見出し画像

あかりのアプリ

内容紹介
『あかりのアプリ』【シナリオ形式】

 アカシックレコード。それは全宇宙の過去からの全情報が記録されたデータバンク。全宇宙の生命活動の〝結果〟であると同時に〝原因〟でもある。前世を含めた過去から、思考した全てのことは、波動となって、宇宙にホログラムのように記録されている。と同時に、その記録されたデータをもとに、現在の宇宙、個々の生命は機能している……。

 明石あかりのケータイショップでは、赤い栗鼠のマークがついた特殊なスマートフォン『あかりs』を販売している。そのスマホに搭載されている『あかりのアプリ』は、

〝アカシックレコードを操作する〟ことができる!
〝過去を書き換える〟ことができる!

 その『あかりのアプリ』を手にした者は……。

画像1

あかりのアプリ 2(2/2)

○ 住宅街(夜)
   真田があかりsを手に、歩いている。
   ――高層マンション前に辿り着く。

○ 真田のマンション内・玄関(夜)
   真田が入って来る。
   美人の真田麗子(40)が現れる。
麗子「お帰りなさい」
真田「(あかりsを見て)――」
麗子「(あかりsに気づいて)あら、スマホ
 買ったの? 赤色なんて、珍しい。あなた
 ってハイスペックしか使わないのに」
真田「マッドと言ってくれ」

○ 同・書斎(夜)
   真田があかりsを操作している。
真田「(ボソッと)じゃあ――これであいつ
 の過去を書き換えたら? ゴッドにもマッ
 ドにも至りませんてか?」

○ 優都大学病院・外観

○ 同・院内通路
   真田があかりsを手に、歩いている。

○ 同・バイオレゾナンス治療室内
   真田が「おい、坂井」と、入って来る。
   坂井が「お?」と、迎える。
坂井「今からメシか? 外にでも行くか?」
真田「ああ――俺は暇だけどね――それでブ
 ログ始めたんだ――最新医療の英雄の写真
 を取らせてくれよ」
坂井「ん? いいけど。どうすればいい?」
真田「ポーズはいいから。そのまま(と、あ
 かりsをカメラとして構える)」
坂井「美人の奥さん、元気か?」
   真田、シャッターを押し、撮影する。
真田「ありがと(と、すぐに背を向ける)」
坂井「おい、真田」
   真田、黙って出て行く。
坂井「――」

○ 高級ホテル・外観(夜)
真田の声「これでアカシックレコードを書き
 換えれば過去が書き換わって、現在も書き
 変わる――本当かよ」

○ 同・一室(夜)
   真田が美女とベッドの中。彼はあかり
   sを操作している。
真田「まあいい。好奇心こそが科学だ」
美女「(スマホを触っている真田に)何? 
 けっきょく奥さんがいいの?」
真田「違う。静かにしろ」
   あかりsの画面――坂井の写真。
真田「アカシックリライト――だな」
   あかりsの画面――「アカシックリラ
   イト ドイツには行かず、真田将悟の
   部下になった」
真田「――」
   真田、さらに書き加える。
   ――その画面「ひどく無能な部下」。
真田「(鼻で笑う)」

○ 優都大学病院・院内通路(朝)
   真田が登院して来る。
   坂井が「真田教授!」と、駆け寄って
   来る。二人、歩きながら話す。
真田「? 何だ?」
坂井「(ペコペコしながら)すみません。昨日
 は本当にすみませんでした。あんな初歩的
 なことを見落とすなんて。いつまでたって
 も私は――至りませんで――どうかどうか」
真田M「(ニヤッと笑って)こいつ、本当に」
坂井「(ペコペコしながら)これからもよろ
 しくご指導お願い致します」
真田「ああ――いいから、その〝至りません〟
 はやめろ」
   スタスタと歩く真田の背後で坂井、立
   ち止まる。
坂井「? 教授、どちらへ?」
真田「?(立ち止まり、振り向き)職場に決
 まってるだろ」
坂井「え? こちらですよ。職場」
   坂井が指した先――産婦人科。
真田「はぁ!?」
麗子の声「あなた! お弁当!」
   真田と坂井、声の方に振り向く。
   麗子が笑みを浮かべ、弁当を持って駆
   け寄る。
真田「麗子? 弁当?」
   麗子、真田の前を素通りして、坂井に
   弁当を渡す。
真田「?」
坂井「麗子、悪いな、わざわざ」
真田「麗子、何している!?(と、彼女の腕を
 強引に引っ張り寄せる)」
麗子「(悲鳴)何するんですか!」
坂井「!?(二人を引き離して)教授! 私の
 妻に何をするんですか!」
真田「お前!?」
坂井「教授! いったいどうしたんですか!?」
真田「? ――」

○ 駅前通り(夜)
   真田が激しい形相で走っている。
   ――その先に『あかりのお店』。

○ あかりのお店・店内(夜)
   真田が入って来る。
あかりの声「いらっしゃいませ」
真田「おい!」
   あかりが「?」と、真田に近づく。
あかり「あ! この前のお客様ですね? ど
 うでしたか? ゴッドを越えた――マッド
 でしたでしょ?」
真田「どうもこうもない! 何で俺が産婦人
 科医なんだ! 何で麗子が坂井と!」
あかり「――アカシックレコードをリライト
 しちゃったんですよね? ですから」

○ イメージ・宇宙
   人類のこれまでの所業が波動となって
   記録されたイメージとして浮かぶ。
あかり(オフ)「過去から思考した全て……
 その中には自分と同じ様な、似た思考をし
 た生命もあります。似た生命は同じ波動、
 波長、周波数を持っていて、それらは互い
 に共鳴し合い、引き寄せる様になるのです。
 それを〝縁〟と言います。アカシックレコ
 ードをリライトするということはその人と
 の〝縁〟も変わるということですから」

○ あかりのお店(夜)
   あかり、「少々お待ち下さい」と、パ
   ソコンを操作しながら話し始める。
あかり「――なるほど。この坂井さんて方の
 アカシックレコードをリライトされました
 ね。ですから――お客様の部下に」
真田「そうだ。それだけだ、リライトしたの
 は」
あかり「いえ、それだけじゃありませんから。
 坂井さんはドイツには行かなかったことに
 なっていますから。ずっと日本にいたこと
 になったために産婦人科医になって――麗
 子さんとは彼が出会って結婚した――です
 から――〝縁〟が変わったのですから――
 関係性が変わったのですから」
真田「何だと!?  〝縁〟が変わった!?」
あかり「宇宙の全ての生命はつながっている
 のですから」
真田「!?」
あかり「――坂井さんて、もともと血を見る
 のも怖くて、外科医には向いてなかったん
 ですね? それでもお客様が上司で坂井さ
 んが――ひどく無能でも部下という関係は
 ――それでお二人は産婦人科医になったわ
 け――ですから」
   ――呆然とする真田。

○ 高層マンション・エントランス(夜)
   真田が入って来て、オートロックの暗
   証番号を入力する――が、E表示。
真田「!?」
   真田、集合ポストの名前を見る。
   「坂井」と書かれている。
坂井「嘘だ!」

○ ビジネスホテル・外観(夜)

○ 同・フロント(夜)
   真田、キーを受け取り、エレベータに
   向かう。

○ 同・一室(夜)
   真田が入ってくるなり、ベッドに鞄を
   投げつける。
真田「ウォーッ!!(叫ぶ)」
   真田、ポケットからあかりsを取り出
   し、激しく操作する。
真田「馬鹿野郎! 俺は外科医だ! あの野
 郎も外科医にしてやる! メチャクチャ無
 能な外科医だ! 最低! ド最低の外科医
 だ! ざまぁ見ろ! 麗子を返せ!」
   真田、あかりsを放り投げ、ベッドに
   倒れ込む。
真田「(馬鹿笑い)」
   真田、静かに目を閉じ、眠る。

○ ベッドの上
   目を開ける真田。
   麗子の顔が見える。
麗子「あなた! 愛してるわ!」
真田「!? オオーッ! よし! これで良
 し! ざまぁ見ろ!」
麗子「ええ! きっと助かるわ!」
真田「?」
   手術着姿の坂井が真田に顔を見せる。
   そこがオペ室であると分かる。
坂井「そ、そ、それじゃ、始めよう――かな。
 ま、麻酔をー」
真田「!?」
   真田、麻酔をかけられ――眠る。
         ― 終わり ―


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?