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引き込まれた世界の中で⑤

翔は昨日の夢の中と先程の結奈の事を考えていた。

同じ結奈なのに違う人間に思えたが夢の中だから仕方ないと思っていた。

だがどうしても昨日の夢の事が忘れられない。

昼飯を誘ったはいいものの結奈と付き合う考えは全くない。だけど結奈を傷付けずにお別れする方法が思い付かない。

だったら一層の事こと結奈を傷付けてしまっても仕方がないのか...。

考えれば考える程、負のスパイラルに巻き込まれてしまう。

そんな事を考えている間に4限終了のチャイムが鳴った。

「じゃあ今日の授業はここまで。今日やった所はテストに出すからな。」

先生が教室を出て行くと翔は直ぐに立ち上がり教室を出て行った。麗は急いでいる翔を見ている事しか出来なかった。

翔は食堂前までくると2人を待った。

そわそわと落ち着きを覚える事はなく2人がやってくる。

「お待たせしました。行きましょうか。」

結奈が食堂を指差すと3人は食堂へ入っていった。

色んな定食や麺類が販売されている中で、

「私、焼鮭定食にする静香は?」

「私も一緒で。」

「じゃ、じゃあ俺も。」

3人は皆、焼鮭定食を購入し、テーブルを囲んだ。結奈と静香を目の前に翔は座ると、

「頂きます。」

と箸を握った。

昼食を食べ始めると、

「そういえば先輩はなんで誘ってきたんですか?」

結奈が聞いてきたが翔は暫く答える事が出来なかったが、

「わからない...だけど...なんか謝らないといけない気がして...。」

「謝られると余計惨めになる事になります。私の事は気にしないでいいって言いましたよね。私はまた影で先輩の事を応援してますから。」

「そんな影からだなんて...あのさ、俺達、友達になれないかな?応援だって正々堂々してもらっても構わない。なんでそんなに0か100にこだわるんだ?」

「友達...友達になったらいつかは私の事を好きになってくれますか?異性として好意のある友達がずっと近くにいるのって気持ち悪くないですか?」

「それは...そうかもしれないけど繋がっていないと本当に繋がりたい時に急には繋がれない。俺は自分からは切ったりしない。何か話したくなったらいつでも話してきてほしいから。」

翔は自分もずっと好意を持っている異性と繋がっている。

だけどここでは言わない方が賢明だと思い、口には出さなかった。自分に言い聞かせる様に結奈に話した。

「...わかりました。じゃあ始めは友達からでお願いします。」

「ありがとう。何か困ったら力になるよ。」

翔は手を差し伸べると結奈も手を伸ばした。

あと5センチで掌が重なる所で静香が結奈の腕を引いた。

「結奈。本当にそれでいいの?」

「とりあえず...とりあえず友達で。」

結奈は翔と握手をした。翔は微笑むと結奈は少し顔を赤らめた。

そこから翔は昼食を食べると行ってしまった。

2人になると、

結奈は翔と握手した右手を匂った後に舌でひと舐めした。

「優しい先輩。でも私...そんなに待てない性格なんですよ...。」

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