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あかりのアプリ

内容紹介
『あかりのアプリ』【シナリオ形式】

 アカシックレコード。それは全宇宙の過去からの全情報が記録されたデータバンク。全宇宙の生命活動の〝結果〟であると同時に〝原因〟でもある。前世を含めた過去から、思考した全てのことは、波動となって、宇宙にホログラムのように記録されている。と同時に、その記録されたデータをもとに、現在の宇宙、個々の生命は機能している……。

 明石あかりのケータイショップでは、赤い栗鼠のマークがついた特殊なスマートフォン『あかりs』を販売している。そのスマホに搭載されている『あかりのアプリ』は、

〝アカシックレコードを操作する〟ことができる!
〝過去を書き換える〟ことができる!

 その『あかりのアプリ』を手にした者は……。

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あかりのアプリ 1(2/2)

○ アレックス・スポーツのオフィス(朝)
   川上が出社して来る。
川上M「凄いことになった! これで〝現在〟
 がまたゴロッと変わった!」
   依子が引きつった顔で川上の方を見る。
依子「たいへん! 山本龍一が交通事故で!」
川上「え? え?」
依子「再起不能だろうって。桃子も今桂大病
 院にいるの!」
   川上、振り向いて走り出す。
川上M「(ニヤリとして)やっぱり……僕こ
 そ〝出来る男〟なんだよ、桃子~~~!!」

○ 桂大病院・外観(朝)

○ 同・病室(朝)
   桃子が泣いている――山本のベッドの
   そばで。そこに川上が入って来る。
川上「山本!」
山本「!? 山本って、誰に呼び捨てしてんだ
 よ! ……俺は……俺はもう終りなんだ!!」
桃子「(鳴きながら山本に抱きついて)ごめ
 んなさい! ごめんなさい……私を守ろう
 としてこんなことに……」
川上M「ええ!?」

○ アレックス・スポーツのオフィス
   川上が戻って来る。
   依子が気づき、川上に歩み寄る。
依子「あら? 戻って来たの?」
川上「はい。あまりにもチーフが可哀相で」
依子「? あなた、聞かなかったの?」
川上「え? え? 何が?」
依子「あなたクビよ。シューズ部門は山本龍
 一の案件だけが起死回生のチャンスだった
 んだから。アレックスはシューズから撤退
 するんだから、あなたも桃子もクビよ」
川上「そんな……」
   驚いていた川上の表情が次第に緩む。
川上「……それもいいか。じゃあ、依子の計
 画通りに行こう」
依子「ええ?」
川上「独立するってこと。依子、お父さんに
 よろしく。僕も起業家か……」
依子「何いってんの、あなた?」
川上「何って? (笑って)忘れたって?」
依子「忘れたのはあなたでしょ? 依子て何
 よ? 私はあなたの先輩よ? 呼び捨てに
 するなんて、あなた頭おかしいの?」
川上「何だって!? いったい……」
依子「同期の桃子の部下だから少し話しかけ
 てあげただけなのに失礼よ! (周囲に)
 誰か! 警備員を呼んで!!」
川上「ちょ、ちょっと……」
依子「まだ何かあるの!? あなたはクビにな
 ったのよ!! 早く出て行きなさいよ!!」
   気が動転している川上、やむなく外へ
   飛び出して行く。

○ 走っている川上

○ 駅前通り
   川上が走っている。
   眼前に『あかりのお店』が見える。

○ あかりのお店・外観
川上(オフ)「だからってこんなことに!?」

○ 同・店内
   カウンタを両手で叩いていた川上。
   カウンタ越しにあかりが『あかりのア
   プリ』の画面を見せて答える。
あかり「ええ。それを操作するのがこの『あ
 かりのアプリ』ですから」
川上「……」
あかり「アカシックレコードをリライトしち
 ゃった訳ですから」

○ イメージ・宇宙
   人類のこれまでの所業が波動となって
   記録されたイメージとして浮かぶ。
あかり(オフ)「過去から思考した全て……
 その中には自分と同じ様な、似た思考をし
 た生命もあります。似た生命は同じ波動、
 波長、周波数を持っていて、それらは互い
 に共鳴し合い、引き寄せる様になるのです。
 それを〝縁〟と言います。アカシックレコ
 ードをリライトするということはその人の
 〝縁〟も変わるということですから」

○ あかりのお店
   黙って聞いている川上。
   あかり、「少々お待ち下さい」と、パ
   ソコンを操作しながら話し始める。
あかり「あー。川上さん、2回アカシックレ
 コードをリライトされましたね。塩崎依子
 さんと……山本龍一さん」
川上「はい」
あかり「最初、塩崎さんのアカシックリライ
 トであなたと山本さんの〝縁〟が旧友では
 なくて、仕事で初めて出会ったことになっ
 てしまっていますね。ですから!」
川上「え? え?」

○ 川上の回想・陸上競技場
   川上、あかりsを山本に見せている。
川上「(ニコニコして)山本、チーフ、記念
 に写真を撮りませんか?」
山本「んん? ヤマモト?」

○ あかりのお店
あかり「呼び捨てにされたから彼……その時
 に気づいていれば良かったんですけどねぇ」
川上「ちょっと待って下さい。最初リライト
 したのは塩崎さんの方ですよ。それなのに
 なぜ山本との〝縁〟が変わるんですか?」
あかり「……元々、塩崎さんの好きな人は山
 本さんでしたね。あなたはご存知だったで
 しょ。そこのデータが書き換わった訳です。
 ですから」
川上「……」
あかり「宇宙の全ての生命はつながっている
 のですから」
川上「……全ての生命は……つながっている」
あかり「そして今度は山本さんをアカシック
 リライト。山本さんは島津さんとセックス
 はしていたが、特に好きではなかった……
 これは知ってたんですね」
川上「はい……」
あかり「その時、彼が好きだったのは?」
川上「!? まさかまさか!? 塩崎依子!?」
あかり「島津桃子さんと営業に来た時ですね」
川上「それじゃ……」
あかり「そして彼女は……ああ。山本さんが
 好きだって言ってた髪型に変えたんですね」
川上「!?」
あかり「そのことを山本さんは……島津さん
 から聞いて知ったようですね。で、彼は…
 …島津さんとは別れるつもりで彼女と会っ
 た日に事故で……」
   ――呆然とする川上。
川上M「じゃあ……もう一度3ヵ月前を書き
 換えるか? ……いやいや、待て待て。ま
 たまたそんなのを繰り返すのか?」

○ 川上の自宅ワンルーム(夜)
   川上が『あかりのアプリ』を操作して
   いる。画面には山本の写真。
   川上、アプリで質問する
   ――その画面「前世でも、川上勝広と
   子供の頃から友達だったか?」。
   川上、質問を送信する。
   と、回答がアプリに表示される
   ――その画面「違う」。
川上「それでか……」
   川上、アプリでアカシックレコードを
   書き換える
   ――その画面「前世では、川上勝広と
   子供の頃から〝超・親友〟だった」。
川上M「こんなに過去からアカシックリライ
 トしたら?」

○ ラブホテルの一室(夜)
   桃子が男(顔は見えない)とセックス
   している。
川上M「凄いことになった! これで〝現在〟
 が、いや〝現世〟がゴロッと変わった!」
   ベッド――川上(外見上は山本)の腕
   枕で桃子が寝ている。
川上M「なっちゃった? 僕が山本の姿に?
 この肉体……機能が変わったということか
 ? 全ての生命は……つながっている?
 これが〝縁〟というのか? しかし……そ
 うなのか? 〝超・絆〟!! 想像以上だよ
 !!」

○ 陸上競技場
   100mコースを猛ダッシュする川上
   (外見上は山本)。
川上M「史上最速の男!! 川上勝広!!」
   ――見守っていた山本(外見上は川上)
   と桃子。
   二人のもとへ川上(外見上は山本)が
   歩み寄る。
川上M「山本が前の僕の姿か……可哀相に」
山本「(ニコニコして)川上、チーフ、記念
 に写真を撮りませんか?」
   山本、あかりsを取り出す。
川上「んん?」

○ 道路(夜)
   川上(外見上は山本)と桃子が歩いて
   いる。
   そこへ自動車が突っ込んで来る。
川上M「しまった!」

○ 桂大病院・外観(朝)
川上M(オフ)「しかし! 桃子は僕を見捨
 てない!! 別に走れなくてもいい!」
桃子(オフ)「ごめんなさい! ごめんなさ
 い……私を守ろうとしてこんなことに……」

○ 同・病室(朝)
   桃子が泣いている――川上(外見上は
   山本)のベッドのそばで。
   彼の顔には白い布が被されている!!
川上M「ええ!?」
   川上の〝魂〟――天井からその情景を
   見下ろしている。
   そして――次第に浮き上がって行く。

○ 浮き上がって行く川上の〝魂〟
   ――上空から桂大病院の建物を見下ろ
   し――
   ――さらに上空から桂大病院のある町、
   病院の建物を見下ろし――
   ――そして宇宙からスペースコロニー
   の(超硬質)ガラス越しに、桂大病院
   のある町、病院の建物を見下ろす――

○ 宇宙
川上M(オフ)「しかし……そうなのか?
 〝超・絆〟!! 想像以上だよ!!」
         ― 終わり ―


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