貴方は幼馴染③
続けて静香は話す。
「彼氏ってそんなに急いで欲しいものなんですか?私にはただのステータスにしか見えません。ただ彼氏がいるだけの優越感に浸っている自己満足だと思うんです。結奈みたいにこんな無理をして色んな人を巻き込むなんて絶対におかしいです。」
確かに静香の言っている事も一理ある。しかし麗は一息ついて話し出す。
「それでも友達が好きって言ってるのを無理矢理止める事なんて出来ないよね。結奈ちゃんには結奈ちゃんの好きになった理由があって、サッカーだけじゃなくて他の事も私に聞きに来てくれたと思うの。それに結奈ちゃんと翔の事が無かったら私達はきっと知り合って無かったわ。悪い事ばかりじゃないと思うよ。」
「それでも武藤先輩を知ってからの結奈は私の事を見てくれる回数は減りました。私の友達は結奈ひとりなんです。武藤先輩とよく会う様になれば私はきっとひとりぼっちになってしまうと思うんです。」
「もう結奈ちゃんだけじゃないよ。私も話せる様になったんだから。何か相談があったりしたらしてほしいし、一緒に遊んでもいいと思うんだけど。」
「私はこのままがよかった。武藤先輩と知り合う前の2人っきりの頃が…。」
静香は俯いてしまった。麗はこの後、翔の話をどうしたらいいのか考えた。するとトレーに飲物や食べ物を載せた結奈がこちらへ来るのが見えた。
麗はすかさず鞄の中からコンパクトを取り出して周りに聞こえる様な大声で話し出す。
「静香ちゃん、もっと明るいチーク使ったらどうかな?そうしたらもっと明るく見えると思うな!例えばこんなのとか?」
「…えっ?」
静香が顔を上げてキョトンとしていると結奈がトレーをテーブルに置いて席に着いた。
「何の話をしていたんですか?」
結奈は嬉しそうに聞いてくると、
「静香ちゃんは綺麗系なんだけど少し顔が暗く見られそうだからこんな明るいチーク使ってみたらどうか話していたの。」
麗は噛む事もなくツラツラと言葉が出てくる。
「確かに静香が化粧をしたらもっと綺麗になれるだろうね。私も化粧してみたいです。」
「うん、今度結奈ちゃんにも合うのを探してきてあげるね。」
その後、結奈は飲物を渡し、シュークリームを3個買っていたのでそれぞれに渡した。
「やっぱりお金払うよ。」
麗は財布を取り出そうとすると、
「いいんです。今日は私の奢りで。その代わりに私の知らない武藤先輩を教えて下さい。」
結奈は不器用に微笑んだ。
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