見出し画像

ジェンダー格差

 

日本の伝統か

 1万年前以降、政治や経済の分野で男性がトップであり続けたわけではない。イギリスでは最近まで女王が在位していたし、ほかの多くの国でも何度も女帝が即位している。女性天皇や女系天皇の是非が議論に上がる日本でも、古くは6~7世紀の推古天皇のように女帝は存在していた。
 女性天皇・女系天皇に関する議論や、国連から現在の夫婦同姓が女性差別的であると再三勧告を受けて、法改正が審議されてきた選択的夫婦別姓に関する議論を耳にすると、伝統的にジェンダー格差が強い国のような印象を日本に持つかもしれない。
 しかし、保守的な議員の間で、夫婦同姓が日本古来の家族の在り方を守るためのように語られているが、夫婦同姓は1898年の明治民法制定後のことであり、決して日本古来の伝統ではない。
 ジェンダー平等のお手本と言われる北欧諸国ですら、歴史を振り返れば、平等となる必然性はなかった。仮に伝統や歴史があっても、それが現在の問題の言い訳にならない。

セクハラが男女の職業分離を加速させる

 スウェーデンはジェンダー格差が小さいことで知られるが、それでも過去1年以内に職場でセクハラ被害に遭ったと答えた女性は13%ほどいる。この調査は政府が実施しているので、職場での聞き取りと違って匿名性が担保されることや、一般的な職場環境に関する100以上の質問のうち、セクハラに関する質問はたった2問であることなどから、データの信頼性はかなり高いと考えられる。このデータを背景に、ストックホルム大学のヨハンナ・リクネ教授たちは自ら簡単なオンライン実験を実施し、セクハラ被害を賃金に換算することも試みた。
 リクネたちはまず男性の多い職場ほど賃金水準が高いことを確認したうえで、そのような職場ほど、女性がセクハラ被害を訴える可能性が高いことを示した。実験結果によると、同性がセクハラ被害に遭っている環境は、賃金が17%下がることと同等と評価された。実際に、セクハラ被害に遭った女性ほど、その後、より男性が少ない職場に、また、より賃金が低い職場に転職していくことも分かった。

赤ちゃんの時から

 玩具売り場を見てみても、ジェンダー別に並べられていた。男の子向けのおもちゃはたいてい活動的なもので、電車、車が含まれ、女の子向けのおもちゃはたいてい受動的なもので、唖然とするほど人形ばかり。

 女の子の母親はとても抑制的で、四六時中、赤ちゃんに、「さわっちゃダメ」とか「だめだ、お行儀よく」と言い続けているのに、男の赤ちゃんはもっとどんどんやれと励まされ、抑制されることも、「お行儀よく」と言われることもほとんどなかった。親たちは無意識にとても早い時期から女の子にこうあるべきだと教え始めている。女の赤ちゃんはより小さなスペースとより多くのルールを与えられ、男の赤ちゃんはより大きなスペースとより少ないルールを与えられる。

逆にしてみよう

 テリーザ・メイがイギリス首相の頃、進歩的なイギリスの新聞は彼女の夫についてこんな書き方をしていた。
 「政界では、フィリップ・メイはバックシートに座って妻のテリーザが目立つことを許可した男として知られている」
 これを逆にしてみよう。テリーザ・メイは彼女の夫が目立つことを許可した。意味が通るか?もしもフィリップ・メイが首相であれば、私たちが耳にするのはたぶん、妻が背後から彼を「支えた」とか、彼女が彼の「裏方」かもしれないが、夫が目立つことを彼女が「許可した」と耳にすることは決してないだろう。
 「許可する」とは、権力のこと。承認や許可が一方的に使われるとき、ほとんどすべてが一方的に使われているが、それは対等な関係ではない。

 もし女性の「X」を批判するのに、男性の「X」を批判しないとしたら、その時は「X」が問題なのではなく、女性を問題にしている。「X」には、怒り、野心、派手さ、頑固さ、冷淡さ、容赦のなさ、といった語を入れてみて。 

結婚は獲得することではない

 私たちは女の子に結婚へのあこがれを植え付けるけど、男の子には植え付けたりしない。ということは、既に出発点でものすごい不均衡がある。女の子は結婚の頃で頭がいっぱいの女性に成長するでしょうが、男の子はそうではない。女性たちがそういう男性たちと結婚することになる。関係が必然的に不公平になるのは、社会制度が片方にとって、より深刻な問題になっているから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?