依存③
麗はもう片方の手で翔の頭を撫でると翔は目を開いて麗を見た。
麗と目線が合うとその透き通った綺麗な瞳に魅入られる。そして思い出した事がひとつ...。
翔は麗の手を離し、ゆっくりと前を見ると目の前には人の背丈位の大きな画面が現れる。
「これは...。」
翔は画面を見ていると映像が流れ始める。
幼稚園の年長の時、麗と真一とよくおままごとをしていた。
そして映像の中の麗は隣にいる麗と同じ姿だった。
役は麗が母親、真一は子供、そして翔は父親。
3人は家族というよりはただ知らない人間が寄り添った様なその場限りの家族といった感じのおままごとで、その家族になった経緯とかは完全に無視をした設定であった。
幼稚園の時なのでそこまでの詳しい経緯を考えているはずもなく、この時の翔もこの中では自分と麗が結婚しているなんて考えもしなかった。
麗がしたいと言うから真一も翔も付き合っていると言った方が早かったが麗が乗り気でやっていたので2人は何も言い出せなかった。
遠足の時に使用するマットを引いて3人は座る。
そして麗はプラスチックの茶碗を2人の前に出して、
「今日は炊き込みご飯作ったの。みんなで食べましょう。」
とキラキラした瞳で2人を見た。
3人で手を合わせて、
「いただきます。」
と声を合わせるとみんなで食べるフリをする。
すると麗はいつも昨日食べた物の話をし始めた。
「昨日、お母さんが作ってくれた炊き込みご飯を真似してみたの。お母さんの炊き込みご飯は人参と鶏肉が入ってるんだけど、すっごく美味しいの。今度、お母さんに頼むから食べにきてね。」
おままごととはそんなに関係ない他愛ない話を続けていた。
「翔君、もうすぐ小学生だけど勉強ってどんな事するのか知ってる?」
「いや何か教科書を見ながら先生の言う事をノートに書くとしかわからないよ。」
「真ちゃんは?」
「頑張ったらいい会社に入れるってお父さんが言ってたよ。夢ややりたい事がなかったらとりあえずでいいから勉強は頑張った方がいいんだって。」
「そうなんだ。でもそうなったら遊ぶ時間が減っちゃうかもね。」
翔は透かさず、
「だったら勉強なんてしないでもいい。やりたい事を見つけてその為に頑張って、遊ぶ時間は作ろうよ。」
と言って麗を説得した。
「そうだよね。みんなと一緒にいる時間も大事だもんね。」
と麗は微笑むと翔は安心した。するとクラスメイトの男の子3人組が翔達に近付く。
「翔、またおままごとか?翔『君』だって。いいね〜楽しそうで。もうすぐ小学生なのに恥ずかしい。」
と言ってマットの上にあった翔の茶碗を蹴り飛ばした。
翔は茶碗を蹴り飛ばしたクラスメイトに向かって行き、襟元を掴んで、
「謝れ!謝れよ!」
クラスでも運動神経は一番良かった翔だったのでクラスメイトは何も出来ずに押されていた。
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