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洋書レビュー Yellowface / Rebecca F. Kuang


Yellowface / Rebecca F. Kuang

Goodreadsを始め各賞を総なめにしているYellowface、このインパクトのあるカバーを目にしたことのある方も多いんじゃないかと思います。

一度見たら忘れられないカバー。机の上に置いていると必然と目が合うので、カバーをかけて読みました(笑)

<あらすじ>
イェール大学の同級生のJuneとAthenaは、同じ文芸雑誌でデビューした作家だが、ベストセラー作家のAthenaに対してJuneは鳴かず飛ばず。Athenaと比較しみじめに感じるJuneだが、なんとなく誘われれば食事し、喋る間柄であった。ある日、Athenaの自宅で二人で飲んでいた時、Juneの目の前でAthenaは死んでしまう。そしてその部屋でちょうど書き終えたばかりの原稿を見つけたJuneはそれを書き換え自分の名前で発表、ベストセラー作家の仲間入りを果たすが…。

物語は盗作をしたJuneの視点から描かれます。Juneは白人、Athenaは中国系、盗んだ作品が第一次世界大戦中の中国人労働者のヒストリカルフィクションんだったこともあり、出版直後から「白人が中国人の歴史物語を書いた」ことに猛烈な批判がSNSで巻き起こります。先日私が読んだHELPも、白人が人種差別時代の黒人を描いたということで批判の対象となっている様が、Yellowfaceにも出てきました。日本から出ることがあまりなく、こういった人種に関する問題を意識することがあまりない私には、「えっ、こんなことで炎上するの?」と戸惑うことも…。読み進めるうちに、出版業界の事情、男女、人種での差別、SNSの恐ろしさ、色々押し寄せてきて何を読まされているのか、著者は何を語りたいのか困惑することもありましたが、最終的にこれは現代社会の中のホラーを描いた物語だと私は思いました。呪いや霊とかのホラーではなく、人間社会のホラーです。間違いなく今まで読んだことがないタイプの本でした。これは賞を取るのも頷ける。

個人的には好きなタイプのお話ではないですし、読んだ後、心が重くなったのですが、読む価値のある一作だと思いました。また英語学習の面からいうと、かなり洗練された文章を書かれる著者だと思います。洋書初心者にはしんどいと思いますが、少し上級の読み物にも挑戦したいという方にはおすすめです。この読了後の重さから回復したら、今度は英語学習の目線でもう一度読みたいと思っています。

しかし、物語読んだ後の、最後のacknowledgementで、出版業界の皆さんに著者が感謝を述べているところを読んで、著者は本当に感謝しているんだろうか…と怖くなってしまったのは私だけでしょうか?いやはや恐ろしい。

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