あかりのアプリ
内容紹介
『あかりのアプリ』【シナリオ形式】
アカシックレコード。それは全宇宙の過去からの全情報が記録されたデータバンク。全宇宙の生命活動の〝結果〟であると同時に〝原因〟でもある。前世を含めた過去から、思考した全てのことは、波動となって、宇宙にホログラムのように記録されている。と同時に、その記録されたデータをもとに、現在の宇宙、個々の生命は機能している……。
明石あかりのケータイショップでは、赤い栗鼠のマークがついた特殊なスマートフォン『あかりs』を販売している。そのスマホに搭載されている『あかりのアプリ』は、
〝アカシックレコードを操作する〟ことができる!
〝過去を書き換える〟ことができる!
その『あかりのアプリ』を手にした者は……。
あかりのアプリ 2(1/2)
○ 宇宙
あかり(先行・オフ)「アカシックレコード
は全宇宙の過去からの全情報が記録された
データバンクで、全宇宙の生命活動の〝結
果〟であると同時に〝原因〟でもあるので
す。前世を含めた過去から、思考した全て
のことは、波動となって、宇宙にホログラ
ムの様に記録されています。と同時にその
記録されたデータを基に、現在の宇宙、個
々の生命は機能しているのです。ですから」
○ ケータイショップ『あかりのお店』店内
宇宙――の映像が映し出されているス
マートフォン『あかりs』。赤い栗鼠
のマークがついている。
――それを明石あかり(28)が手にし
ている。
――ビデオカメラを前に。
あかり「(微笑んでビデオカメラを撫でなが
ら)あとはお願いね」
○ 優都大学病院・外観
○ 同・教授室
週刊誌の記事「ゴッドを越えたマッド
ハンド=真田教授」、写真付――を真
田将悟(44)がソファーで見ている。
真田「(ほくそ笑んで)――」
ドアをノックする音が聞こえる。
真田「? はい」
滝川一雄(58)が入って来る。
真田「院長」
滝川「(真田が持つ週刊誌に気づいて)有名
になると忙しいね。余計な仕事も増えて」
真田「いえ――(笑って)あまりにも私が失
敗しないから――ゴッドを越えたマッドハ
ンドなんて」
滝川「――例の件だがね」
真田「――はい」
滝川「これから君には高度なオペだけをお願
いしよう。その都度、契約してね」
真田「ありがとうございます! これで研究
にもっと時間をかけることができます!」
滝川「ただね、病院も君に高額な費用を払っ
てばかりいられないんでね。オペ回数を減
らす手立てを考えているよ」
真田「え? オペを減らす? (笑い)そん
なことができるなら私はとっくに失業して
ますよ」
滝川「坂井雄大君て、君の同期なんだって?」
真田「坂井?」
○ 同・バイオレゾナンス治療室・入口
○ 同・同・室内
患者女性が木製の椅子に座っている。
その椅子の背もたれにはシート(ディ
テクタ)があり、そこからコードで治
療装置(レヨメータ=波動送波器)に
つながれている。
微笑を浮かべて、坂井雄大(44)が患
者の前に座っている。
患者「先生、人間の身体も素粒子からできて
いて、振動していて、周波数を持っている
のは分かるんですけど、こんなので病気が
治るなんて、まだ信じられないんですけど」
坂井「そう? 治るっていうより蘇生するっ
ていう方がいいかもね」
患者「蘇生?」
坂井「うん。元の状態に戻すだけなんだから」
患者「(レヨメータをさして)これが出して
いる周波数にそんな力があるんですか?」
坂井「あなたの場合は肝臓だから56Hzに合わ
せています。この周波数を送り込むと共鳴
現象を起こすんです」
患者「私、ギターを弾くから、音叉を使うか
ら、共鳴って分かるんですけど――それで
も、それで私の肝臓が良くなるなんて。や
っぱり不思議で」
坂井「(微笑んで)幸い、まだ未病の段階と
言ってもいい状態だったから早いですよ。
あなた、疾病しませんから」
患者「疾病しませんから? (クスクス笑っ
て)じゃ、私、肝炎には――」
坂井「至りません」
患者「(クスクス笑う)」
坂井「(微笑)」
○ 満月(夜)
○ 優都大学病院・ロビー(夜)
誰もいない。ただ真田だけが椅子に座
っている。
そこに坂井が現れる。
坂井「真田」
真田「(薄笑いして)疾病しないんだって?
血が怖くてメスも握れなかった男が」
坂井「(笑い)それ、皆の前では言うなよ」
真田「俺はそんなに暇じゃないよ。でも、暇
にしてくれるんだろ?」
坂井「君には敵わないや」
真田「本当かよ? ドイツにはそんなのが六
千もあるんだって? そんなので病気が治
せるなら俺はいつ失業したって本望だね」
坂井「もとから生命にはそれほどの力がある
んだよ。君も勉強してみろよ」
真田「俺にそんなことを言えるようになった
のか? (笑い)俺はマッドハンドらしい
から。ゴッドは君に譲るよ」
真田、笑いながら去って行く。
○ 同・教授室
真田が見ている週刊誌――坂井の写真。
その記事――「広がるバイオレゾナン
ス・メソッド(生体共鳴法)!」「あ
なた〝疾病しませんから〟」「未病で
くい止める! 発病には〝至りません〟」
「医療費削減効果期待大! 国家プロ
ジェクトに!?」
真田、週刊誌を投げ捨てる。
○ 同・院内通路
真田が歩いている。
声 A「これなら何度でも練習できる!」
声 B「積み重ねれば僕だって真田教授のよ
うなオペも出来るようになるぞ!」
真田「?」
○ 同・研究室
真田が入って来る。
若い医師AとBが真田に気づき、振り
向く。
医師A「真田教授」
医師B「よく出来てるでしょ。これ、3Dプ
リンタで作った患者の臓器です」
樹脂でできた心臓が5つ台の上にある。
医師A「いくら坂井先生が頑張ったって手術
が必要な患者はいるんですからね」
医師B「(微笑んで)でも、任せて下さい。
腕を上げますから」
真田「うむ」
○ バー・外観(夜)
真田の声「クソッ! 何が疾病しないだ!
何が至りませんだ! 何が3Dだ! もう
俺の力はいらないだと!? ゴッドを越えた
この俺の!!」
○ 同・店内(夜)
カウンターで真田が酒を飲んでいる。
真田「ありがと! 俺は暇になったよ畜生!
おかげで研究は捗るけど物足りない! や
っぱりメスを握ってこそマッドハンドだ!
ペンはゴッドに握らせろ!」
○ 駅前通り(夜)
酒に酔った真田が歩いている。
真田「何でも安あがりかよ!? ええ!? アベ
ちゃんよ、デフレは止まんねぇよ。アンタ
の名前にも安いって書いてあんじゃねぇか
! 俺の生甲斐もプライドもデフレだよ!」
真田の目に留まる――ケータイショッ
プ『あかりのお店』。
真田、その前に立ち止まる。
真田「ここにもいたよ。格安野郎!」
○ あかりのお店・店内(夜)
真田が入って来る。
真田「おい! 安物! お前もか!」
あかりの声「いらっしゃいませ」
真田、展示のスマホを手に取り、笑う。
あかり、微笑んで、真田に近づく。
あかり「今話題の格安スマホでしたら、最近
ずいぶんと種類が増えましたから」
真田「(笑い)俺がそんなに安く見えるか?
――ゴッドを越えたマッドなスマホなんて
あるか? 無いだろう?(笑う)」
あかり「! ――あかりsはいかがですか?」
真田「アカリス?」
あかり「面白いですよ。うちのオリジナルで
すから(と、あかりsを差し出す)」
――あかりsの画面に『あかりのアプ
リ』のアイコン。
あかり(オフ)「この『あかりのアプリ』は
このスマホにしかないのですから。アカシ
ックレコードをリライト出来るのですから」
真田「何? アカシックレコード?」
あかり「このスマホのカメラは、撮影した人
物の波動を読み取って、それをキーにアカ
シックレコードにアクセスして、その人物
が過去に思考した全てのことを読み出すこ
とが出来るんですから。それに――その人
物のアカシックレコードをリライトするこ
とが出来るんですから」
真田「?」
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