見出し画像

あかりのアプリ

内容紹介
『あかりのアプリ』【シナリオ形式】

 アカシックレコード。それは全宇宙の過去からの全情報が記録されたデータバンク。全宇宙の生命活動の〝結果〟であると同時に〝原因〟でもある。前世を含めた過去から、思考した全てのことは、波動となって、宇宙にホログラムのように記録されている。と同時に、その記録されたデータをもとに、現在の宇宙、個々の生命は機能している……。

 明石あかりのケータイショップでは、赤い栗鼠のマークがついた特殊なスマートフォン『あかりs』を販売している。そのスマホに搭載されている『あかりのアプリ』は、

〝アカシックレコードを操作する〟ことができる!
〝過去を書き換える〟ことができる!

 その『あかりのアプリ』を手にした者は……。

画像1

あかりのアプリ 1(1/2)


○ イメージ・宇宙
   川上勝広(25)が必死に走っている。
あかり(先行・オフ)「アカシックレコード
 は全宇宙の過去からの全情報が記録された
 データバンクで、全宇宙の生命活動の〝結
 果〟であると同時に〝原因〟でもあるので
 す。前世を含めた過去から、思考した全て
 のことは、波動となって、宇宙にホログラ
 ムの様に記録されています。と同時にその
 記録されたデータを基に、現在の宇宙、個
 々の生命は機能しているのです。ですから」

○ ケータイショップ=あかりのお店・店内
   カウンタを両手で叩く川上。
川上「だからってこんなことに!?」
   カウンタ越しに店長の明石あかり(28)
   が、赤い栗鼠のマークがついた特殊な
   スマートホン『あかりs』の『あかり
   のアプリ』の画面を見せて答える。
あかり「ええ。それを操作するのがこの『あ
 かりのアプリ』ですから」
川上「……」
あかり「アカシックレコードをリライトしち
 ゃった訳ですから」
   ――呆然とする川上。
川上M「じゃあ……もう一度3ヵ月前を書き
 換えるか? ……いやいや、待て待て。ま
 たまたそんなのを繰り返すのか? しかし
 ……そうなのか? 〝超・絆〟!! 想像以
 上だよ!!」
   ×     ×     ×

○ 陸上競技場
   100mコースを山本龍一(25)が猛
   スピードで駆け抜けて行く。
   それを川上と島津桃子(28)が見学し
   ている。
   川上の後頭部を桃子が平手打ちする。
川上「いてっ! ……島津チーフぅ?」
桃子「川上! あんた、何で言わないのよ!
 山本龍一と昔からの友達だって! 知って
 たらあんな苦労しなかったのに!」
川上「だから……言ったじゃないですか……」
桃子「信じられる!? なんで!? 初の8秒台
 よ!? 史上最速の男よ!? あんたは!?」
川上「……資料催促の男」
桃子「分ったら早くしてよね、サンプルは!
 他社に取られたらどうすんの!? どこも山
 本龍一とプロアドバイザリースタッフ契約
 したくて必死なんだから!」
   山本が「大丈夫ですよ」と、現れる。
桃子「!」
山本「他のメーカーさんにはお断りしておき
 ました。友達がアレックス・スポーツの社
 員だって言ったら納得してくれました」
川上「山本……」
桃子「(ペコペコお辞儀して)ありがとうご
 ざいます! 必ず最高のシューズを作らせ
 ますから! (川上に)分ったら早く!」

○ 走る通勤電車(夜)

○ 同・車内(夜)
   川上がケータイでツイートしている
   ――その画面「今日もチーフにはたか
   れた♡ 山本TKS?」。

○ アレックス・スポーツのオフィス
   ランニングシューズの三次元CADを
   操作している川上の後頭部を桃子が平
   手打ちする。
桃子「シューズ部門の立て直しはこの案件に
 懸かってるんだからね! 起死回生のチャ
 ンスなんだから! 分ったら早く!」
   桃子、小走りでオフィスを出て行く。
   それを横目に、塩崎依子(28)が川上
   に近づく。
依子「桃子ちゃん、またはまってるんじゃな
 いの? 〝出来る男〟が好き♡ って」
川上「!? 前にもそんなことなかったか?」

○ 川上の回想・公園
   小学生の川上、山本と女の子。
   女の子は山本と手をつないでいる。
女の子「だって山本君、足、速いし」
川上M「憧れだった……あいつになれたらっ
 て……けど……」

○ トイレ個室内
   川上が便座に座っている。
川上M「ずっとそんな人生か? ……いやい
 や、待て待て。またまたそんなのを繰り返
 すのか?」
   ケータイでツイートしている
   ――その画面「喜んでる場合じゃない
   ? 〝出来る男〟にならなきゃ?」。

○ 走る通勤電車内(夜)
   川上がケータイでツイートしている
   ――その画面「でも? 〝出来る男〟
   って?」。
   川上、ふと電車内の人達を見回す。
   多くの人が手にしているのはスマート
   ホン。
川上「……(自分のケータイを見る)」

○ 駅改札口(夜)
   川上が出て来る。

○ 駅前通り(夜)
   川上が歩いている。
   と、ケータイショップ『あかりのお店』
   が目に留まり、立ち止まる。

○ あかりのお店・店内(夜)
   川上が入って来る。
あかり(オフ)「いらっしゃいませ」
   川上、いくつかのスマホを手に取り、
   操作してみる。
あかり(オフ)「もし良かったら」
川上「?」
あかり「この『あかりs』もお試し下さい!
 (と、あかりsを差し出す)」
川上「ア、カ、リ、ス?」
あかり「面白いですよ。うちのオリジナルで
 すから」
   ――あかりsの画面に『あかりのアプ
   リ』のアイコン。
あかり(オフ)「この『あかりのアプリ』は
 このスマホにしかないのですから」
   あかり、あかりsを差し出して微笑む。
あかり「アカシックレコードをリライト出来
 るアプリですから」
川上「!?」

○ 走る通勤電車(朝)

○ アレックス・スポーツのオフィス(朝)
   川上が自分の席であかりsを操作して
   いる。
   依子(以前と髪型が変わっている)と
   桃子が出社して来る。
桃子「珍しく早いじゃない」
川上「? おはようございます」
桃子「あら? スマホ買ったの?」
川上「はい……」
   フラッシュ――あかりの笑顔。
あかり「このスマホのカメラは、撮影した人
 物の波動を読み取って、それをキーにアカ
 シックレコードにアクセスして、その人物
 が過去に思考した全てのことを読み出すこ
 とが出来るんですから」
川上「あの、チーフ。このスマホ第一号記念
 で写真を撮らせて頂けませんか?」
桃子「それ、CADも使えるの?」
川上「CAD? いえいえ」
桃子「第一号は山本龍一のシューズの写真を
 見たいわね! 分ったら早く!(と、自分
 の席へ向かう)」
   川上、立ち止まっている依子に気づく。
川上「塩崎さん……髪型、変えたんですか?」
依子「え? ええ」
川上「いいですね! 凄く似合いますよ!」
依子「あら、そう? やだ、アリガト」
川上「……ね、やっぱり塩崎さんの写真撮ら
 せて頂けませんか?」
依子「(照れて)え? ……いいけど」
   川上、あかりsをカメラとして構える。
   あかりの言葉を思い出す。
あかり(オフ)「更に……その人物のアカシ
 ックレコードをリライト出来るんですから」
   川上、依子の写真を撮る。
川上M「ということは……過去を書き換えら
 れるということ?」

○ 川上の自宅ワンルーム(夜)
   川上が『あかりのアプリ』を操作して
   いる。画面には依子の写真。
川上M「その人物が過去に思考した全てのこ
 とを読み出すことが出来る?」
   川上、アプリで質問する
   ――その画面「最近好きだと思った男
   性は誰か? それはいつか?」。
   川上、質問を送信する。
   と、回答がアプリに表示される
   ――その画面「山本龍一 丁度3ヵ月
   前 島津桃子と営業に行った時」。
川上「何だ何だ!? あんたもか!? 〝出来る
 男〟が好き♡ か!?」
   川上、アプリでアカシックレコードを
   書き換える
   ――その画面「アカシックリライト
   今好きな男性は川上勝広 今朝、髪型
   を褒められた時から」。
   川上、少し考え、書き加える
   ――その画面「明日にも川上勝広とセ
   ックスしたいと思っている」。

○ ラブホテルの一室(夜)
   依子が男(顔は見えない)とセックス
   している。
川上M「凄いことになった! これで〝現在〟
 がゴロッと変わった!」
   ベッド――川上の腕枕で依子が寝てい
   る。
依子「(川上にキスして)〝出来る男〟が好
 き♡」
川上M「なっちゃった? 〝出来る男〟?」
依子「ね? アレックスなんかやめて独立し
 ちゃいなさい。どうせシューズ部門、イマ
 イチなんだし」
川上「え? え?」
依子「父が出資してくれるわ。山本龍一の仕
 事なんか適当に終らせてさ」
川上「お父さん? 塩崎さんの?」
依子「ヨ、リ、コ……会社の大株主も知らな
 いの?」

○ 陸上競技場
   新しいランニングシューズ!
   それを山本が履いて、100mコース
   をダッシュ! 猛ダッシュ!
   ゴールを駆け抜ける!
   ストップウォッチは9秒フラット!
   ――見守っていた川上と桃子。
   二人のもとへ山本が歩み寄る。
山本「うん……まあ……いい! ありがとう」
桃子「良かったですぅ! ありがとうござい
 ますぅ!」
川上「(ニコニコして)山本、チーフ、記念
 に写真を撮りませんか?」
   川上、あかりsを取り出す。
山本「んん? ヤマモト?」
   桃子、一度、山本と顔を見合わせる。
   そして川上を「失礼よ」と叩き、山本
   に「すみません」と頭を下げる。
桃子「……山本さんだけ撮らせて頂きなさい。
 私も一緒だったら、ファンが知ったら怒る
 じゃないの」
   桃子、恥かしそうに山本のそばから離
   れる。
川上M「ダメか……」
   川上、山本の全身写真を撮る。

○ レストラン(夜)
   川上と依子が食事している。
依子「それはもう桃子、完全にイッちゃって
 るわね……山本龍一と」
川上「え? え?」
依子「前のマラソンマンの時もそう。Jリー
 ガーの時も……誰だっけ、あのIT社長?」
川上「……」
依子「一度週刊誌に撮られてから絶対他人に
 写真は撮らせないのよ。誰にも!」

○ 川上の自宅ワンルーム(夜)
   川上が『あかりのアプリ』を操作して
   いる。画面には山本の写真。
   川上、アプリで質問する
   ――その画面「島津桃子が好きか?」。
   川上、質問を送信する。
   と、回答がアプリに表示される
   ――その画面「特に好きではない」。
   川上、ニヤリとして、また質問する
   ――その画面「島津桃子とは仕事だけ
   の関係か?」。
   川上、質問を送信する。と、回答表示
   ――その画面「セックスはする」。
川上「(激怒して)畜生!! あの野郎!!」
   川上、アプリでアカシックレコードを
   書き換える
   ――その画面「アカシックリライト
   今夜、交通事故で足を骨折していた
   もう走れなくなっていた」。

         ― つづく ―


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?